見出し画像

泣きながら微笑んで ~AKB48・大島優子の懐古録~ #7

■2007.1.21、2.17「脳内パラダイス」公演

AKB48チームK「脳内パラダイス」公演(K3)の最前列を経験してしまった私は、週末に行われるK3公演に通い続けることとなる。その一番の原動力となったのは「大島優子の存在」であることは言うまでもないのであるが、連続してK3を見続けたことによって、チームKメンバーやそのヲタさん達が創り出す「K3公演の雰囲気」に酔ってしまった部分も非常に大きかった。K2「青春ガールズ」公演は、先発のチームAと比較され続けたチームKの最初のオリジナル公演で、「転がる石になれ」で高らかに「We are the Team K !」とチームアイデンティティを叫び、それにチームKのヲタさん達が共鳴することで尋常ではない盛り上がりぶりを示していたと聞き及んでいた。K3でもその流れは途切れることは無く、私が入場した公演では常に「Kリーガー」と呼ばれた熱心なヲタさん達による熱い声援が劇場内にこだましていた。しかし、その熱量が大きすぎるゆえに、K2を見ていない私の様な新参者(PD=「ポッと出」とも呼ばれる)は、当初はその光景に戸惑いを覚え、時には「ウザったさ」を感じることもあった。ところが、K3公演におけるチームKは初日以降様々な「試練」を迎えることとなり、その経緯を「Kリーガー」とともに体感することで、私のチームKそのものに対する感情移入の度合いが大きくなっていく。

試練その1。K2の頃から足の具合が良くなかった梅田彩佳(梅ちゃん)がK3初日を終えた後「疲労骨折」の診断を受け長期のお休みに入ることになってしまった。チームK結成当時のレッスン場で優子とともに鏡の最前に並んで切磋琢磨していた話は聞いており、個人的に優子以外ではお気に入りのメンバーの一人だったため、最初に梅ちゃん長期休演の報を聞いた時は非常に残念な思いでいっぱいだった。しかし、私のイチ推しは勿論優子であり、優子が公演に出ていることが私にとって最重要事項であるため、時間の経過とともに梅ちゃんの休演を強く意識する機会は徐々に少なくなっていった。ところが梅ちゃんの休演発表から1か月が経過した2007年1月21日のK3公演で、優子がオープニング3曲後のMCでこんな発言をした。

「実は梅ちゃんも一緒のステージに立っているんです」

唐突に梅ちゃんの話が出てきたため、優子の発言の真意がわからず、その後の公演の中で私は「答え探し」をするのだが、その答えはなかなか見つからないままアンコールを迎える。EN1「花と散れ!」。優子の見た目がいつもと違う。ようやく答えが見つかった。梅ちゃんがアンコールで被っている帽子を優子が被って登場したのである。プロ野球やサッカーなどのチーム競技で、欠場者のユニフォームをベンチに飾ったり、肌に欠場者の背番号のペイントを施したりすることを優子が実践したのである。優子は発言だったり、ブログだったり、ヲタさん達に自分の心の機微を見せるタイミングが実に絶妙なメンバーであり、この優子の行為により少なくとも私は梅ちゃんの存在を公演中忘れることができなくなってしまった。その後梅ちゃんの帽子については宮澤佐江も被って登場することがあったし、梅ちゃんの立ち位置を詰めようというスタッフの提案をメンバー全員が拒否したというエピソードをK3千秋楽の野呂佳代の発言で知ることもできた。1月21日のK3公演は、私が「チームKの絆」に酔わされるきっかけとなった公演となる。

試練その2。1月でチームA3rd.「誰かのために」が千秋楽を迎え、新公演のレッスンに入ったことにより、2月の劇場公演予定はK3公演で埋められることとなった。しかし、チームKは1月途中に早野薫(かおりん)が脚の怪我でしばらく休演することとなったうえ、インフルエンザが流行し、16人揃っての公演ができない状況が続いてしまった。今と違って研究生がいなかったので、出演メンバーが休演メンバーの穴を埋めねばならず、元気だったメンバーも徐々に弱って体調を崩すという負の連鎖に陥る。優子も例外ではなく、2月半ばにダウンしてしまう。そんな状況で迎えた2007年2月17日の公演は、優子を含めた5人がケガ・体調不良で休演のうえ、秋元才加がメディア収録で休演という「大ピンチ」の状況。10人しかメンバーが揃わず、表情に疲労の色が濃いメンバーもいる中ではあったが、そんな状況を必死に盛り上げようとしたのは熱心な「Kリーガー」達だった。いつも以上に大きな声でコールして、大きな手拍子を送っていた。そんな声援に残ったメンバーも必死に応えて力を振り絞る。そしてクライマックスは最後の曲「草原の奇跡」に訪れる。センター立ち最前で「Kリーガー」が肩を組みあい左右に揺れはじめだすと、ウェーブの様にその肩組みが客席中に広がっていき、最後のサビリピートでは板の上のメンバーと客席がシンクロしての大合唱が生まれていた。歌い終わって目に涙を浮かべているメンバーもいた。そして普段感情を揺さぶられることが少ない私も胸にこみ上げてくるものを感じた。ヲタさん達を含めた「チームK公演の熱さ」に私の心が大きく揺さぶられたのが2月17日の公演だった。翌18日には一部出演ながら優子も復帰し、長きに渡ったチームKの連続公演が終わる。K3初日からの3か月の間にチームK内に起こった様々な出来事は、私がAKB48を応援するにあたっての方向性を決定づけたのであった。(#8につづく)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?