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「120点で打ち返す」を武器にする

自己紹介:いち

マネジャーから割り振られた仕事に対し、どのような進め方をすべきか。よくある模範解答は「60点ですぐに出す」です。期限ギリギリまで粘って自分の思う100点を出したとしても、それは上司にとって70点だった、ということもよくある。それならば、60点で良いのでまずはおおよそ仕上げて方向性を確認する。これにより最高効率で仕事を完了できる、というものです。

私もこれには賛成ですし、実際の業務の中でもよく使います。自分のチームメンバーへの仕事の進め方でも、この60点セオリーで進めるようにお願いをしています。

なんなら、少し前までは全ての仕事において、60点→依頼者にすり合わせ→100点に近づける、という進め方がベストかと思っていました。しかし、自分が逆にメンバーに仕事を割り振る、という立場になったときに、違う景色が見えてきました。

120点で提出すること、それは「マネジャーの業務の割り振りの考え方」自体に影響を与える、非常に強力な武器になりうるということです。

本記事では、そもそも120点で提出するとは何か。業務の割り振り自体に影響を与えるとはどういうことか。そして、この120点で提出するという手法の使い所をお話しできればと思います。ぜひ仕事の進め方の一つのオプションとして、「120点で提出する」という武器を使いこなせるようになってみましょう。

120点で提出するとは?

そもそも、60点でぶつける、120点で提出する、というときに使われる「XX点」というのは抽象的な表現です。それぞれ私の経験則から定義しますと下記の通りになります。

60点の状態
・依頼の内容は網羅されており、全体像がわかる
・見た目の美しさ、わかりやすさ、情報の細かさには欠ける
・100点に向けてどこが更新されていくのかが明確になっている

60点の状態を言葉にすると、この後どのように更新しようとしているかが具体的にイメージでき、それに対し、良し悪しを判断できる状態です。

では120点とは何か。これは一言で言うと「依頼者の期待を上回る」状態です。相当抽象的な概念ですが、キーワードになるのが、”依頼者の期待”の部分です。実はこの依頼者の期待、という部分が、業務においてマネジャーが仕事を割り振る上で「判断基準」にしている重要な概念となります。ここについて具体的に見ていきましょう。

マネジャーの頭の中にある期待値リスト

マネジャーの重要なスキルの一つとして、「アウトプットの精度の高い予測」というものがあります。これは何かというと、誰に、何を、どれくらいの期限で、どのように依頼すれば、おおよそこのようなものが出来上がってくるはず、ということを正確に予測する力です。

全く同じ仕事でも、
・誰に依頼するか
・どれくらいの期限を渡すか
・依頼するときにどこまで丁寧に説明するか
によって、出てくるアウトプットが毎回変わってきます。

これらのアウトプットを可能な限り正確に予測することができれば、チームの仕事を最高効率で実現することが可能です。同じチームで仕事をすればするほどマネジャーの頭の中に、メンバーの仕事の予測結果が蓄積、刷り込まれていきます。

この蓄積された予測結果の積み重ねが「依頼者の期待値」を作っています。おそらくこの人にこのような依頼の仕方をしたらこんな内容のものが出てくるだろうとある程度予測して、マネジャーは仕事の割り振りをしているのです。

この論理に照らし合わせると、本来理想状態の100点から40点も足りないはずの「60点で提出することが許される」ことの本質は、マネジャーの頭の中で「まだ欲しいクオリティに満たないけど、締切よりだいぶ早く出してくれたからまだ時間に余裕がある。修正意見を伝えて、100点に近づくようサポートするか」という考えを抱かせることにあります。

そんな考えを持っているマネジャーに、突如ぶつけられる120点の仕上がりの仕事。当然マネジャーが持つ「期待値」という価値観がぶち壊され、再構築されます。こいつ、本当はすごいんじゃないか・・・。この価値観が壊れることで、次のようなメリットがあります。

120点を提出された時のマネジャーのインパクト
・自分の人を見る目の精度を思わず疑ってしまう
・その人に対して、もっと新しい仕事を割り振ってみたくなる
・その人に任せている誰でもできるルーティン業務を減らしたほうが良いのではと思ってくる
・新しい仕事が入ったら一緒にやりたい人リストに入る

新たな挑戦をしたい人にとってはいいことづくめです。

されども120点。当然のごとく、そう簡単には達成できません。そして毎回120点を狙って仕事をしていると、いくら時間があっても足りません。そもそも、通常の業務において「120点を達成する」という難易度は非常に高いのです。

では日常の仕事の中で120点を叩き出すにはどうすれば良いのか。実は、誰でも簡単に120点を叩き出せる裏技があるのです。

120点を叩き出す裏技

120点を叩き出す裏技、それは一言で言うと「期待値が低い仕事を全身全霊で打ち返す」です。これをいくつか極端な例を使って見てみましょう。

【期待値が低い仕事の例①】
「いくつか事例が見たいから、適当に探しておいてくれる?期限は特にないので、できたら教えて〜。」

120点の打ち返し例
事例を100個集める。集めるだけではなく、その事例を分類し、わかりやすい資料化にして提出する。
【期待値が低い仕事の例②】
「新規営業を仕掛ける先をリストアップしてもらえるかな。まだどういうところに可能性があるか明確になっていないから、とりあえずよさそうなところをあつめてもらえれば。」

120点の打ち返し例
業界別に可能性がある企業を一覧でリストアップ。営業のかけやすさなど判断基準比較できる表に整理し、営業をかけていくための優先順位、その時の自社の強みの打ち出しなどをまとめた資料を作る。

さらにはプライベートでも・・・

【期待値が低い状態の例】
仲の良い友人「今年の夏、どっか一緒に旅行行きたいね!」

120点の打ち返し例
その日のうちに、おすすめの旅行先リストと、行ってみたい旅行プランを作成して友人に送る。

このように、期待値が低い状態とは、
・依頼する側も明確なゴールがない
・明確な期限が設定されていない
・そもそもニーズが顕在化していない

という特徴があり、そのような仕事を受けたら「チャンス」とばかりに、圧倒的なクオリティで仕上げて提出しましょう。期待値が低い分、120点の打ち返しがきた!というインパクトは非常に大きいものとなります。

「120点で打ち返す」を武器にする

とはいえ、前述の通り、120点のアウトプットを準備するのは非常に労力がかかります。さらには、毎回期待値が低いわけでもなく、それに120点を出し続けるために仕事をするのは往々にして非効率となります。

そのため、この「120点で打ち返す」というのを、武器として持っておける状態にして、必要なときにそれを使えるようにしておくのが最適解となります。

120点で打ち返す1番の効果、それは、マネジャー(=依頼者)の自分に対する期待値を高めることです。これはいつ使うべきか。例えば、下記のような状態であれば、武器として使う時かもしれません。

120点の使い所
・新しいマネジャーに変わったタイミング
・現在定期的に割り振られている仕事に満足できない時
・さらに仕事の幅を広げたい時
・新規プロジェクトに入れてもらえる確度を上げたい時
・新たにいい人間関係を構築したいとき

60点。120点。自分の仕事のアウトプットの質を自在に操ることができれば、より次のキャリアにつながる新しいチャンスがたくさん舞い込んできます。ぜひ使いこなしていきましょう。

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