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嘘グルメ第六話「シャチの白い部分」

よーきなさった、よーきなさった。こんな村までよーきなさった。いやー!東京から人がこの村に来るなんて何年振りか分かんないだよ!何年か前に東京の人が来たときはあれだよ。所さんのなんとかっていうやつで、なんかダーツ刺さったから来たとか言ってねえ!そうそう!ダーツの旅だ!あれが来たのが最後だよ~。え?あれ来たのって相当凄いんだか?

この村にはなんもねえよ。子供もいねえし、お爺とお婆ばっかだ。63歳の俺が最年少だからねぇ!笑うでしょお(笑)でもいいんだあ。冬の寒い時には金柑の木に沢山実がなってねえ、ここらへん甘くて酸っぱい風が吹いて嗅ぐ度にツバが出んだわ。夏には紫陽花が沢山咲いてね、それを村のみんなで見るんだぁ。あんたもその時期になったら、また来なさい。…それで、あんたはあれだろ?あの話を聞きにきたんだろ?そうでなきゃこんな村さ来ねえもんなぁ(笑)…シャチだろ?

ここは海流の関係で年に何回かシャチが浜に打ち上がってることがあるんだ。昔っからこの村はその恩恵を受けて維持してきたんだぁ。シャチの革は丈夫だって事でドイツの軍隊が全部買ってくんだよ?何に使うかは分かんないけどねぇ。そうやって革は売れるし心臓なんかも漢方薬として売れる。ほんと素晴らしいんだけど、シャチはなんと言っても、、うめえんだ(笑)

シャチのモツ煮もうめえし、焼いてもうめえんだが、特に美味いのが目みたいな白い部分あるだろ?あそこなんだよ。あそこを包丁でくり抜くと、白い皮の下はキレーな霜降り肉なんだわ。それを刺し身にしてワサビ醤油につけて食ったらひっくり返るぐらいうめえのよ~。大トロなんか目じゃねえよ。あそこはいつも取り合いになるんだよ~。でも俺が一番好きなのは、ヅケだな(笑)

夜寝る前に酒と醤油をビニール袋なんかに入れて、シャチの霜降り肉を漬け、冷蔵庫に入れとくのさ。朝起きたらピンク色だったシャチの霜降り肉にいい~醤油の色がほんのりついてんだぁ。それを炊きたてのご飯にのせて一気呵成にかっこんでみろあんた!…これがうんめえのさ(笑)

シャチに恩恵を受ける村。東京では味わえないグルメと村人の心の温かさ。最近では地球温暖化の影響で浜に上がるシャチも減ってきているという。。いつかまた必ずここを訪れよう。紫陽花の咲く頃か金柑のなる頃に。たとえダーツが刺さっていなかったとしても…。

「シャチの白い部分のヅケ丼」

材料(3人分)

シャチの霜降り 3サク

酒大さじ1

醤油大さじ3

作り方

1 浜に打ち上がってるシャチを見つける

2 シャチの目みたいな白い部分をさばく。

3 夜寝る前に酒と醤油をジップロックに入れ、シャチの霜降り肉を漬け、冷蔵庫で一晩漬け込む。朝になれば完成。

コツ・ポイント

濃い目の味が好きなら、漬け汁の醤油を多目にしてもいいかもです。

※本文に出てくる料理は、嘘です。

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