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教育カウンセラー養成講座 in 小田原②

1日目

 小田原での教育カウンセラー養成講座は、8月6日の土曜日が初日でした。5日の夕刻には小田原に到着し、会場の「おだわら市民交流センターUMECO」も確認して、準備は万端です。
 6日の朝、9時過ぎに会場へ行き、受付を済ませました。会場となる研修室には、すでに数名の方がいらっしゃいました。9時20分になり、開講式が始まりました。そこで今回のスタッフの方の自己紹介がありました。中でも驚いたのは「73歳で教壇に立ってます」という自己紹介です。27年間教職を務め、そこそこの経験を積んだと思っていましたが、自分もまだまだだなあと改めて思い知らされました。初日の参加者は30名弱で、席には多少の余裕がある感じでした。「参加者がもう少し多いと思っていた」というのが正直な感想です。また、年齢層も若手の先生が多いだろうと勝手な想像をしていたのですが、実際には若手の先生が少なく、パッと見、中堅どころ以上の先生が多かったのも意外でした。

生き方について学ぶ

 1日目の講師は、品田笑子先生です。午前が「心の教育と学級経営」、午後が「個別面接の技法」という内容です。
 品田先生は、都留文科大学で教鞭を執っていらっしゃり、今の学生の様子なども織り交ぜ、グループワークやロールプレイを取り入れたアクティブな講座をしてくださいました。品田先生ご自身も、自己紹介で、大病を患ってそこから強い気持ちを持って復帰しました、とおっしゃってましたが、その言葉に違わない、とても前向きでパワフルな方です。
 午前の内容では、子どもたちがコロナ禍で失ったものは何かを軸に、子どもの心のありようと学級経営について学びました。実は、3日間の講座を受ける中で、たくさんの生徒たちの顔が頭に浮かびました。この時は、コロナ1年目に大学生になった生徒が夏休みに学校へやって来て、「講義は始まりましたが、すべてオンラインで、まだ一度も大学には行ってません。毎日一方的に画面を見ているだけです。当然、大学の友人はいません。なんだかおかしくなりそうです。」と言っていたのを思い出しました。品田先生曰く、「子どもがコロナ禍で失ったものは、大人が考えている以上に大きい。だからこそ、何ができるかを考えていかなければいけない。」その通りだと思います。また、「「もう一度立ち上がれる」考え方をつくる」とも言われました。これは子どもに限らず、現在の大人にも必要だと思います。そして、最も心に残った言葉が「運を貯めた」です。品田先生ご自身が復帰するためにリハビリに臨んでいた際に考えていたことだそうです。「今は運を貯めるとき。そう思って乗り越えました。」逆境に置かれ、苦しくてたまらない時は、運を貯めると思って頑張る。貯めた運は自分のため、人のために使う。貯めた運や頂いた恩を回していく。この時代のすべての人にあてはまることだと思います。ただもがき苦しむのでなく、運を貯めると思ってできることに取り組む。現在を生きる子どもたちに伝えたいことです。
 同時に、この話を聞いて、これからの自分の進む道が、何となく見えてきた気がしました。この「運を貯める」というフレーズ、私もどこかで使わせていただきます。

カウンセリングについて

 午後は個別面接の技法としてカウンセリングについて学びました。カウンセリングについては、若いころに一度勉強した、並行して進めているメンタルトレーナー講座でも学んでいる、といったこともあり、これまで学んだことの復習や確認、とりわけ、メンタルトレーナーで学んだことをより深めることができました。
 1.カウンセリングの立場は「育てる」にあること
 2.問題の解決には自己決定を促すことが必要であること
 3.つかむのは感情とビリーフ(思考・考え方・受け取り方)であること
こういった観点から、カウンセリングマインドとは何か、カウンセリングに必要な技法、カウンセリングの進め方、といったことを、ロールプレイを通して、カウンセラーやクライエントのそれぞれの立場や気持ちを実感しながら学びました。
 中でも面白かったのは、明確化と傾聴です。明確化は「クライエントがまだはっきりと意識していないところ先取りしてカウンセラーが言語がすること」です。明確化は、私が生徒の話を聞いていて一番力点を置いてきたことです。この話はうわべなのか本音なのか。まだ自分でも気づいていない気持ちがあるのではないか。在職中は、そう考えていることを生徒には悟られないように、話を聞いてきました。子どもでは言葉にできないモヤモヤした思いを、代わりに言葉にしたときの、子どもたちのあの気づきの表情は忘れられません。
 傾聴は、文字どおり話を聴くことです。この傾聴では、「傾聴しない体験・されない体験」が新鮮でした。私は管理職を務めていた時、できる限り耳だけは職員室での話に傾けるようにしていました。そうしていると、各教科、教室内、学校全体の問題点が浮き彫りになってきます。それが今後の学校運営の参考になります。先生方のたわいのない会話の中に、問題解決のヒントが見つかることもあります。ですから、聴きたくない話でも聴いてしまい、人の話を聴かないようにするというのは苦手なのです。聴かない素振りをしているつもりで、「聴いてます」アピールをしてしまったかも知れません。傾聴されない体験では、「聴かぬなら聴かせてみせよう」という姿勢で臨んでしまいました。退職してから人と話す機会がめっきり減っていたため、ここぞとばかり、きっとつまらない話をしたと思います。これは傾聴しない・されない体験での反省です。
 これらのロールプレイの本来の目的は、カウンセラーとクライエントの立場を実感し、そこから学びを得ることにあります。しかし、私にとっては「自分は人の話を聴くこと、人と話をすることが好きなのだ」ということを再認識する機会になりました。
 また、感情、ビリーフをつかむというのは、教師が子どもと話をする上で、とても大切なスキルです。そのスキルを、特に若手の先生方が、身につけると、その後の教員としての幅がより一層広がると思います。そういった意味でも、若手の先生方にもっと参加してもらえるようになればと強く思いました。

短所が一番の伸びしろ

 この日のグループワークで印象に残ったものの一つに、「長所を生かすリフレーミング」があります。4人一組のグループになり、「自分の見方を変えたい短所」をメンバーにリフレーミングしてもらうというものです。
 私は短所として「自分勝手・優柔不断・浪費」を挙げました。それらをリフレーミングしてもらい、気に入ったリフレーミングを選ぶのですが、私が選んだリフレーミングは「周りに恵まれている」と「キャパが大きい」
でした。「キャパが大きい」は、そう言ってもらえて単純に嬉しかったのですが、「周りに恵まれている」は、そう言われて本当に実感しました。特にこの年齢で仕事を辞めることを受け入れてくれた家族(本当は不満と不安しかないと思います)には、感謝してもしきれません。そういったことに気づかせてもらえたというだけでも、価値のあるグループワークでした。
 そして、そのグループワークの振り返りの時間に、グループでお話をさせてもらったのが、「短所が一番の伸びしろ」ということです。クサイものに蓋をするのではなく、短所をどう料理していくかを一緒に考えることが、その人を伸ばすことになりますよ、とさも自分の言葉であるかのように話をしましたが、実はこれ、メンタルトレーナー講座で教えていただいたことです。こういったことを伝える機会があるだけでも、参加してよかったとつくづく思いました。

 こうして1日目は、本当にあっという間に過ぎていきました。グループワークのメンバーの先生方だけでなく、会場のすべての先生方と話をしてみたいと思いました。そこで聞いた話の中で生かせるものがあれば生かしていく。心に残った言葉を人に伝えていく。そんなことができるのも、こういった講座を受ける醍醐味だと思います。初日は期待値以上のものでした。2日目は何が飛び出すか、そんな思いでいっぱいでした。

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