『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』第2巻原作者コメンタリー
『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』第2巻の発売を記念したコメンタリーです。
第1巻のコメンタリーはこちら。
第5話『俺たちの遠征(前編)』
渋谷DCIジャパントーナメントセンター編の前半にあたる回です。諏訪原八雲と渋山いとが初登場します。
すでに閉業している施設を紙上で再現するにあたり、ホビージャパンさんと晴れる屋トーナメントセンターさんに取材および資料提供でご協力いただきました。晴れる屋トーナメントセンターさんには店内も見学させていただいたのですが、前日にぎっくり腰をやってしまい、ハアハア言いながら前かがみで写真を撮影することになりました。あぶないやつだと思われたかもしれません。
はじめが行こうとしていた「地下のオムライス屋」はラケルというお店です。かつてはDCIトーナメントセンターと同じビルに店舗があり、デュエリストたちの憩いの場となっていたようです。現在も関東を中心にチェーン展開していて、僕も取材の翌日にその味を体験してきました。おかげで腰が治りました!
トーナメント開始前に八雲が使っているデッキはスーサイド・ネクロです。
第6話『俺たちの遠征(後編)』
渋谷DCIトーナメントセンター編の後半にあたる回です。この前後編では、作中の時代に活躍した『マジック:ザ・ギャザリング』のトッププロ(に似た人)が数名、モブにまぎれこんでいます。
読切の執筆時、ムラサ先生が新都社で連載されていた『MTGについて少し話そうと思う』という回顧録が参考文献としておおいに助けとなりました。このエピソードでスポットをあてているゴブさんは、ムラサ先生ご承諾のもと、同作に登場するゴブにいをモデルにしています。
また、ご縁があってこのエピソードからドラゴンスター日本橋店の中島主税さんに資料提供でご協力いただいております。各キャラクターの最終的なトーナメント成績も氏のお力添えのもとで決めました。
両氏にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
第7話『俺たちの訓練』
『アングルード』発売直後のエピソードです。前回、前々回がカードバトルに比重を置いた内容だったので、箸休め的な話になっています。
月刊少年エース本誌ではエアデュエルのシーンにルール上のミスがあり、横田卓馬先生に平謝りして作画から直してもらいました。ところが今度は手違いで台詞が間違っているという……。
該当箇所の台詞は、正しくは「《サルタリーの幻想家》を破壊し《魂の管理人》をブロック」になります。まあ海馬社長も平然とルールを間違えたりしていますし、カードバトルマンガとはそういうものだと思ってください。
それ以外では楽しく書けたエピソードでして、プロット執筆中大きな悩みもありませんでした。担当さんに「(慧美の水着は)スクール水着でいいんですか?」と聞かれて「スクール水着でいいのか……?」と自問したくらいですかね。
第8話『俺たちの夏の終わり』
夏休みの最後を飾るエピソードです。当初、冒頭で出てくるパソコンは初代iMacにする予定でしたが、DCI Reporter(現ウィザーズイベントレポーター)というマッチングソフトがMac OSに対応していなかったため、Windows 98搭載パソコンになりました。
『アングルード』のカードは少ないコマ数でもユニークさが伝わりやすいものを選んで紹介しています。ほかにも凝ったカードがたくさんあるので、ぜひ調べてみてください。わかりにくいですが、社長が歌っている曲はこの年ヒットしたT.M.Revolutionの『HOT LIMIT』です。
ラスト三ページは、僕にとっては物語のグランドデザインがぶれないようにするための錨のような役割を持っています。担当さんと打ち切りっぽく見えるかもねという話はしていたのですが、想像以上にそういう声が多くて驚きました(笑)。幸いまだ打ち切りの通告は受けておりませんので、次巻もおつきあいくださいませ。
こぼれ話
中学生のころ、『デュエルファイター刃』が読みたくて、月刊RPGマガジンを毎月買っていました。もちろん月刊ゲームぎゃざも。
仮想空間で繰り広げられるカードバトルの描写は当時斬新でしたし、呪文の詠唱は男ごころをくすぐるものでした。『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』ではごく一部呪文のルビが英語読みになっていますが、これは完全に『デュエルファイター刃』の影響です。中村哲也先生に巻末の応援イラストを依頼したと担当さんから聞いたときは、「え、待って無理。断られたら手首切っちゃう」と思いました。
中村先生、すばらしいイラストとコメントでコミックスに華を添えていただきありがとうございました。僕の手首は無事です。
狙ったわけではありませんが、夏休みのあいだに一冊丸ごと夏休みの第2巻を出すことができました。
おそらく次巻は秋らしい内容になるはずです。
ではまた次巻で。