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生命とは何か:資源を内部化する力

生物は、外部にある資源を身体の内側に取り込みます。これにより、身体を成長させたり、分裂や産出により個体を増殖させたり、恒常性のために使用したりします。

生物と無生物の差の説明として、成長、増殖、恒常性が挙げられることがあります。これらは、外部からの資源を取り込む能力に基づいていることが分かります。従って、生物の特徴の基礎は、資源の内部化という性質と言えます。

■内部化のプロセス

資源の内部化は、単に外部にある物を内側に入れるという資源の移動だけでは成立しません。獲得した資源を、利用しやすい形に加工するプロセスや、利用可能な形で保管する場所へ運搬するプロセス、保管する構造物を構築するプロセスが必要です。

つまり内部化には、資源の取り込み、加工、運搬、構築というプロセスが必要です。

■構築

この生物が基礎として持つ内部化のプロセスのうち、構築には大きな特徴があります。

私たちが日常生活や経済活動において資源を保管する場合、保管するための容器や倉庫を用意して、そこに資源を置いておきます。つまり、保管するための構造物と資源は、別々のものとして扱っています。

一方で、生物の資源の保管方法では、保管用の構造物と資源の境界がありません。保管するための構造物を資源によって作り、その構造物の素材となった資源が保管されている状態になります。

例えるなら、おとぎ話に出てくるお菓子の家のようなものです。お菓子を家という構造物にすることでバラバラになったり雨に流されなくなります。これによりお菓子を保管できていることになります。そして、お腹が空けばこのお菓子の家の壁や柱を食べるという形で活用できます。

生物の内部化による資源のストックも同じです。脂肪細胞や筋繊維等の構造に資源を蓄え、必要になればその構造を崩して資源を消費します。

また、生物の構築するものは固定され静止する構造物だけではありません。動作し機能するメカニズムも、生物は構築します。これはお菓子の自動車に例えることができるでしょう。

■成長と増殖

生物の特徴として挙げられる恒常性、成長、増殖のうち、成長と増殖は、身体の構築に他なりません。成長は自分の身体の構築、増殖は別の個体の身体の構築です。

このように、内部化の中の一つのステップである構築は、生物の3つの特徴のうち2つに直接的に結びついています。シンプルな構築が成長であり、構築プロセスが高度化することで増殖が可能になります。

■恒常性

恒常性とは時間経過や環境の変化があっても、生物がその身体や性質や機能を同じような状態に保ち続ける性質を指します。

環境の変化により外部から資源をすぐに入手できない場合、身体や性質や機能を保ち続けるためには、身体の内部にある資源を消費するしかありません。このため、資源が獲得できる状況下で、資源の内部化を行っておくことが生物の恒常性にとって重要になります。

恒温動物にとっては、体温を一定に保ち続けることが恒常性の分かりやすい例です。日中に外気温がある程度高ければ、体温は自然に上昇します。これは熱という資源を外部から受けることができる状態と言えます。そして、夜や冬になって外気温が下がれば、体内に蓄えていた脂肪などの資源を使って体温を上げます。

このように、内部化は恒常性に対して間接的ですが重要な役割を担います。内部化の能力により、恒常性が高度化したとも言えます。

■さいごに:生命の本質

このように内部化の仕組みは、生物の3つの特徴である恒常性、成長、増殖に直接的あるいは間接的に深く関わっています。

おそらく、生物誕生以前の環境下で、無生物的な物質が内部化の仕組みを獲得し、その仕組みが進化していくことで、生物の特徴の獲得へとつながっていったと考える事ができるでしょう。

これは、生命の本質は何かという問いに対する一つの回答を提供します。つまり、資源の内部化が高度化したものが、生命に繋がっているという回答です。

資源の内部化は、資源の取り込み、加工、運搬、構築というプロセスから成り立っています。これらの仕組みが無生物においても成立し、進化することが説明できれば、生命の起源について一つの側面からの説明が可能になるでしょう。


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