ストーブリーグのストーリー(2) あべちゃん編

今シーズンの移籍活動で間違いなく1番フロサポに響いたのは

あべちゃん名古屋グランパスに完全移籍

でしょう


たしかに奈良ちゃんや新井とかもインパクトはあったけれど、前者は前々からずっと声がかかっていたし、新井は(1)でも書いた通り理由はわかりやすい。

あべちゃんは「戦力へのダメージ、行先、完全移籍」という3つの意味でも明らかに衝撃の桁が違かった上に、その理由もわかりにくかったこともあり、様々な意見が飛び交いました。

私の数少ないツイッターの情報網やFFの方々の意見を、私なりに練り上げて一つの答えにたどり着いたので、私見ではありますがここで披露させていただこうと思います。



「金」と「ACL」


あべちゃんの移籍理由については実のところ正式かつ細かな発表は出ていません。

本人へのインタビューとかはちらほらと出ていますが、交渉の詳細まではチームとしても、本人としても公開する必要もなければ公開するデメリットも大きいため、公開されないものと思うのが妥当でしょう。

なので、移籍発表以降飛び交った意見は結局のところ「憶測」に過ぎないため、真偽のほどは定かではありません。

しかし、とりあえず一通りの出入りが完了して新体制会見をするまで至ったことで、間接的にですがチームの状況や今季や未来への展望が垣間見えてきたことで、あべちゃんの移籍の理由となりうる要素もいくつか出てきました。

これらの情報をまとめたり、調べてくださった人の情報を見てみたりして、私が出した答えは「金」と「ACL」の2つのポイントです。

どちらも独立しているように聞こえるかもしれませんが、結局のところは金の問題という前提があってのACLの考察なので、全ての元凶は金と言って過言ではないでしょう。

けど、金の工面に一番影響を与えたのはACLということも事実なので、金とACLとしました。



フロンターレは金満クラブではない


昨今Jリーグの金の話と言えば「DAZNマネー」と言われる、従来とは文字通り桁が違う額の賞金が一番の注目ポイントで、それに次ぐのが楽天マネーやメルカリマネーといった各クラブのスポンサーマネーの話題。

幸いなことにフロンターレは初年度から2年連続でDAZNマネーの一番美味しい所を獲得することが出来ましたが、使い道を見てみれば正直他サポからすれば驚かれることも多いでしょう。

クラブハウスを綺麗に改築し、食堂を作り、新しいトレーニング機材やリカバリー機材を購入するなど

フロンターレのお金の使い道で一番目立つのは「足元を固めるための設備投資」です

逆を言えばよくそんな設備でこれまで優勝争いをしてきたなとも言えますが、DAZNマネーのおかげでやっといっぱしのチームの環境が得られたということから、クラブがこれまでどれだけ苦しかったのかがわかるでしょう。


DAZNマネーがやってきた初年度に大きく勝負に出て、風間監督から鬼木監督に交代と、あべちゃん&家長という2大補強を行ったという仮定で考えれば、ここ数年の戦力はフロンターレ的には厳しいもので、いろいろと切り詰めたり賞金のおかげで成り立っていた部分がある。

と考えると、意外と納得できる気がします。

実際に私のFFの方がここ数年のチームが発表する経営収支をまとめて考察したものがツイッター上にあがっていましたが、やはり苦しそうだなという印象が。

なので、おそらくこの金満でないという前提条件はほぼ当たると私は見ています。その前提をふまえて次の項に移りましょう。



ACLの存在


鬼木体制が始まる以前からフロンターレは幾度かACLに出場をしていて、ある程度の成績を得ていました。

鬼木体制初年度でフロンターレが初タイトルを得た2017シーズンも、開幕4引き分けの低調なスタートから準々決勝まで勝ち上がっていたように、ACLは現実的に狙えるタイトルという認識はチーム全体にあったことは間違いないでしょう。

そこからフロンターレはリーグ連覇をすることで毎年ACLに出場することになりますが、翌18年は未勝利での敗退という醜態を晒し、19年もGSでの敗退を喫して2年連続でリーグチャンピオンがGS敗退という悲惨な結果になってしまいます。

加えて17、18年は浦和と鹿島が優勝し、19年も浦和は決勝まで勝ち進んでいます。こういったJのチームの活躍が目立つ中での惨敗は悪目立ちしてしまったのも事実でしょう。


2年連続で惨敗しリーグも4位で終わった19年は、全日程が終わった後も鹿島の天皇杯の結果次第ではACLの出場がありうるという状況でしたが、あべちゃんの完全移籍が決定し発表があったのは天皇杯決勝の前の12月30日。

このタイミングに発表があったということも、ACLに対してチームが何を考えているのか、あべちゃんをどう考えているのかを考察するいいポイントになったと私は考えています。



ACLとあべちゃんの関係性


まず前提として「ACLを本気で狙うならあべちゃん流出は痛手でしかない」ということを考えましょう。

少なくともACLの可能性が残っているけど霧散する可能性もある以上、交渉を急ぐのはデメリットになりますし、年明け前の段階で答えを出したことにはそれ相応の理由があることが考えられます。

放出するのであればACLが無くなったことがわかってからでも遅くはないと考えれば、ACLの有無に関係なくあべちゃんは放出することが決定していたと考えるのが妥当でしょう。では、ACLとあべちゃんは無関係なのかというとそれは真逆で、めちゃくちゃ関係しているからこそ、20年のACLに関係なく放出したという理由にもなります。


まずはチャート形式でまとめます


ACLを勝ち抜くには2チーム分の戦力が必要でそのためには「あべちゃん、タツヤ、ノボリ、学」ぐらいのメンツは必要不可欠

この4人に加え「家長、小林」も含め左右のオールラウンドさも求めることでどうにか2チーム分に近い戦力を確保していた

FWは「小林&知念」のベースに加え17年は「森本、ハイネル」18年は「大久保、赤崎」などで1トップながら3~4枚は常に揃えていた

17年のリーグチャンピオン&小林得点王で全体的な市場価格の上昇と、ディフェンディングチャンピオンとしてタイトルを取ることが求められるようになり、補強と戦力確保を進める

リーグ連覇を達成するもエウシーニョを抜かれ、補強は「山村、ダミアン」を筆頭に今季も継続


といったように、17年のACLやDAZNマネー狙いの大型補強以降、主力選手の評価向上を受けても戦力を最低でも維持ぐらいにし続けていたフロンターレは、DAZNマネーを最高額2度獲得しても、神戸や鳥栖のような大物外人は来なく(ダミアンは大物だけど本場からすれば期待外れ枠)、エウシーニョやネットを引き抜かれ、補強で取ってくるのはJ2あがりや若手やブラジルからの発掘が多い。

といった一連の流れを見るからに、フロンターレにこれ以上の戦力確保は難しいどころか、本音を言えば資金供給が途絶えた瞬間に戦力整理が必要になるぐらい無理をしているぐらいだったと考えることができます。


なぜそこまで無理をしながら戦力を集めていたかというのはもうお分かりいただけるでしょう。ACLを狙っているからです。


そのACLが2年連続で惨敗したからなのか、リーグ4位で資金が決壊したのか、はたまた今後予定されているスタジアム改修工事による減収を見積もってなのか。理由はいくつかあるでしょうけれど、結果的にはACLを目指す2チーム分の戦力を確保できなくなったから、即戦力級を放出せざるをえなかったと。

そういう考えに私はたどり着きました。



Jの経営規模増大も大きな決め手に


Jの中で金でブイブイいわせてるチーム筆頭は神戸ですが、お隣のマリノスや元々資金力のあるグランパスなど、多くのチームがお金にものをいわせて補強をする流れがDAZNマネーで発生しました。

鳥栖にクエンカとトーレス、札幌にジェイとチャナティップといったように、どのチームにも顔になりうる外国籍選手がいるように、Jを勝ち抜くのに必要な戦力そのものが増大してきています。

そういう意味でもフロンターレは増大し続ける必要資金を、ACLなどの目標に関わらず切るべきタイミングで切らなければいけなかったのでしょう。

周囲が肥大している中ダイエットをすることで、サポを含め見る人はびっくりもしますし、それが「あべちゃんは切るべき選手ではなかった」という意見の理由でもあったわけですが、無理を通せば一時的には強くなれても、いずれ崩壊するというリスクを考慮すれば、周囲に流されずにやるべきことをやったフロントを褒めるという考え方もありではないでしょうか?



チームは未来志向に完全にシフト


あべちゃん流出の時点ではまだはっきりとしていませんでしたが、今シーズンの加入選手やキャッチフレーズを見れば、フロンターレは「数年後」を考えた動きにシフトしていることがわかります。

今年に入ってからの移籍活動や、全体のまとめはこの次の(3)で書きますが、そういう舵取りをすることまで考えれば、本職が3人以上いるLSHの中で、一番切りやすいのはあべちゃんという考え方もできます。

確かにあべちゃんがいなくなるのは大きな痛手ですが、ストーリー全体で考えれば必要な出血だったとも考えられます。

まずはタツヤが第一候補になるでしょうから、彼の色を出しつつ昨年のような孤軍奮闘ではなくチームとして攻められるようになれば、可能性は十分あるとも思いますし、なにしろ他チームの大型補強は高齢選手も多いので、継続してリクルートし続けないといけないというのと比べ、毎年コンスタントに有望株が出てくるフロンターレは、将来性では最も明るい部類に入れてもいいと思います。


では、今回はこのへんにして、(3)で年明け以降の動きを話していきましょう。

お気持ちよろしくです。