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結米づくりの歩み

 当団体は、2017年より結米づくりを実施してきました。結米づくりとは、人と人とのつながりを幸せだと感じる「結」の精神を体感できる場をつくるために行っている昔ながらの米づくりです。過疎化が進む中でも葛尾村で培われてきた文化を次世代につないでいくために、このような取り組みを行っています。本記事では、結米づくりの4年間の歩みを振り返っていきたいと思います。


2017年・初めての米づくり

 東日本大震災による原発事故の影響で、2011年より葛尾村は全村避難となっていました。2016年に一部地域を除き避難指示が解除され、葛尾村で生活できるようになりました。しかし、避難した村民の大半は帰村せず、除染していない土地は利用できないという以前の生活とは程遠い状態でした。そのような状況で、元あった村の良さを再提起する取り組みとして結米づくりは考えられました。村に戻った方々に村での思い出を聞くと、多くの方々が昭和40年代以前の手作業で協力して行っていた米づくりを挙げました。この背景に人と人とのつながりを幸せだと感じる「結」の精神があると考え、当団体は結米づくりを実施することにしました。村の方に田んぼを貸していただくところから始まり、2017年は本当に手探りの中で20~30名規模の田植え・稲刈りイベントを開催しました。

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2018年・参加者層の拡大

 2018年は参加者が大きく増えた年でした。2017年の参加者は避難解除以前からの葛尾村サポーターの人たちがほとんどでしたが、2018年は様々な層に広がっていきました。まずは何と言っても、結米づくりが村の方々に少し浸透し始めたことは非常に大きな変化です。田んぼを貸し出してくださっている方以外も田植え会・稲刈り会に参加してくださったり、婦人会の方々が昼ご飯を作ってくださったりと関わってくださる村の方々が増えました。また、学生の参加者も増えました。イベント運営を日本大学や郡山女子大学といった県内の大学生が手伝ってくれたり、県内の郡山高校や千葉県の市川高校などの高校生が参加してくれたりと学生がイベントに欠かせない存在になっています。さらに、県内外問わず葛尾村のサポーターが増え、参加者が100名を超えるイベントとなりました。

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2019年・祝言式と同時開催

 2019年の田植えでは、祝言式を同時開催しました。祝言式とは、以前葛尾村でも行われていた昔ながらの結婚式です。村にゆかりのあるご夫婦が新郎新婦として祝言式を開催しました。村長にお父さん役をお願いするなど、村総出のイベントとなりました。また、村の方のみならず、葛尾村サポーターの方や祝言式のポスターを見て興味を持たれた方など多種多様な200名を超える参加者があり、大変な盛り上がりを見せました。一方、新たな課題にも直面しました。それは参加費を取っているのに会場設営などをさせられるのはおかしいという参加者から意見です。今までは顔見知りだけの会であったため、全員で準備し全員で参加する会でしたが、新規の参加者が増えたことでこのような意見をいただくようになりました。これが改めて結米づくりのコンセプトを考えさせられるきっかけとなり、この田植え稲刈りは新しい人たちをたくさん呼び込む場ではなく、葛尾村に関わっている様々な人たちが顔を合わせる場にしようという結論に至りました。

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2020・コロナ禍での開催

 2020年の結米づくりは、コロナ禍という想定外の事態に見舞われました。そのため、田植え・稲刈りともに県内の参加者20名程度での開催となりました。イベント自体は非常に楽しいものでしたが、考えていたような葛尾村に関わっている様々な人たちが顔を合わせる場とはなりませんでした。県外の葛尾村サポーターからも田植え・稲刈りに参加できなくて残念だという声がよく聞かれました。来年の田植えも先行きが不透明なので、しっかりと米づくりの準備をすると同時に、仮に県外の方々が現地に来られなくても葛尾村とのつながりを感じられるような機会を作れるよう考えていくつもりです。

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一般社団法人 葛力創造舎

 葛力創造舎(かつりょくそうぞうしゃ)は、通常なら持続不可能と思われるような数百人単位の過疎の集落でも、人々が幸せに暮らしていける経済の仕組みを考え、そのための人材育成を支援する団体です。

余田 大輝

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