「わたしには生きてゆくための技術がある」——戦前のヤングケアラーを追体験。『愛し、きつメロ—看取りと戦争と—』小林孝信
「自分の人生と病気との縁を書き残してほしい」
著者はある夏、病院のベッドに横たわる80歳過ぎの母親が、そう控えめにつぶやくのを聞いた。
彼女がいう「病気との縁」とは、自身の闘病生活だけではなく、戦前・戦時下において彼女がおこなっていた、家族の看護・介護・看取りの体験も同時に指していた。
物語は主人公「美戸」が自身の幼少期を回想するところから始まる。
大正7年、富山県の魚津郊外で発生した米騒動。美戸は騒動の半年前にこの漁村からわずかに離れた村でその生を受けた。
5人兄妹の