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第73回 多拠点生活というニーズ

もともとこの賃貸住宅を建てようと考えたのは、僕が生まれた場所を雑草だらけの放棄地のようにしたくなかったからだ。あるいは、至る所で見かける醜いアパートなんぞでその土地をうめたくなかったからだ。

そして、古くから残るそのあたりの集落に、新しい風を吹き込みたいとの思いもあった。だから、住んでもらうのはできるだけ多様な人々だといいなあとも考えた。でも、なかなかそういう人々を呼び込むのは簡単でないこともわかった。

たまたま、7月14日にアカデミーヒルズのオンラインセミナーを観て、「多拠点生活」というコンセプトを知り、定額で全国の契約住居に住み放題というサービスを提供するアドレスという会社の考え方に共感した。

地方の空き家を借り上げて、そこに多拠点生活を望む主に都会に住む人に紹介。地方移住未満、旅行以上、最長14日間連続滞在できる。シェアハウス未満、ユースホステル以上、他の滞在者との交流も楽しそうだ。滞在中、その家を管理する「家守」が、様々な対応をしてくれ、その地域の住民との交流も積極的に促してくれるようだ。

リモートワークが当たり前になり、ネット環境さえあればどこにいても仕事も生活もしやすくなった現在、とても時代に合ったサービスだと思う。地方の空き家を活用するのも良い。越後妻有トリエンナーレなどで、田舎の空き家を活性化させる価値を見聞きしていたので、それをビジネスベースで実現しているのも素晴らしいと思った。

僕のAwazuku Houseは空き家ではないし、同じ棟にシェアで暮らすことは想定していない。しかし、いろいろな地域からの滞在者に短期とはいえ住んでもらい、地元の人々と交流ができたらなんと面白いことか。ADDressのコンセプトとは少しずれるが、創造的な方法を考案できないかと、いろいろ想像してみた。

しかし一人で考えても埒が明かない。セミナーの翌日、無理を承知でADDresに打診してみることにした。僕なんかよりも創造的なアイデアを生みだしてくれるだろう、との淡い期待を抱いて。すると、担当の方はAwazuku Houseの建物としての魅力に興味を持ってくれ、検討してくれることになった。

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そして約2週間後、返事がきた。あらゆる可能性を検討したが、部屋数と賃料がコンセプトに合わないとのことだった。使われなくなった空き家を安く借り受け、その家の複数の部屋にそれぞれ会員に滞在してもらうというモデルだ。新築1LDKのAwazuku Houseでは、そうした条件に合わない。

残念だが仕方ないだろう。あらゆる可能性を検討してくれたADDressの方々には感謝したい。また別の形で接点が持てたらと思う。






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