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アイドルは偶像崇拝であり虚無、という考えが、ひっくりかえる


こやつ、勝ちにきている────
ZEROBASEONE 리키として現在活動している彼を、オーディション番組で始めて見た時、私は彼の自己プロデュース能力に目を見張り、一瞬にして心を奪われてしまった。

韓国で活動する、ZEROBASEONEという9人組ボーイズグループ。彼らは、BOYS PLANETというオーディション番組で選ばれ、デビューした。

そもそも、私は、中学生の頃からアイドルのファンだ。始めて見たオーディション番組PRODUCE 48でIZ*ONEのファンになり、IZ*ONEは私の青春になった。
SEVENTEENやX1(Mネットの投票操作で1曲しかリリースできなかったが)、straykids などのボーイズグループにも関心を持ち、健気に応援していた。

しかし、私自身成熟していき、自分自身を省みた時、「私はなぜアイドルに心を奪われるのか」、考えて見たことがある。
そして、

自分の元気がない時、消えたい時、アイドルを見ると無条件に元気が出る、そういった「精神的スイッチ」としてアイドルを見ているのだ、と感じた。

私は、自分の機嫌を取るためのスイッチを、アイドルという他者に委ねているのだと、そして、アイドルという人間に自分の理想の姿を押し付け、勝手に期待しているのだと、知った。偶像崇拝である。

しかし、アイドルはアニメのキャラではなく、実在し、怒り、悩み、悲しみ、性欲を持ち、歌って踊っている普通の人間である。
だからこそ、なにか不祥事を起こしたり、恋愛をしたり、私がアイドルに押し付けている偶像崇拝に反した行為をすることがある。

私の偶像崇拝をそのまま裏切らない、完璧な存在でいて欲しい。そして、無条件に元気になれるスイッチでいて欲しい。
しかし、アイドルは、そうはいかないのだ。
だから、私は、アイドルを応援するのを辞めた。

そんな確固たる信念を持っていた私を変えた男、それが、沈泉锐。芸名 리키(ricky)だ。

番組出演時のりき

彼の自己プロデュース能力に目を奪われたと冒頭に述べた。
彼は、
①金髪で目立つように
②ただ練習する時でも、朝早い撮影でも、いつもしっかり髪の毛をセット。メイクもしていた。
③中国名だと韓国人を始めとした他国の人に覚えてもらいにくい。そのため、Rickyという英語名で出演
④「金持ちキャラ」という番組内で被らないキャラクター付け
⑤Young&Rich Tall&Handsome という代名詞的なキャッチフレーズを作り出し、その語感の良さ故に万バズ
⑥そのキャラを不動のものにするため、番組内で行われたカクテル作りは、事前に予習して練習した上で参加(しているように感じられる言動)
⑦曲選びにて、誰か1人を追い出さなければならない局面。そこで、自分と同じくセンターポジションを選びそうな他の練習生を追い出す計算高さ

など、完全に、「勝ちにきている」のだ。
皆、デビューしたくて番組に出演していると思う。しかし、その中でリッキーがデビューを掴めたのは、他者とは一線を画した、その自己プロデュース能力だと言える。
デビュー後もそのプロデュース能力は健在だ。

彼は、自知ということに対して決して怠ったことがない人間なのだと思う。彼自身、自分がどう見られるかを考えることが好き(もしくは不可抗力で考えてしまうのかもしれない)なのだと思うし、そうやって自らのイメージを作り上げていくこと、作り上げた上の自分を応援してもらうことに、喜びを感じているのだと、推察する。(1ファンのただの邪推であるが)

常に自分の心の中に天秤があって、何をして、何をしないのか、自分の意思で決める人間。
自分を俯瞰し、自分が他者からどう見られるかを考え、勝利のために自らを作り上げていくことができる人間。

なんて理知的で、客観的で、美しいんだろう。自立心という言葉だけでは纏められない、そんな意志の強さ。

そんな彼の中から、人に対する優しさを垣間見ることが出来た時、自立心と共感力のどちらもを持ち合わせている人間だと知った時、私は、自分の信念がひっくり返る感触を知った。

偶像崇拝であることは知っている。私はたった今、リッキーに偶像崇拝をしている。
ここまで書いてきた文章全て、「私が思うリッキー」に過ぎず、彼にこうあってほしいだけなのだと思う。
それでも私は、彼が幸せであってほしいし、彼のおかげで今日も少しだけ頑張れるし、異国の地で言語の壁を感じ文化の壁も感じながら生きている彼を見るだけで、心に溜まった仄暗さが少しだけ消える。

永遠が無いことは知っているが、私自身の価値観の幅を広げてくれた彼が、ただ、アイドルとして末長く生きていてくれたらいいと思う。


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