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華北平原のコロニー

 地球儀を見ていて、中国が分かったような気がしまして。気がしているだけですが。中国って、華北平原なんだなと、しっくりきて。日本の国土と同じくらいの面積がある、巨大な平原がある。黄河下流域です。逆に言えば、そこしか平原が無い。華北平原の東は海で、北は山脈を挟んでモンゴル平原になる──ここは寒いので農業向きではなく、遊牧民の地です。食料生産効率が悪いから、人口密度が低い。西と南は山です。この華北平原をどの民族が治めるかというのが中国なんだなと思いまして。

 ユーラシア大陸で、温暖で、食糧が確保できて、平原であるという土地というのは、東から、華北平原、インド、そして中東から地中海。この3つの地域でそれぞれに文明(巨大社会)が生まれて、繋がりあっていたと考えると、腑に落ちまして。

 西遊記で有名な三蔵法師は、唐の時代に経典を求めて中国からインドにいったわけですが、華北平原からインドに旅をするとなると、南回り(むしろ海)で行くか、西回りでいくか。西遊記ですから西にいったわけですが。チベット・ヒマラヤは通れないので、ぐるっと回ってインドの西から入るしかないわけです。

 何が言いたいかというと、文明が発生する条件が整っている土地の、絶妙な離れ具合だなということ。直接、ガチの戦闘になるほど近くはないけれども、情報伝達はできる距離ではある。そして、インドや地中海と比べて、中国というのは、明らかな華北という平原地帯、中心地がある。その周囲で独立して文化を育む集団もたくさんいる(日本もその一つ)。いわば、コミュニティスペースというか、みんなが集まってくるような中心地なんでしょうね、華北平原は。

 中国からの距離というより、華北平原からの距離として考えると、なぜ日本は発展して、フィリピンやインドネシアがそうでもなかったのか、ということも分かる。単に、華北平原から遠いからです。台湾でも遠い。地球儀で見ると、黄海を挟んで北九州なんて、華北から目と鼻の先だけど、それでも遣唐使とか沈みまくるわけですから。あと、南に行くと気候も違うし。ということで、華北平原から東西移動で適度に行ける日本列島、しかも大きな軍隊はこれないほどの距離、そりゃ平和に文化が発展するなぁと思うわけです。

 で。最近、微生物が面白いなと思っていて。駄洒落ぽくなりましたが。糠漬けをやっているってこともあるんですが、微生物は、適度な温度とか湿度の条件で繁殖するわけで、人間も視点を広げたら同じようなものだなと感じていて。アフリカで発生した人類が広がる条件として、ある程度の温暖な平野部で農業をして集団が広がっていき、大きなコロニーを作ると考えると、そんな土地は限られている。

 アメリカ大陸にもグレートプレーンズがあるけれども、それほどに広いと、巨大な帝国も出現しにくかったのではなかろうかと思う。広すぎる。五体湖からロッキー山脈まであるわけですから。華北平原の何十倍もある。中央集権的に管理できる限界を超えているんだと思うんです。情報伝達とか、武力行使をするためには、移動できないといけない。それが、狼煙だとか、人力に頼っているとなると、アメリカは広すぎる。すると、この平原で人類が繁殖するためには、共生文化的になっていくのかもしれないなぁと思う。

 平原で広がれるコロニーの限界サイズよりも、アメリカの平原は大きい、ということです。農業がやれるにしろ、移動と情報伝達において、技術革新が起こらない限り、統治できない。もちろん、現代はそれが技術的に解決していますから、アメリカという国が成り立つわけですが、数百年前の人力縛りにおいては、中央集権がむしろ生まれず、孤立して共生していく(関わらないようにする)のではないかと思う。これもまた、微生物がそれぞれのコロニーを作ってお互いに干渉しない、というようなイメージです。

 日本列島でも、スケールは小さくなりますが、最も巨大な温暖な平原といえば関東平野になるわけです。当然、そこに文明が集まる。自然とそうなっていくのではないか、という地政学的な面白さです。結局、文明の土台は、いかに食料を確保するかという問題で、食料確保をスケールするためには、平原での農業が最強なわけです。そして広すぎない、管理しようと思えば管理できる、ピラミッド式で管理できる、その最大が(インターネットとか無ければ)華北平原ぐらいのサイズなんじゃなかろうか、と思うわけです。

 華北平原ぐらいのサイズだと、文明が混じり合って「中国文化」が生まれる。国とか文明をコロニーと捉えると、温度湿度、平らか山か、それらの地理的条件により最適なコロニー形態が決まるということです。そして、地球の大地は多様なので、多様な文化が生まれたんじゃなかろうかと。そんなイメージをしていまして。

 日本は、山が連なる小さな列島ですから、異民族が侵入してくるわけでもないし、平和なわけです。すると、それなりの文化が築かれる。あくまで、土地条件に合わせた最適のコロニーサイズと、そのコロニーの統治形態になるということ。そして、インターネットという、コロニーをつなぐ神経網が近年、発達したと考えると、さぁ、どのような社会形態になるのかなという面白さですね。はい。またあした。

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