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福澤諭吉の「痩我慢の説」に学ぶ:現代における自己の誇りと強さ

立国は私なり、公に非ざるなり。

福澤諭吉 痩我慢の説  yasegaman no setsu (Japanese Edition) . 青空文庫. Kindle Edition.

 福澤諭吉が「痩我慢の説」を書いた背景には、自己の誇りを守るためにあえて困難を受け入れるという姿勢が根底にあります。この考え方は、単に意地を張ることや頑固さを意味するのではなく、外部からの圧力や誘惑に屈せず、自らの信念を貫くという高い精神性を持っています。現代社会においても、この「痩我慢」の精神は自己成長や自己実現のために非常に重要な役割を果たしています。

1. 「痩我慢」とは何か?

 「痩我慢(やせがまん)」とは、文字通りには「痩せ細るほどに我慢する」という意味ですが、福澤諭吉が提唱する「痩我慢の説」は、もう少し深い意味を持ちます。それは、外的な環境や逆境に対して、物理的・経済的な苦痛があっても、自分の誇りを守り抜き、信念を曲げない精神的な強さを指します。

瘠我慢の一主義は固より人の私情に出ることにして、冷淡なる数理より論ずるときはほとんど児戯に等しといわるるも弁解に辞なきがごとくなれども、世界古今の実際において、所謂国家なるものを目的に定めてこれを維持保存せんとする者は、この主義に由らざるはなし。

福澤諭吉 痩我慢の説  yasegaman no setsu (Japanese Edition) . 青空文庫. Kindle Edition.

 福澤諭吉は、物事の価値は外部の評価や物質的な豊かさではなく、内面的な強さや誇りを持って困難に立ち向かう姿勢にこそあると考えました。彼にとって、真の強さとは、外的な圧力や他者の評価に屈せず、自己の信念を持ち続けることにあるのです。

2. 現代社会における「痩我慢」の意義

 現代において、私たちは福澤諭吉が生きた時代とは異なる環境で生活していますが、「痩我慢の精神」は依然として有効です。今の社会は、情報や価値観が多様化し、他者からの評価や社会的なプレッシャーがますます強まっています。SNSを通じて他人の成功や物質的な豊かさを目にする機会が増える中で、自己の信念を貫くことは簡単なことではありません。しかし、福澤諭吉が説いた「痩我慢」の考え方は、こうした時代だからこそ、ますます重要なものになっています。

1) 内面的な強さを磨く

 現代社会では、物質的な成功や外部からの評価が強調されがちですが、本当に大切なのは、内面的な強さです。福澤諭吉の「痩我慢の説」は、目先の物質的な利益や評価に惑わされず、自分の信念に従って行動することの大切さを教えています。たとえば、キャリアや生活の選択において、他者の期待や世間の評価に惑わされるのではなく、自分が本当に大切だと感じる価値観に基づいて行動することが、真の充実感と成功につながるのです。

その瘠我慢こそ帝室の重きを成したる由縁なれ。

福澤諭吉 痩我慢の説  yasegaman no setsu (Japanese Edition) . 青空文庫. Kindle Edition.

その家(*筆者注:徳川家)の開運は瘠我慢の賜なりというべし。

福澤諭吉 痩我慢の説  yasegaman no setsu (Japanese Edition) . 青空文庫. Kindle Edition.

2) 困難を乗り越える覚悟

 現代においても、困難に直面することは避けられません。仕事のプレッシャー、家族や友人との関係、経済的な不安など、様々な逆境があります。しかし、「痩我慢」の精神を持つことで、外部の困難に屈することなく、自分の信念を守り抜くことができます。

 たとえば、ビジネスや勉強において、短期的な結果や周囲の評価に一喜一憂するのではなく、長期的なビジョンを持ち続けることが大切です。福澤諭吉の「痩我慢の説」に基づくと、困難な状況においても自分を信じ、耐え抜くことで、結果的に自分の価値が高まるのです。

殺人散財は一時の禍にして、士風の維持は万世の要なり。これを典して彼を買う、その功罪相償うや否や、容易に断定すべき問題にあらざるなり。

福澤諭吉 痩我慢の説  yasegaman no setsu (Japanese Edition) . 青空文庫. Kindle Edition.

3. 「痩我慢」と成功の関係

 現代社会では、成功は必ずしも物質的な富や地位に直結しません。本当の成功とは、自分の価値観や信念を守り抜き、自己の誇りを持って生きることにあります。福澤諭吉は、「痩我慢」によってこそ、真の成功に近づけると考えていました。これは、たとえば長期的な視点を持ってキャリアを選択する際や、個人的な困難に直面したときに、他者の意見に惑わされずに自分の道を貫くことが、最終的に豊かな人生をもたらすという考え方です。

本来立国の要は瘠我慢の一義に在り、いわんや今後敵国外患の変なきを期すべからざるにおいてをや。

福澤諭吉 痩我慢の説  yasegaman no setsu (Japanese Edition) . 青空文庫. Kindle Edition.

自己成長と「痩我慢」

 人は誰しも、成長の過程で困難や障害に直面します。ここで重要なのは、困難に直面したときにどう行動するかです。福澤諭吉の「痩我慢の説」は、これを乗り越えるための重要な考え方を提供します。それは、物質的な豊かさや他者からの評価に依存するのではなく、自分自身の信念や価値観を軸に、困難に立ち向かうというものです。この姿勢を貫くことで、人は成長し、最終的には成功に繋がる道を歩むことができるのです。

4. 結論:現代における「痩我慢」の価値

 福澤諭吉が説いた「痩我慢の説」は、現代においても自己の誇りや内面的な強さを守るための重要な指針です。外部の評価や短期的な成功に惑わされず、自己の信念を貫くことこそが、真の成功へと導く道であると言えるでしょう。現代社会においても、困難に直面したときにこそ、この「痩我慢」の精神を思い出し、内面的な強さを持って生きることが、豊かな人生を築く鍵となるのです。

 福澤諭吉の教えを現代に活かし、自分自身の信念を守り抜くことで、真に豊かで誇り高い人生を歩んでいきたいものです。

天下後世にその名を芳にするも臭にするも、心事の決断如何に在り、力めざるべからざるなり。

福澤諭吉 痩我慢の説  yasegaman no setsu (Japanese Edition) . 青空文庫. Kindle Edition.

※「痩我慢の説」は概ね皇室・三河武士(徳川家)と勝海舟・榎本武揚の対比で書かれています。特に歴史に興味のある方はどうぞ(無料です)。


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