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第169回天皇賞・春

◎7枠14番・テーオーロイヤル(菱田裕二騎手)

2022年5月1日、阪神競馬場。

第165回天皇賞・春を、現地観戦していた。

逃げ切った優勝馬が、遥か前でゴール板に向かっていた中、差を詰めようとしていた人馬の姿が忘れられなかった。

勝利を掴む険しさを、心底から体感しながら、ゴールに向かっていたのだと思うと、人生の奥深さと比例している感もした。

生き方には、様々な形がある。

常に、トップレベルで活躍する場合があれば、地道ながら、経験を積み重ねていき、その先で、大輪の花を咲かせる場合もある。

主戦騎手である菱田裕二は、正に後者だろう。

僕の第一印象は、「若き名脇役」。

ここ最近では、福島競馬場で行われた福島記念で、パンサラッサに騎乗し、鮮やかな逃げ切り勝ちを決め、その後の大活躍の土台作りに貢献した勇姿は、末永く語り継がれていくはずだ。

そして、馬自身も、丁寧にキャリアを積んできた競走馬生活になっている。

2020年12月19日、阪神競馬場でデビュー。(3着)

その時の勝ち馬は、翌年、チューリップ賞をメイケイエールとの1着同着で制したエリザベスタワー。

その後、4戦目で初勝利を飾った。

阪神競馬場での芝・2400m戦。

これが、活躍していく土台となっていった。

ワンダフルタウンが制した青葉賞は、4着止まりとなったが、そこから4連勝。

その4連勝目が、2022年2月19日に、東京競馬場で行われたダイヤモンドステークス。

ステイヤーとしての実力を、己の力で、立証してみせたのだ。

勢いを背に、阪神競馬場開催となった天皇賞・春に参戦したが、前述した光景が待っていた。

そのショックを引きずったのかもしれないが、スランプの日々が訪れてしまい、その上、骨折による1年間の休養に。

でも、決して下を向く事はなく、ひたすら復帰に向けて、爪を研いでいたのだ。

復帰戦のアルゼンチン共和国杯は、10着に終わったが、次走の中山競馬場で行われたステイヤーズステークスで2着に入り、復活の予感を漂わせた。

そして、年が明け、2024年。

始動戦となったダイヤモンドステークスで、隔年制覇を飾り、健在ぶりを強くアピール。

春の盾に向けての重要なステップレースである阪神大賞典を制覇し、重賞連勝。

遂に、長距離路線の頂点を目指す伝統のレースで、一番人気を背負う立場になったのである。

ファンの方々は、厳しい指摘をしている。

「京都競馬場出走経験なし」

「菱田裕二騎手は、G1での経験不足」

「ここまでのローテーションに、不安高まる」

素直に受け入れなければならないのは、偽りなき事実だ。

でも、積み重ねた経験と勝利への想いは、それらを凌駕していくと、僕は信じたい。

所属厩舎で、初G1制覇の夢。

それは、師匠でもある岡田稲男調教師も同様なのだ。

夢叶う光景に出会いたい。

祈り込めながら、スタートの時を待ちたい。




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