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笹の葉さらさら

笹の葉揺らして降園。

毎年恒例、七夕の週には園で笹の枝が配布される。

今年は2人の子を通わせているから2本。
自転車の前カゴに挿して帰る。

細い葉は揺れると、確かに「さらさら」
「ひらひら」よりもやっぱりあの歌のとおり「さらさら」

1人につき3枚の短冊を書いた、すなわち6枚。
案外6つの願い事を書くのは難しい。

とにかく、元気に大きくなってほしい。
出来るだけ楽しく過ごしていてほしい。
保護者としての最大の望み。

娘はすぐに「プリンセスのドレス着たい!」と願い事を熱く語った。


園での七夕イベントも終わり、笹の葉は役目を終えた。

娘と息子の目につかないように、私はひっそり笹をゴミ箱に捨てた。

が、娘はすぐに見つけてしまった。

「おかあさん、なんで笹すてたの?」

声色には、責めるニュアンスとかはなく、とてもフラットだった。

「七夕おわったからね」と答えると、やっぱり娘はいつものあれを尋ねてきた。

「ささ、ごみばこでなんていってる?」

「…何も言ってないよ、もう意識もないんだよ」
私は少し焦ってた。「意識」なんて4歳に通じるのか…?

「笹はね、七夕の日に天の川にいったの、天の川で遊んでる。」

「天の川でなんていってる?」

「天の川は楽しいなあって」

どうやら娘は納得してくれたらしい。

正直、願いが込められた何かを捨てるって、精神的に負荷かかる。
だから、私は自分のために物語を捏造した。

あの笹は今や完全に無機物。願いも想いももう何もない。七夕の日に空にとんでった。

今は天の川で、笹の葉さらさら泳いでる。



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