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失敗とは

最近、夫のすすめで「Pad Man」という映画を見た。インドで生理用ナプキンの普及に尽力した男性の物語だ。乱暴に要約すると、当時(2000年代)のインドでは”パッド”はとても高価で全人口の一割強の人しか買えずにいた。なので月経期間の5日間、女性たちは雑巾のように使い古された布切れを身に着けて過ごし、離れで寝泊まりしなければならなかった。主人公は、その布切れが不衛生だと感じ、愛する妻のためにパッドをプレゼントするのだが、高級品なので受け取ってもらえず、自身で安価なパッド作りを始める、といったような話だ。

この映画の終盤で、主人公が次のようなことを話していた。
女性は月に5日間外で何もできずにいる。5日間×12ヶ月で60日、1年で見ると2ヶ月も男性より時間が少ない。男はずるい、と。

さて、今回私が話したいのは、我が家のサイコパスな夫についてだ。彼は、自分がものすごく立派な、誰からも褒められるイクメンだと自負している。たしかに、彼は家事育児仕事どれも100%こなしている。育児については、保育園や実家を頼りつつ器用にこなし、仕事もかなり調子が良く年収も大幅にアップした。子どもも夫が大好きな様子でそれ自体はとても良いことに思う。これを書くと、そういう私は何をしているんだと思われるかもしれないが、正直何もしていない。だが、それは何も私が望んでそうなったのではない。夫が全て一人でやることを選択したのだ。

何事もそつなくこなせる夫は、しばしば母親、特に専業主婦やパートの存在を軽視する。自分が何もかも両立できているのに、なぜうまくこなせない人がいるのか理解できないからだ。想像力の欠如も甚だしい。母親にあって父親にないものが彼には分からないようだ。そもそも男性は子どもを産まないというのに。産んでからの体調面精神面の立て直しがいかに大変か、何度も説明はしたが、恐らく彼は一生理解できないだろう。

少し話は変わるが、最近の粉ミルクは非常に優秀らしい。それでもできる限り母乳で育てたほうがいいという話もよく聞く。いくら粉ミルクが栄養価に優れていても、母乳のほうがいろいろ利点もあり、母親としてもできれば飲ませてあげたい。妊娠出産同様、これも母親にしかできないため、授乳がうまくできないことに悩むのも母親だ。うまくお乳が吸えない、あげられないという事象を表面的に理解することはできても、その苦悩を真に理解できるのは実際に悩む母親だけだろう。私自身がそうだった。また、出産を機にホルモンバランスに急激な変化があるため、何気ないことで落ち込みやすくなるというのもある。

書き始めるとキリがないほど、妊娠出産の女性の負担は大きい。しかしながら、彼は自身のわがままで私から母親としての権利を根こそぎ奪い、周囲には苦労しつつも完璧に育児をこなすイクメンで通し、私に対してのリスペクトは全くなしだ。かく言う私も、夫への尊敬の念はほとんどゼロに近い。もともとは尊敬する人に夫を挙げるほどだったが、彼にほとほと愛想が尽きてしまったのだ。それでも、一発地獄行きのような悪行を犯し、私からあらゆる権利を剥奪したことを脇に置いて考えれば、彼はたしかにいい父親だ。少なからず、子どもが健康に育っていることに感謝はしている。
さて、そんな彼は現在私のことをどう思っているのか。先日夫婦のあり方について話していた際に、私のことを尊敬しているかどうかを訊ねてみた。夫は「尊敬?うーん・・・俺すげえと思う」と答えた。尊敬してると嘘をつかれるよりかはマシと思ったが、見事なまでに想像通りの答えでドン引きしてしまった。

「人(性格)はそう簡単に変わらない」とはよく言う。「人は変わらない」と断言する言葉もある。だが、私はそうは思わない。人は失敗したときに、それを本気で反省し、死ぬ気で自分を変えたいと思えたとき、大きく成長できると考えるからだ。
少し前に夫は、これまでの人生で挫折したことは一度もないと豪語していた。それは失敗を失敗として捉えられてないだけなのではないだろうか、また、失敗がない人生というのは果たして幸せなのだろうか、と考えてしまう。もちろん、つらい経験は少ないに越したことはない。自分がしたつらい経験を他人に強いるのも間違っていると思う。ただ、こと想像力に乏しい人間にとって失敗は必要なことと思う。夫や、そして私のように。

映画の話に戻る。女性は男性より2ヶ月も時間が少ない=男はずるい、という発想には思わず泣いてしまった。我が家のサイコパスなら女性は2ヶ月も怠けられていいじゃないかと言いかねないからだ。女性に対する尊敬の念、想像力を見習ってほしい。無理か。


失敗:もしそう思ってるなら、本気で反省して変わってみろよ。と言いたい。


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