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『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』第3巻原作者コメンタリー

 『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』第3巻の発売を記念した原作者コメンタリーです。
 第2巻のコメンタリーはこちら

第9話『俺たちの祝典』
 二学期最初のエピソードです。前回のラストがラストでしたので、これまでやってきたことをおさらいするような内容になっています。
 当初、社長のデッキはカウンター・オースという青緑のコントロールデッキを検討していました。緑単になったのは、連載一周年までに五色それぞれのデッキを登場させたかったためです。あと、コントロールデッキにするとページ数がかさんで横田卓馬先生が死ぬ、という問題もあります。

 デッキレシピは中村聡さんのスパイクの誓いを参考にしました。外見上の特徴が似ていることから、「社長のモデルは中村聡さんではないか?」という声もありましたが、これはもう完全に偶然の一致というか、他人のそら似ですね。ただ、スパイクの誓いを使わせたことで僕自身も「社長のモデルは中村聡さんではないか?」という気持ちになっていたことは否定できません。
 深い理由はないのですが、社長というニックネームは僕が中学生のころ通っていたカードショップの常連客から取りました。社長、もしこれを読んでいたらご一報ください。

第10話『俺たちの聖域』
 『ウルザズ・サーガ』発売直後のエピソードです。ミラージュ・ブロックがスタンダードから退場するということで、別れをテーマにしてみました。
 若い人には想像しづらいかもしれませんが、『ウルザズ・サーガ』前後は『マジック:ザ・ギャザリング』の第一次ブームとでも言うべき時期でした。男子中高生はあたり前のように休み時間にデュエルしていましたし、路上で他校の生徒と肩がぶつかったらカードでやりあうのが常識でした(諸説あります)。はじめの周辺でも、ここから少しずつプレイヤー人口が増えていきます。

 昨年、「25th Anniversary マジック:ザ・ギャザリング展」という展示会に招待していただきまして。来島のこの台詞は、会場内にあったキャプションをパ……参考にしました。原文は浅原晃さん。
 連載も話数がふた桁に乗ると新しいことをやってみたくなるもので、コスプレというかたちで『まもって守護月天!』ネタを入れることにしました。その結果桜野みねね先生に巻末の応援イラストをいただけたことは望外の幸せでしたね。

第11話『俺たちの彷徨』
 遠足回です。導入部でトリーが使っているデッキはパンデモノート。《伏魔殿》を張った上で大型クリーチャーを叩きつける豪快なコンボデッキです。
 もともと八雲ははじめのライバルとなる男子として登場させる予定でした。それとはべつにサブヒロインも用意していたのですが、担当さんから「すでにおっさんだらけなのにこれ以上メンズいる?」との指摘があり、横田先生に相談して、八雲を中性的な女子として出すことになりました。

 ライバルとサブヒロインの役割を統合することで八雲の存在意義は強くなった気がします。担当さんも推しは八雲だとおっしゃっていたので、満足していただけたのかなと。
 このエピソードでは、諌倉ジャングルワールドという架空のテーマパークとゔらすかさんというマスコットキャラクターが出てきます。ゔらすかさんについて、横田先生には「イクサラン・ブロックのヴラスカに寄せてください」としかお伝えしていなかったのですが、妙に味があるデザインが返ってきてすごく気に入っています。

第12話『俺たちの大混乱(前編)』
 †片翼の天使†との戦いを描く前後編の前半にあたる回です。プロット執筆中、どれだけ「†」とタイプしたかわかりません。
 カラオケで八雲が歌っているのは男装の女子中学生がデュエリストになる某テレビアニメの主題歌です。僕は姫宮ア◯シーが好きでした。お姫さまのようであり魔女でもあるという、あの二面性がグッとくるんですよね。
 ……話がそれました。八雲が使っているデッキはダンシング・ドレイクと言います。《流浪のドレイク》ではなく《巨大鯨》を用いて無限マナを発生させる、フリー・ホエリイという同型のデッキも存在しました。
 †片翼の天使†の服装は九十年代後期からゼロ年代初頭に流行したストリートファッションを意識しています。「スケボーとか好きそう」という感じにしたかったのですが、気づいたら「合成麻薬とか好きそう」という感じになっていました。はじめとは違うベクトルで中二っぽさが出ていればいいなと思います。

 ラストでお披露目したターボ・ジーニアスは、現在ではMoMaという呼称で広く知られています。登場したころはターボ・ジーニアスと呼ばれていた記憶があり、当時発行された雑誌にもMoMaという呼称は見あたらなかったため、前者を採用しました。

こぼれ話
 第3巻の発売にあわせて、YouTubeで読切版のボイスコミックが公開されました。神納はじめ役は松岡禎丞さん、沢渡慧美役は花守ゆみりさんが担当してくださっています。
https://www.youtube.com/watch?v=WwpPgz0Dmfc
 いやあ、声優さんってすごいですね。松岡さんは†キリト†ではなく†クラウド†そのものでしたし、花守さんの少女らしさと大人っぽさを自由自在に行き来するお芝居にも舌を巻きました。声優さん! すごい! 本当にすごいんだ!
 ボイスコミックの制作に携わったみなさま、ありがとうございました。

 この巻収録の第12話で連載一周年をむかえることができました。
 連載前にはっきりと物語の道筋を決めていたのはこのあたりまでになります。いざ連載がはじまってみると、ここまで意外と早かったなという印象ですね。
 次巻の発売は春先になると思いますが、それもおそらくあっという間でしょう。
 ではまた次巻で。

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