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日本における農業の変遷

 葛尾村における農業のこれからを考える前段階として、今回は日本における農業の変遷に関する記事を公開いたします。本記事は、主に農林水産省の統計をもとにした内容になっています。葛尾村の比較対象とするため、本記事では稲作および畜産業を扱います。


第1章 地理情報

 はじめに、日本全体における面積等の地理情報を整理します。次のように、日本は国土の約12%が耕地であることが分かります。また、国土の約67%が林野で占められていることが分かります。また、そのうちの約4割という大きな割合が人工林で占められています。

全体面積:37,296,847 ha(※1)
耕地面積:4,397,000ha(※2)
森林面積:25,048,199ha(うち人工林:10,203,842ha)(※3)

【参考資料】
・市町村要覧編集委員会『全国市町村要覧平成29年版』(2017)※1
・農林水産省「耕地面積及び耕地の拡張・かい廃面積」(2019)※2
・林野庁「都道府県別森林率・人工林率」(2016)※3


第2章 稲作

 次に、日本全体における稲作の情報を整理します。作付面積は1970年頃を境に減少の一途をたどり、2008年時点で約半分の面積となりました。一方、収量も同時期より減少こそしていますが、減少の割合は35%程度に留まっています。これは単位面積あたりの収量が増加しているということであり、その原因は技術革新等を背景にした稲作の集約化であると考えられます。

作付面積(日本全体)

収量(日本全体)

【参考資料】
・農林水産省「収穫量累年統計(水稲)」(1956~2012)


第3章 畜産

 次に、日本全体における畜産の情報を整理します。第1に、乳用牛は飼育戸数が1960年頃から急激に減少しました。しかし、1戸当たりの飼育頭数が急増したため、日本全体での飼育頭数は100万頭~200万頭の幅にほぼ収まっています。数頭の乳用牛をしている農家が多数いる状態から、乳用牛を専門とした農家が少数いる状態へと産業構造が変化したためであると考えられます。

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 第2に、肉用牛も乳用牛と同様、飼育戸数が1960年頃から急激に減少している一方で、1戸当たりの飼育戸数が急増しており、日本全体での飼育頭数は約150万頭から200万頭の幅にほぼ収まっています。

肉用牛(日本全体)

 第3に、養豚も牛と同様に、飼育戸数が1960年頃から急激に減少している一方で、1戸当たりの飼育戸数が急増しています。ただ、日本全体の飼育頭数は牛と異なり、1960年頃から1980年頃にかけて約2倍になり、そこから横ばいで推移しています。

養豚(日本全体)

 第4に、養鶏も牛豚と同様に、飼育戸数が1960年頃から急激に減少している一方で、1戸当たりの飼育戸数が急増しており、日本全体での飼育羽数は約1200万羽から1500万羽の幅にほぼ収まっています。

養鶏(日本全体)

 このように、牛豚鶏とも1960年頃を境に、飼育戸数が急激に減少し、1戸当たりの飼育数が急増しています。これは農家が数頭の家畜を飼う様式から、専門の畜産農家が多頭飼育をする様式へと畜産業が変化したためであると考えられます。

【参考資料】
・農林水産省「乳用牛飼養戸数・頭数累年統計」(1960~2019)
・農林水産省「肉用牛飼養戸数・頭数累年統計」(1960~2019)
・農林水産省「豚飼養戸数・頭数累年統計」(1960~2019)
・農林水産省「成鶏めす羽数規模別飼養戸数累年統計」(1962~2019)


 ここまで、日本全体における稲作・畜産・林業の変遷を整理してきました。次の記事では、葛尾村における稲作・畜産の変遷について整理していきます。


一般社団法人葛力創造舎

 葛力創造舎(かつりょくそうぞうしゃ)は、通常なら持続不可能と思われるような数百人単位の過疎の集落でも、人々が幸せに暮らしていける経済の仕組みを考え、そのための人材育成を支援する団体です。

余田 大輝

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