見出し画像

『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』第6巻原作者コメンタリー

 『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』第6巻の発売を記念した原作者コメンタリーです。
 第5巻のコメンタリーはこちら

第21話『俺たちの蘇生』
 バレンタインデー回です。純喫茶しぶやまではじめが読んでいるマンガはねこぢる先生の『ねこぢるうどん』。

画像1

 伝説的なエキスパンションとして知られる『ウルザズ・レガシー』ですが、発売直後の評価は現在ほど高くはありませんでした。とりわけプレミアム・カードの導入は賛否両論で、「ぱっと見でレアリティが判別できないカードのデザイン」「ルールを覚えさせる気がない文字が豆粒のような小冊子」「グロ画像一歩手前のイラスト」といった不親切さに『マジック:ザ・ギャザリング』の魅力を見出していた僕のような人間には、いわゆるキラカードは軟派に感じられたのでした。そのせいもあって、この時期はドローもカードバトルももっぱら『FINAL FANTASY Ⅷ』で楽しんでいましたね。
 神社の境内で慧美が見かけたカップルは第1巻にも登場しています。幹谷さんは『オナニーマスター黒沢』にも少しだけ登場していますので、死ぬほどひまな人は探してみてください(姉妹という設定です)。

第22話『俺たちの舞踏会』
 少年誌のラブコメにあるまじきクラブ回です。担当さんのオキニの嬢こと藤宮彩夏もひさしぶりに登場します。

画像2

 作中で流れているユーロビートの楽曲は、NIKO『NIGHT OF FIRE』、MAX『TORA TORA TORA』、DOMINO『MICKEY MOUSE MARCH(EUROBEAT VERSION)』のパロディ。来島が観ているテレビ番組は『天国に一番近い男』と『ケイゾク』です。
 クセの強い三人組の名前と容姿は映画『スワロウテイル』から拝借しました。ラブコメの作劇として、こういう端役を登場させる手法はあまりにもベタというか、古風に感じたかたもいらっしゃるでしょう。ただ、僕は本作を通じて「脈々と受け継がれてきたラブコメのレシピに、自分なりのスパイスを加える」というトライアルをしているつもりです。ということでどうかひとつ。
 社長の仕事については、一応第5話に伏線らしきものが存在します。僕も某尾田先生のように「伊瀬っち伏線回収すげええええええ!」と言われたいので、言ってください。
 背景の資料集めにあたってはMusic Club JANUSさんの惜しみないご協力がありました。この場を借りて御礼申し上げます。

第23話『俺たちの暴乱』
 確定申告回です。チームたつをのTシャツがグッズ化することは今後永久にないと思われますので、ほしい人は勝手につくってくれて大丈夫です!

画像3

 はじめが《次元の狭間》を場に出すコマと《呪われた巻物》で《エルフの叙情詩人》を除去するコマは、月刊少年エース本誌とコミックスで順序が逆になっています。もちろん《次元の狭間》を先に唱えるのが正しいプレイングなのですが、僕が横田卓馬先生に渡す棋譜とプロットで順序をあべこべにしてしまったため、本誌では《呪われた巻物》の起動型能力が先になっていました。横田先生、すみませんでした。
 《怨恨》型の緑単ストンピィが本格的にスタンダードのトップメタに躍り出たのはこれよりもあと、『第六版』と『ウルザズ・デスティニー』の発売後でした。《輪作》で《ガイアの揺籃の地》をサーチする動きも、《マスティコア》がいるのといないのとでは凶悪さが段違いですね。それを待たずにこのタイミングで緑単ストンピィをフィーチャーしたのは、はじめがまだ劇中で対戦していないキャラクターで、バチバチに殴りあう単色デッキの使い手が社長しかいなかったからです。ようは僕の都合です。
 樽切市民文化センターの背景には、エブノ泉の森ホール(泉佐野市立文化会館)さんで撮影させていただいた写真を使用しております。職員のみなさまにこの場を借りて御礼申し上げます。

第24話『俺たちの共鳴(前編)』
 禁止カードだらけの頂上決戦の前編です。扉絵では、一撃堂ツチヤさんのご協力によりずっとやりたかったパロディが実現しました。元ネタはこちら

画像4

 ラブホテルの看板に書かれている「HOTEL ぎるがめっしゅナイト」と「NORI NORI 天国」という店名について。これらはかつて放送されていたテレビの深夜番組のパロディになっています。後者は関西以外の地域に住んでいる読者にはピンと来ないかもしれませんね。もし関西出身の男性と話す機会があれば、「バクシーシ山下」「桜ノ宮タワーズホテル」「チチリンピック」というワードを投げてみてください。あったあったと手を叩いて笑われるか、引かれるかのどちらかです。
 そうそう。このエピソードの執筆中、令和最新版のスタンダードで《創造の座、オムナス》が禁止カードに指定されましたね。ただし、《記憶の壺》が過去最速で禁止されたカードであるというモノローグ(ナレーション)にはあえて注意書きを入れていません。あえてですので、「伊瀬くん……見損なったぞ」とか言わないようお願いします。

こぼれ話
 以前にもインタビューなどでふれていますが、純喫茶しぶやまのモデルは僕が中学生のころ通っていたカードショップです。そのお店が僕のなかでカードショップの標準になっているから、自然とイメージが引っ張られてしまうんですね。
 本作の既刊を読み返していると、横田先生の忠実な作画によって、そこかしこに僕の思い出が再現されています。カードショップで食べたカツカレー(階下が定食屋でした)、行き帰りの道沿いにあったハローマック、長いアーチを描く陸橋……。
 額に汗してママチャリで走った陸橋の左右には、けばけばしい看板をつけたピンク色のビルが、フラミンゴの群れのように立ちならんでいました。もうおわかりですね。中学生の僕がどこか立ち入ってはいけない雰囲気を感じていたそのビル群こそ、「大人のデュエルするとこ」です。

 休載を一回挟みまして、次巻の刊行時期はおそらく新年度になると思われます。はじめたちも次巻で中学三年生になり、新キャラも出るやら出ないやら。まだ構想が固まっていなくて、あせるような、いつもそんな感じのような。
 次巻でも変わらぬ応援のほどよろしくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?