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デスパレート親不知

親不知を抜いたことがありますか?

『親不知 抜く 痛い』などで検索してきた人を恐怖におとしいれようと思って、これを書くことにしました。

でもまぁ、私の経験は稀な例ということで。

親不知抜歯の外れを引いた残念な話。


親不知を抜いたのは2回。20そこそこの時に1回と2回出産を終えて30を過ぎてから1回。どちらも下の親不知だった。20そこそこの時に抜いた時は、抜くまでは大して痛くもなく、麻酔が切れてしばらくしてから痛みだし、翌日までそこそこ痛かった記憶だ。

今回書くのは2回目の抜歯の時の話。

子供たちの歯科検診について行って、ついでに自分も見てもらった時に「親不知、痛いんじゃないです?抜きましょうか?」と声をかけられた。やっぱり?疲れた時に痛むなぁと薄々感じてましたが、気付かないフリしてましたが、やっぱり?と。子供たちの手前「痛いのは嫌です」とは言えない。

レントゲンを撮り、1週間後に抜歯の予約を入れて帰宅。


そして1週間後。

いざ!抜歯である。麻酔をチクチクと刺し感覚がぼんやりしてきた頃、歯科医に「じゃ、いきましょうか。」と声をかけられた。おーけーおーけー、心の準備はできてるぜ?と挑んだものの、数分後

「ちょっと今日は抜けません。触っちゃったので、痛みが少し出るかもしれないので、痛み止めを出しておきますね。また来週抜きましょう」

ちょっと何言ってるかわからない。

そして実際、何か事情があってこの日はできなかったはずだけど、歯科医の説明をすっかり覚えていない。えっ、マジで?そんなことある?と思いながら、痛み止めを処方され帰宅。

翌日からじわじわ痛む奥歯。もとい親不知。

さっさと抜いて楽になりたい。抜いてからも痛いのに抜くまでも痛いとか何それ。

待ちに待った1週間、ホレ、さっさと抜いてくれ、と思いつつ歯医者へ。その日はなぜか長男が「僕も一緒に行って、お母さんの歯医者待ってる」と言うので、1時間もかからないだろうしと軽い気持ちで長男も一緒に連れて行った。お母さんの背中を見ておけよ、くらいの気持ちで。

そして麻酔アゲイン。この麻酔はじわっと痛いよ。

先生今日こそは抜いてくれよ、頼むよ。満を持して歯科医登場。

「先週はすいませんでした。今日はしっかり抜いちゃいましょうね。」

と声をかけ、ゴリゴリやり始めた。ちょっと待って?私麻酔してるよね?痛いんですけど。いや、そんなことはないよね、としばらく耐える。いや、待って。普通に痛みがある。

恐る恐る「ぁのー…ひぃたいです」と声をかけた。口に手を入れられた状況で話すとなんであんな間抜けな声になるんだろう。


「あ、じゃ麻酔足しますね」

また麻酔打たれて、しばらくして、またゴリゴ…痛い。ちょっと待って、まだ俄然痛いです、先生。なんで?でも麻酔追加された手前、しばらく耐え…られなかった。

「まっまっ、痛いです」

「えっ」

先生待って、えっはどっちかっていうと私の台詞。なんで痛いの。ていうか、もうすぐ抜けるなら超痛いけど耐えますけど、進捗状況いかがでしょうか。などと思っていたら、歯科医「ちょっとレントゲンお願い」と歯科助手に声をかけてる。えー、この状況でレントゲン?結構痛みありますけど、本当に?

私の心の声など知る由もなく、あれよあれとレントゲン。

これ、レントゲンとか撮ると治療費高くつくんだよなぁ、自分の歯でお金かかるの嫌だなぁ、痛いなぁ、長男結構待たせちゃうな、大丈夫かな、と考えながらレントゲンを撮って、席に戻り、しばらくすると歯科医登場。

レントゲン見て、どうやるか決めたらさっさと抜いてくれ。

多少痛くても耐えるからさ。


「すいません、ここでは抜歯できません。近くの口腔外科にすぐアポ取れるか連絡するので、そちらに行ってもらえますか?」


歯ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー????

さっきゴリゴリしてましたよね?若干私、口内血の味しますけど、この半端な状態で?今?自分で?疑問符まみれの私をよそに歯科医電話のため、フェードアウト。

とりあえず、長男は一度家に置いてこよう。

で、今日抜けるの?この状態で抜けないとか割と地獄。


どうやら近くの口腔外科のアポが取れたらしく、紹介状を貰う。受付で痛み止めを「今飲んで」と飲まされ、お会計0円で謝罪された。

痛み止め、飲んだけど、麻酔今絶対切れてきたよね、尋常じゃないくらい痛いんだけど。

「お母さん?歯、抜けた?抜けた歯見たいー」と聞いてくる長男に「抜けなくて、違う病院にいかないといけなくなっちゃったの。お家でお父さんと留守番しててくれる?」と言い、奥歯に心臓でもあるんじゃないかってくらいドッドッと痛みが波打つ中、微妙な顔で笑って、真顔で前を抜き必死で運転した。

どうにか長男を旦那に引き渡し、さぁ、口腔外科へ。

親不知の抜歯の途中で投げ出された人を私は私以外知らない。だから抜いてる最中に麻酔が切れてきて、痛み止めを飲んでてもその痛みがひどいなんてことはもっと知らない。

痛い痛い。運転してるだけで、車が揺れるだけで痛い。なんでこの状況で自分で運転してるのか自分でもよくわからない。一人がゆえに声が漏れる「あー…これはちょっとあれだな」と。なんて表現していいのかわからない、こんなの…初めて…って感じだ。

痛みでクラクラしながらも、総合病院の駐車場に車を停め、これまた一人で徒歩で口腔外科を目指す。痛みで歩みが止まる。痛みでじんわり涙がにじむ。おっと韻ふんじゃったぜ。なんて思いながら、本当に痛い。あまりに痛くて私よりおそらく40は上であろうご婦人に追い越された。

エレベーターの『5』のボタンを押して、ゴウン…と動くエレベーターの壁に寄り掛かる始末。

待って、私子供2人産んでるんだよね、あの時ですらちゃんと歩いてた気がするんだけど。


そんな思いでたどり着いた、口腔外科。

受付のお姉さんにかくかくしかじか説明して、待つこと30分。

颯爽と現れたのは女性の歯科医だった。紹介状を読んで「はい、じゃ抜きましょう」と一言。えぇ、これもうかれこれ最初に麻酔かけてから3時間くらい経ってますけど。そして麻酔アゲイン。もう今日何回刺されたのか不明。他が痛すぎて初回はじんわり痛かったはずの麻酔も痛くない。

さあ、これから耐えないといけないのか。

「はい、抜きました」

はやっ、まさかの数分。あっという間にあんなに試行錯誤しても抜けなかったあいつが抜けた。

「見ます?抜いた歯」

「あ、見ます。っていうか持って帰ります。」

「え、持って帰ります?」

「えぇ、記念に。」

持って帰ろうなんて思ってもなかった親不知だったが、こいつは持って帰ろうと決めた。

歯科助手さんが軽く洗ってくれて、見せてくれた親不知は思ったよりでかかった。そして、カメラのフィルムケースみたいなのに入れて手渡された。


抜けた。

とりあえず、抜けた。


抜くまでも泣きを見たが、抜いてからまた泣きを見ることになることはこの時の私はまだ知らず、ただただ安堵するのだった。





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