蟻地獄

蟻地獄という虫がいる。
砂場にすり鉢状の猟場を作り、一旦アリがそこへ足を踏み入れたら最後、ズルズルと下へ引きずり込み食べちゃう、あいつのことだ。
誰が命名したのだか、蟻地獄。
言い得て妙だとは思う。

しかし、どうだろう。
本当にこのネーミングは相応しいのだろうか。
もがけばもがくほど死に至る。正に地獄ではある。
けど、それは蟻にとっての話である。
一般的に蟻地獄と呼ばれている『ヤツ』にとっては、地獄でも何でもない。
エサにありつけるわけだから、天国ですらある。
けど、ヤツの名前は蟻地獄なのだ。
おかしいだろ。
なぜアリ目線からの名前を、アリではないヤツがつけられるのか。
アリクイはアリを食べるからアリクイなのだ。
ネーミングの主体性がアリクイ側にある。
なぜヤツのネーミングの主体性はアリ側にあるのだ。
納得出来ない。
あの状況を蟻地獄とネーミングするのは問題無い。
そこへ導く虫として、蟻地獄執行虫とかなら納得出来る。簡略化して蟻地獄ムシでも、ギリギリオッケーだ。
けど、蟻地獄はアリえない。
日本昆虫学会に提案したい。
蟻地獄は今後、『蟻地獄執行虫』もしくは『蟻天国』
のどちらかで行きませんか。

話は続く。
蟻地獄はあくまで幼虫で、成長すると羽が生え、トンボのような成虫となる。

その名も
うすばかげろう。

薄・バカ・ゲロ。

おい、日本昆虫学会よ。
ええ加減にせえよ。


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