セカンド


登場人物 死神 青年

死神 「オイ、少々待たせすぎではないか?1つ目の願いを叶えてからもう50と7日経つではないか。そろそろ二つ目の願いを決めたらどうだ。」

青年 「そうだな。確か期限があるんだったな。1つ目の願いを叶えてから確か...」

死神 「60日だ。もし過ぎてしまえばお前の魂は永遠に地獄行きだ。」

青年 「わかってるよ。こうゆう事は慎重にならないと。もし3つの願いを無事に叶えたとしても、残り寿命をお前にあげなきゃいけないんだろ?」

死神 「そうだ。正確にはお前の寿命を666日だけ残して全てだがな。」

青年 「なんか理不尽な気がするんだよな」

死神 「まぁな、冥界の者と契約するというのはそうゆう事だ。
でもいいではないか。その前に我輩がどんな願いも叶えてやるというのだからな。この世を去る前に、享楽に浸るがいい。
さぁ!2つ目の願いを言え!」

青年 「わかったよ。実は始めから決まってたんだよ。いざ叶うとなるとちょっぴりこわくなって違うのにしようなんて思ったりもしたけど、やっぱりこれにする。お前を召喚したのもこのためだからな。」

死神 「して、その願いとは何だ。」

青年 「....世界の全てが知りたい。」

死神 「....世界の全てか....」

青年 「そうだよ。この宇宙がどのように始まってどう終わるのか。そしてその間に起こる出来事、そして人類が作り出す叡智の全て。ありとあらゆる知識をこの頭の中におさめたい。」

死神 「..この世の全て....」

青年 「...俺は、この世の全てが知りたいんだ!いくら勉強しても、どれほど本を読んでも...一生のうちに得られる知識なんてたかが知れてる。絶望していた時にお前に出会ったんだ。どうか叶えてくれ!この世の全てを知りたいんだ!」

死神 「...そんな事...」

青年 「まさかできないというのか?何でも叶えてやるって言ったよな!」

死神 「誰ができないと言った!そんな事はたやすいと言いたかったのさ。...そう言えば以前にもそんな事を願った奴がいた。「この世の全てを知りたい」か。知るだけでいいなんてな。誠に人間という生き物はおもしろい。では叶えてみせよう!目を閉じろ!」

青年 「あぁ、(目を閉じる)これでいいのか?」

死神 「それでいい。俺がいいと言うまで決して開けるな。いいな。」

青年 「...あぁ。」

死神 「もういいぞ」

青年 「もういいのか?(目を開ける)....何かもっと呪文だとか色々やるのかと思ったけど」

死神 「ふん!漫画の読みすぎだ。そんなもんはいらん!お前のその手に持っているものを見てみろ」

青年 「手に....あ!いつの間にこんな本が!」

死神 「その本にこの世の全てが書いてある」

青年 「この本に...?こんな薄っぺらいのに」

死神 「ふふふ...その本は魔界の本だ。お前らの世界のものとは違うのだ!その本に向かって知りたい事を念じてから開くと、その中に現れるようになっている。」

青年 「なるほど、魔界にはこんな物があるのか。」

死神 「ああ、便利だろう?この間スティーブ・ジョブズとかいう男が作ったのだ。」

青年 「...そうなのか...今魔界にいるんだ...」

死神 「その本を使えばこの世の全てがわかる。使ってみるがいい!」

青年 「ああ、念じるんだったな。こうでいいのか?そうか。(念じる。そして本を開く)...これは」

死神 「どうだ」

青年 「すごい...文字が現れた。」

死神 「文字だけではないぞ。念じれば見たいものもなんだって見れるぞ。太古の昔の出来事や遠い未来の光景でもな!」

青年 「そうなのか!(本に向かって念じた後、開いて見る)スゴい!本当だ!恐竜たちがイキイキと動いている!」

死神 「信じてもらえたようだな。」  

青年 「(本を見ながら)へぇ〜、ティラノサウルスってこんな色してたんだなぁ。じゃあコレは(念じる)うわ!ビッグバンってこんな感じだったのか。(念じる)え〜!3億円事件の犯人ってこんな奴だったの?(念じる)よかった!HUNTER×HUNTERちゃんと完結するんだ。」

死神 「オイオイ、嬉しいのはわかるが程々にしておけ。では、二つ目の願いは叶えたぞ。また60日待ってやるから三つ目の願いも考えておけ。」

青年 「いや、ちょっと待ってくれ!まだ叶ったとは限らないぞ。僕の知りたい事が本当に全て載っているのかどうか確かめないと。」

死神 「何を言ってるんだ。疑うことなんかないだろ。今みたいに念じれば何もかもその本に現れる。」

青年 「本当にか?」

死神 「本当だとも。嘘だと思うならその本に念じてみろ。」

青年 「ああ(念じる)ほら、やっぱり何も現れない。」

死神 「そんなはずはない。お前が知りたいというありとあらゆる事がその本を使えばわかるはずだ。」

青年 「でも、載ってない(本を開いて見せる)」

死神 「お前はいったい、何が知りたいんだ?」

青年 「数に関する事だ」

死神 「数...あぁそうか。以前にもそんな奴がいたな。数学というやつだな。例えば何だ?円周率の最後の数か?最大の素数か?残念だが存在しないものはその本にも載っていないぞ。」

青年 「いや、そんな事じゃない。そんな大それた事じゃなくてもっと、身近な事についての数だ。」

死神 「身近な事?」

青年 「例えば、僕のこれから全生涯で起こる出来事の回数だよ。」

死神 「あぁ成程わかったぞ!以前にもお前みたいな奴がいたぞ。
今までの人生で食べた物の量が知りたいだの歩いた歩数がいくつかだのかいた汗の量がどのくらいかだとか使った紙を重ねるとどのくらいの高さになるか。そんな事を知りたがった奴がいたぞ。人間なんてものはやはりくだらない。ではお前も」

青年 「いや、違うよ。そうゆう事だったらこの本に載ってるだろ。違うんだ。僕が知りたいのはこれから先の人生の事なんだよ。これから先の人生で僕が何をどのくらいやるのか知りたいんだ。」

死神 「これから先?最初に言っただろ。お前は三つ目の願いを叶えてから666日後に死ぬんだぞ。それだってその本を使えばわかるはずだ。」

青年 「わかってる。僕は約束通り死ぬんだろう。でもだからこそ知りたいんだよ。僕が死なない場合の事を」

死神 「...いやちょっと言ってる事がわからないんだけど」

青年 「だからさ、僕はこうやってお前と出会って契約をしてしまったから、残りの寿命をお前にあげなきゃいけなくなったんだ。そうだよな?」

死神 「そうだな」

青年 「仮にだよ。ぼくとお前が出会わなかったとしたら、僕は何歳で死ぬはずだったのか。そしてその歳まで生きた場合、どんな出来事があるのか。それを知りたいんだよ。」

死神 「そうゆうことか。だが残念だが、それを知ることはできない。お前はこうして我輩と出会って契約をしてしまったからな。」

青年 「でもさ、お前に渡されたこの本があれば、僕の知りたい事はなんでもわかるって言ったよな。だとしたら矛盾が生じてしまう。僕がお前と契約しなかった場合の人生のことがわからないのなら、二つ目の願いを叶えたことにはならないんじゃないか?」

死神 「...考えたな。二つ目の願いを無かったことにしてもう一つ余計に叶えてもらおうという魂胆だな。」

青年 「いや、そんなんじゃないよ。純粋に知りたいだけだ...」

死神 「そうか。わかった。ただし、その本には現れるのは現実に起こることだけだ。だからな、今から一度我輩が冥界へ帰って、お前の知りたい事を調べてきてやろうではないか。」

青年 「そんな事ができるのか。」

死神 「たやすいことだ。では、お前の知りたいことと言うのは、お前が元々の寿命まで生きる場合の出来事だな。どのような配偶者を得てどのような家庭を築くのか、どのような仕事につきどんな成果を出すのか。」

青年 「いやちょっと待て、そんな事はどうでもいい。さっきも言ったけど、僕が知りたいのは、数に関する事だ。」

死神 「そういえばそんな事を言っていたな。お前の知りたい数というのは何だ?歩いた歩数か?食い物を咀嚼した回数か?それとも使ったインクの総量か?」

青年 「いや、そんなのもどうでもいい。僕が知りたいのは、タンスの角に小指をぶつける回数だ。」

死神 「....何?」

青年 「まだあるぞ、食べ物を噛んでる時に口の中を噛んでしまう回数、雨の日に自転車に乗っててマンホールの上で滑ってヒヤッとする回数、それから」

死神 「いやちょっと待て...何故そんな事を知りたがる?」

青年 「いいだろ別に!知りたいんだよ!まさかできないというのか?」

死神 「できなくはないけど...」

青年 「じゃあ続けるよ。それから、寝起きに変な夢見たんだけど思い出せなくなる回数、納豆を混ぜてて勢い余ってパックを箸で貫いてしまう回数、かかってきた電話に出られなくてすぐかけ直したんだけど今度は相手が話し中になって変な感じになる回数、電車に駆け込み乗車しようとして間に合う回数とギリギリで閉まってしまう回数、それから、ガリガリくん食べて当たりが出る回数とそれを忘れずに交換しに行く回数、バスの降車ボタン押そうとしたら他の人に先に押されちゃう回数、ちょっと離れてるうちに自転車のカゴにゴミを入れられてしまう回数、みなさんって言おうとして「みんなさん」って言ってしまう回数、穴が空いた靴下を洗ってから捨てようと思ってたのに洗った後忘れてまたはいてしまう回数、風呂上がりに便意を催してしまう回数、」

死神 「おおお、ちょっと待て、それいつ終わるんだ?」

青年 「まだまだあるぞ。」

死神 「わかった。じゃあ覚えきれないから紙に書いてくれないか」

青年 「わかったよ。」

死神 「書けたか。(紙を受け取る)コレは随分とまた...わかった。コレを調べてくればいいんだな。」

青年 「各項目ごとに横に数字だけ書いといてくれればいいよ。」

死神 「...人間というのは誠にくだらん事を....待っていろ、すぐに戻ってくる。」

青年 「あぁ、....おお!戻ってきた。」

死神 「コレでいいか?(紙を渡す)」

青年 「(紙を受け取って眺める。)ほぉ、スゴいもんだ。全部ちゃんと書いてある。へぇ、ガリガリくん結構当たるんだなぁ。へぇ。」

死神 「楽しむのは後にしろ。コレでお前の二つ目の願いを叶えてやった。文句は無いな!」

青年 「あぁ、ないよ。ありがとう!」

死神 「では、三つ目の願いはまた60日以内に決めろ。」

青年 「いや、それは大丈夫!もう決まってるから。」

死神 「そうか。60日間考えてもいいんだぞ。」

青年 「いいよ。今すぐ聞いてくれ。」

死神 「よかろう。して、その願いとは何だ?」

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