1213岩下

最近は演技について新しいことが発見されるということが少なくなってきている。演技態を見つけられてきて、それを使ってどう遊んでいくかという段階に入ってきているのだと思う。
演技態の演劇をきちんとパッケージング化して届けるための工夫をたくさんしてきたが、今当たってる課題は、「私」とか「彼女は」とかいう言葉に引っ張られる体についてだと思う。

今日オープニングシーンを作っていて、「あのーさ、え、寝てる?聞こえてる?〜?〜?」というセリフをそれを話しかけている人物から離れて喋るということを試みた。
普通なら、「寝てる?」というセリフは特定の人物が特定の人物に向かって話す言葉だから、何も考えずにセリフを発すると特定の役を背負ってしまう。原理的にはいつでもゲシュっているのであれば言葉に引きずり込まれるはずはないけど、役への移行を身体の要請通りにシームレスにするためにゲシュりに固執していない現時点では、こういうことが起こりうる。

そう考えると、この芝居を演技態の演劇にするためには、自分の体と言葉の結びつきを日常的なレベルと同じく考えているのでは不十分なのかもしれない。
役との距離(=演技態)が作品上を上下しながらたゆたうように計算する作業と、実際に舞台上でたゆたうということを別物に考える。

特に自分の役はストーリーテリングをするのが厄介だ。「私」と喋る私の口はその役が喋る「私」とは別物であってほしい、ということが簡単に起こりうる。「彼女」と喋る私の口は、役がさす「彼女」との距離感とは異なる距離感の言葉を喋っていたいということが起こりうる。
その距離感を自覚しておくのが演技態の演劇においては必要か、もしくは、そういう距離感のズレが客に暗黙のうちに存在することが演技隊の演劇においては可能になる。のではないか。

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