私が面接官だった時のこと

今日は高校野球の試合がないので非常に残念ですが、球児たちが無理をし過ぎないように、休息は必要ですね。なんせ、全国4,000校の頂点を決めるのである。万全の状態で臨んで頂きたい。


さて、今日は唐突に私が面接官だった時のことを振り返って、準備から面接中の思考、終了後、その他のルーティーンなどをまとめてみよう。ちなみに、私は人事として新卒採用も中途採用もどちらも採用担当として、また面接官としての経験しましたが、どちらの場合でも準備や流れはほとんど変わりません。強いて言うと、面接記録を残すために社内で使っていたシステムが、新卒用と中途用で異なっていたくらい。
(注:本文内において 面接官=面接のみ担当する人、採用担当=採用活動全体を担当する人 の意味)

あくまでこの記事で記載するのは、私の前職系(アメリカ系、わりと大きめ)の場合で、且つ私個人のこと。必ずしも他の面接官が同じだとは限らないので、そこんところよろしくお願いいたします。


採用活動 全体の流れ

はじめに、面接そのものについて記載する前に、採用活動の全体的な流れをざっくり記載しておきましょう。

0 事業計画の作成
1 必要人員数の算出
2 予算計画とのすり合わせ → 採用予定人数が確定
3 採用計画の立案
4 採用チャネルの選定(紹介会社、広告、ダイレクトソーシング、その他)
5 母集団形成
6 書類選考
7 面接日程の調整
8 一次面接
9 合否連絡&二次面接の日程調整
10 二次(or 最終)面接
 ※面接回数により9~10を繰り返す
11 採否決定のための会議
12 待遇の決定(給与とか)
13 内定連絡
14 会社見学や面談
15 入社手続
16 入社日

こんな感じでしょうか。恐らく多くの企業では、3~14くらいを採用担当がメインで対応していることと思います。実際には、もう少し細かな付帯業務などもありますが、とりあえずこんな感じで。

面接依頼と日程調整

面接官にアサインされた場合は、採用担当から面接対応の依頼が来ます。
前職の場合は、採用担当からOutlookで予定がリクエストされて、それを「承諾」すれば日程確定という感じでした。予定表の中にはシステムに登録された候補者情報にアクセスためのリンクが貼られています。

まず、このリクエストを受け取ったら、下記の3点を確認します。
・日程(対応の可否)
・場所(&対面orオンライン)
・職種と職位(自分が面接するのが妥当かどうか)
・面接での確認事項

日程は言わずもがなですが、出張が多い会社でしたので面接がどこで実施されるか、オンラインなのかをまず確認します。

また前職での人事は、それぞれに担当事業部が割り振られていたので、まず自分が担当している部署に関する面接かどうかを確認します。また原則としては自分より上の職位の面接は出来ないという社内ルールがあったので、そこに引っかかっていないかを合わせて確認します。

自分が担当ということで間違いがなければ、その面接でどの領域を確認するのかを確認します。前職では面接官ごとに誰が何を(ハードスキルなのか、コンピテンシーなのか)確認するのか、事前に細かく割り振られていました。

候補者情報の確認

日程が確定したら、ざっくりと候補者情報を確認します。確認するのは履歴書と職務経歴書です。(新卒の場合はESです)
もし自分の知り合いが候補者だった場合は、採用担当に連絡して別の面接官をアサインしてもらいます。(利益相反とならないように)

当日の準備

そして面接当日、面接開始の30分くらい前から準備を始めます。まずは募集職種の募集要項を確認します。前職では随時たくさんの職種が同時募集されていたため、必ず職種の役割などを再確認します。
そして改めて候補者情報を確認し、どのような経歴を持っている人なのか頭に入れます。履歴書等に目を通すのは大体3~5分程度です。その間で、過去の業績や転職歴などのキャリアのバックグラウンド、その他の懸念事項の有無などを確認し、頭の中でなんとな~く、候補者像をイメージしておきます。

履歴書や職務経歴書というのは、キャリア情報だけではなく、その人の人柄や性格的なものもよく反映していると思います。言葉の使い方や書類自体の体裁、記載内容、全体の整合性の有無など、見慣れてくるとなんとなくキャラクターまで分かってくるような気がします。しかし、面接するまでは先入観を持たないように、あくまで"仮説"として、頭に置いておく程度です。
#でも結構当たります

職種情報と候補者情報を確認したならば、次はアサインされている確認事項を再確認し、コンピテンシーごとの質問項目に目を通し、面接で使う紙にメモしておきます。大体一つの面接で2つから3つくらいの大きな確認事項が割り振られます。

ちなみに私は面接をする際は大抵PCではなく、紙でメモを取っていました。主に下記のような理由がありました。
・候補者に目を向けたまま記録できる
・PCでメモを取られることを嫌う候補者がいる
・記述の自由度が紙(手書き)の方が高い

一つ目の「候補者に目を向けたまま・・・・」について、もちろんタッチタイピングは出来るのですが、変換や改行などで目をディスプレイに向けてしまうことがあります。時間としては一瞬ですが、言葉以外からも多くの情報を得ることができるため、面接中は出来るだけ候補者に目を向けていたいと考えていました。

また、上述のように目が離れたり、或いはPCでタイプしていると、候補者からすれば面接記録を付けているのか、他の業務(メールチェックや社内チャット)などの対応をしているのか、分からないため不信感を感じたりする候補者がおり、候補者の印象があまりよくはありませんでした。面接は情報を集める場である以前に、候補者との信頼関係を築く場なので、そういう意味でも、PCは出来るだけ使わないようにしていました。(電話面接の場合などは使うこともありましたが。)

最後に、記述の自由度ですが、私は面接のメモを取りながら、マインドマップのように線でつないだり、キーワードを丸囲いすることがありました。もちろんこれらはPCでも出来るのですが、スピードと自由度の高さという点で、紙を選んでいました。ちなみに、面接記録は社内のガイドラインもありましたが、質問と回答を出来る限りそのまま記録していました。なので結構書くのも早いです。
#自分で書いた文字が読めないけど


そうこうしているうちに面接の10分前になりました。
昨今はzoomなどオンライン面接にすっかり切り替わっていますが、Face to Faceの対面で面接を行っていた際は、面接を実施する部屋に開始前に行き、整頓されているか、前のMTGの"熱気"が残っていないか。またエントランスからの導線上に何か障害物がないか、確認していました。


さて面接3分前です。候補者が来たのでお出迎えに行きます。
前職では一部のVIPを除いて、面接官が直接候補者をお出迎えする方式でした。エントランスまで行き、ご挨拶したあと入館証を渡し、ご案内します。
この時、さりげなく候補者の身だしなみや雰囲気、靴や鞄などをチラ見します。別に服にシワがついていようが、靴が汚れていようが、合否には一切加味しませんでした。私は外見ではなく過去の実績に対して純粋に評価するけっこうフェアな面接官だったと自分では思っています。ただ”どういう人か”を知るためのヒントにはなると思っています。
#エントランスに向かう道すがらミンティアさんでお口を清めます

面接開始

お部屋にご案内し、いよいよ面接開始です。
が、まずはお互いゴールセット(共通認識)をします。忙しい中、時間を作ってくださったことに対し、改めてお礼を伝え、面接の進め方(時間配分や全体の流れ)を説明します。
私は面接の開始時にいつも伝えていたのですが、面接は候補者にとっても、その企業でどういう人間が働いているか、また社内の雰囲気を知るための機会なので、お互いに情報交換をするべく、率直に話すことをお互いに約束していました。

共通認識が取れたら、いよいよ面接開始・・・と思わせて、まずはアイスブレイクです。率直に、飾らずに話せるように、時には冗談など言ったり、大きく深呼吸してもらうこともあります。
大体ここまでで、面接会場に入ってから3~5分です。

ちなみに面接の全体のスケジュールとして頭においていたのはこんな感じです。

アイスブレイク 5分
自己紹介 5分
最初の確認事項に関する質疑応答 10~15分
2つ目の確認事項に関する質疑応答 10~15分
候補者からの質問 5~10分

こんな感じで45分くらいで収まるように、常に時計をコソっと確認しながら勧めていました。(大体は自己紹介から自然と話を拡げながら、最初の確認事項に話をシフトさせていました)


確認事項の質問の展開について。
主にコンピテンシーを確認する場合、特定のシチュエーションについて、経験の有無を聞き、その中で細かく掘り下げていくという進め方と取っていました。
例)
Q:チームで大きな成果を上げたことはありますか?
A:はい、あります。
Q:具体的にはどのような成果を上げましたか?またあなたの役割はどのようなものでしたか?
A:・・・・・・

もし、該当する経験がなければ、別の質問に移るという感じです。
さらに掘り下げとしては、上記のような質問の後に「具体的には・・・」や「どのように・・・」「なぜ・・・・」など5W2Hでの質問を重ねていくという手法です。(Closed Question→ Open Questionの繰り返し)いわゆる、コンピテンシー面接を徹底的に行うという感じです。

この時に、質問が"尋問"みたいになってしまわないように、相槌はちょっと大げさ目に入れたり、アクティブリスニング的な手法(共感、復唱など)を組み合わせていました。

同時に、候補者の話す様子(汗は書いていないか、手の動きはどうか、目線はどうか、声のトーン、大きさ、スピードに変化はないか)など、ありとあらゆるところを観察します。

なので、目の動きは候補者、手元のメモを8:2くらいの割合で見て、合間に時計をチラ見という感じでしょうか。

表情はアルカイックスマイルの2歩手前くらいをキープ。

手元では必死にメモを取っています。

一方で、頭の動きとしては、
質問の答えを聞きながら、どんな相槌を打つかを考えつつ、次の深堀りのための質問を考える。且つ、残り時間と必要時間を計算しつつ、余力があるときはお昼に何を食べるか、次の予定は・・・などと考えていることもあります。
#実は結構頭の中が忙しい


そうこうしている間に、面接開始から40分が経過しました。
聞き洩らしがないか、手元のメモをざっと確認します。(もしあれば急いで確認します)

聞き洩らしがないことを確認したら、たくさん話してくれた候補者にお礼を伝え、候補者からの質問に答えます。この時、候補者から質問が無いと少し寂しい気持ちになります。本当のことをいうと、仕事にも会社にもあまり興味がないんだろうと感じてしまうので、一つか二つくらいは用意しておくと良さそうです。ただ、Google先生に聞いたら3秒でわかるようなことを聞くと、やっぱり良い風には感じないというのが、正直なところです。
#仕事中もすぐに周りの人に聞いちゃうタイプ認定

じゃあ、特にナイスな質問やどうしても聞きたいことが思い浮かばないときに、何を聞けばよいのかといえば、その「面接官」しか答えられないようなことを聞くのが定石かなと思います。「あなた(面接官)にとっての仕事のやりがいは何ですか?」的な。好奇心が溢れて止まらない場合でも、10個も質問してしまうのは、イマイチな印象を持ってしまいます。どうしても聞きたいときは「あと〇個くらい聞いてもよいですか?」と相手のスケジュールへの配慮をしましょう。
#これをしないと空気読めない人認定


さて、候補者からの質問タイムが終わると、今後のスケジュールを伝えます。結果はいつ頃出るのか、残りの面接が何回くらいあるのか。
そして、最後に改めてお時間を取ってくれたこと、色々な話を聞かせてくれたことについて候補者にお礼を伝え、出口へと案内します。


しかし、実はまだここで終わったわけではありません。
出口やエレベーターまで案内する間に、何気ない質問を投げかける時があります。
例えば「今日はお仕事お休みですか?」「ここまでは電車で来られたんですか?」など。本当に何気ない質問です。
だがしかし、面接が終わった解放感からなのか、NGワードを口にしてしまう方がチラホラいます。
例えば「いえ、営業の外回りの間に抜けてきました」「いえ、近くの駐車場に車停めてます(案内では公共交通機関を使うようお願いしています)」などなど。実態がどうあれ「有給休暇を使いました」「はい、電車です」と答えてもらえれば、深く詮索しません。何気ない会話なので。ただ、明らかにルール違反を口にされてしまえば、ルールを守らない人なのだと判断せざるを得ないというのが、心情です。
もちろん、一つの×で採否が決定するわけではありませんが、面接の中で、グレーな点が多かった場合、全体の評価も厳しくなる可能性は高いです。

面接終了後

さて、面接が終わった後は、まず会場の片づけです。忘れ物がないか、ゴミなどが落ちていないか確認し、自席に戻って、面接評価をまとめます。

評価(合否)のつけ方

私の場合は、面接の評価は合格か不合格の2択です。というか、会社の方針で各面接官ごとにまずはそれぞれの評価を決める必要がありました。

極端に良い(悪い)候補者であれば、合否が先に決まることもありますが、大抵の場合は、良いところと難しいところの両方があるため、即決できません。そういう時は、まず良かった点と悪かった連を箇条書きで列挙します。

列挙したら、もともとの自分がアサインされていた確認項目を読み返します。例えば、確認項目二つあり、両方を満たしていれば合格、両方満たしていなければ、不合格としていました。仮に、その2つ以外にすごく大きな強みがあったとしても、合否は変わりません。(面接履歴の申し送り事項にメモはします)なぜなら、様々な評価軸の中で重要なものを抽出し、面接官に割り当てているため、合否はその責任範囲に基づいて判断すべしというのが基本概念だったからです。

迷うのは、いずれかはOKだけれど、もう一方は足りない、或いは強みも弱みも際立ったものが無い場合です。いずれかOKという場合は、もう一方がよほどクリティカルにダメだったり、その他に大きな懸念がなければOKとし、採否会議で議論します。目立った強みや弱みがないという場合は、よっぽど採用に苦戦していて人手不足の状況でない限りは不合格としていました。

このような形で、合否と強みと弱みを箇条書きで書き出し、さらにその判断に至った、質疑応答の具体的なやりとりの内容を補足として記録します。
最後に、全体の内容を要約するSummaryを付けて全て終了です。ボリュームとしてはA4が1~2ページ分くらいの量を書きます。
面接記録としては、ちょっと多いと感じる人がいるかもしれません。すべての面接が終わった後に、採否を決定する会議を行うのですが、大体自分が面接してから1週間後くらいになるので、細かく記録していないと他の候補者と混同してしまったり、記憶があいまいになったてしまうので、出来る限り細かく記録しておきます。

採否を決定する会議では、全面接官+採用担当にてそれぞれの評価内容を確認し、採否を判断します。よほどのことが無ければ、30分程度で結論を出します。この会議の中で、スキルは不足しているが高いポテンシャルに期待が出来るというような方の場合は、どのようにしてマネージャーやチームがサポートするのか、育成のラフプランなどを問うこともあります。改めて、採用というのは、面接のことだけではなく、そこから始まるすべてに関わる一大プロジェクトだと感じます。



さて、久しぶりの長編になりましたが、いかがだったでしょうか。今まさに新卒採用の面接が佳境を迎えている頃かと思います。もし普段面接をする機会が少ないけれど、期間限定で駆り出されているという方がいらっしゃれば、、、、あまり参考になさらないでください。少なくとも履歴書や職務経歴書は10~15分くらいは読み込んでおいた方がよいかと思います。
#ちなみに私は人の顔は覚えられないくせに、履歴書は覚えられる(初めましてかリベンジか)
#あと履歴書と職務経歴書を見たら年収を当てられるという特技もあります

サポートありがとうございます!小躍りしながらキャリア・コーチング関連書籍の購入費に充てさせていただきます。