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Navigating the art world 内容紹介 1回目


どんな本?

 UKで活動する若手キュレーター&ギャラリストのユニット「Delphian」が書いた、現代アートの世界にこれから飛び込もうとする人たち向けのハンドブックです。

 このユニットの結成が2016年。

 この本の最大の特徴として、SNSの存在を当然の前提として、SNSやウェブサイト、Webマーケティングを現代アーティストに不可欠なものと位置づけている点が挙げられます。

 これは個人的にはかなり重要だと思います。

 アートの歴史は何百年もあるので、時代時代で成功しやすい、というよりは完全に活動継続不能な状態(いわゆる「完全に詰んだ」)ところに追い込まれる可能性を下げる方法は違います。もちろん地域的にも違いはあります。

 それを前提とした上で、現代では地球上のどこに住んでいてもほぼ共通のインフラとしてウェブがある。これはアート史上初めてのことだと思います。

 20世紀以前であればアートが盛んな街に住み着いてパーティーに足繁く通って人脈を作るみたいなある種の必勝法もあったでしょう。そうしたリアルでの人脈づくりは今も有効です。

(余談ですが、この手が使えるのは若くて体力があって育児や家事にリソースを割かなくて良い人だけで、その時点である種のセレクションがかかっています。同じ問題はスタートアップの世界でも常々指摘されています。飲みニュケーションにハンデが無い若い男で有名ブランド学閥、日本なら慶応SFCや東大卒が圧倒的有利だし、育児や家事や性犯罪リスクが無視できない女性は圧倒的不利、ということです)

 ですが、今はWebマーケティングによってある程度その種の不利を埋め合わせることも出来る。そういうことだと考えています。私は。

 さて、それでは内容の紹介をしていきましょう。

1:前書き

 デルフィアンはSNS時代の自分たちの戦略として、良い作品をどんどん自分たちのインスタグラムアカウントで紹介していくという方法論を採用しています。そのアーティストや作品が売れるようになることで直接の利益はデルフィアンに入りませんが、「目利き」という評価は手に入ります。それがあれば、自分たちが稼ぐことも容易になる・・・という理屈です。

 もう一つ、成功への道は一つではないので、この本に書かれていること全てを実行しなくても、出来ることからやっていってくれとも。

2:序文「on being a business」


 ここでは、アートにおけるビジネスの側面を無視するのは死亡フラグだと指摘しています。学生のうちにギャラリーが契約してくれるなんてこたあ無いと思え、つまりアーティストは自分のマネジメントを自分でやるしかないんだと。

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