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町議会議員になって、たった6ヶ月で懲罰になった話①

神奈川県の西の端に位置する、湯河原町は人口2万5千人ほどの温泉町。そこで生まれ育ち、途中大学進学を機に東京に行ったものの、田舎の豊かな自然環境で子育てがしたいと家族を連れてUターン。

あれよあれよと言う間に、周りの応援もあり町議会議員に押し上げていただいた。当選ラインは500票前後の選挙で2位との差300票をつけて有り難くも1374票のダントツトップ当選を果たし、選挙のやり方も、政策の訴えも、田舎町湯河原では全く新しい方法での史上最年少女性議員の誕生だったー。と町の皆様に言っていただけた事も申し添えておく。

読者のご想像も容易いだろうが、この様な華々しいデビューをした新人女性議員がすんなりと古い体質の議会に受け入れられるはずもなく、おまけに流行りの(?)わきまえない女であり、忖度なしにハッキリとモノを言う生意気な女だとしたら…。もうこれ以上は言うまでもないだろう。

議員となって6ヶ月が経った時、議会で懲罰を受けてしまった。この経緯を説明する。

懲罰の舞台背景

トップ当選を果たした子生意気な最年少女性議員。田舎町議会ではこれだけでも十分な排除要素だが、それに加えて東京での政治活動が長く東京の政治家とのつながりもあり、ローカルルールで長年やって来た議会に真っ向からNOを突きつけた事でさらに拍車をかけて生意気だと思われていたと容易い。さらに湯河原町議会はほとんどが町長派と言われる一強政治。狭い土地では長期政権になればなるほど誰も逆らえない権力を持つ様になる。そして、その町長から選挙に出る前から目をつけられていたのは、私が現町長の前の町長(対抗勢力)の親戚筋の出だったというところであろう。噂などすぐに本人の耳に入ってくる様な田舎町。町長が私の様な小娘に対して随分と気にしていたというのだ。

ダメなものはダメ①〜緊急事態宣言下におけるお座敷券の補正予算〜

当選してから最初の議会で提出された「新型コロナ緊急経済対策の為のお座敷券」に反対した。2020年の4月7日、初めての緊急事態宣言が出された事で、日本が前代未聞のウイルスに震撼した3日後、湯河原町議会では新型コロナウィルスの緊急経済対策として「舞・お座敷券」という、宴席に芸者さんを呼んで遊べるプレミアム補助券を、税金を使って発行する、というとんでもない補正予算を上げてきたのである。

私の感覚からすれば、目ん玉が飛び出るくらいの衝撃を受けた補正予算案である。世界的パンデミック、3密を避け、飲食を伴う席を避けよ、とテレビ報道でも連日繰り返されているのに、3密のお座敷で遊べる補助券とは…。議員になって初めての補正予算案で、大反対をした。

すると、議会はこれを賛成多数で可決。そもそもこの補正予算が上がってきた事に対しても驚いたが、私の反対も虚しく、賛成多数で可決した議会にも頭がクラクラするくらい驚いた。そう、湯河原町議会は、町長派の議員が多数を占める、いわゆる行政追認機関と成り果てた議会だったのである。

新人ながらにこのままではいけないと、すぐにレポートを作成した。反対討論虚しく、この緊急事態宣言下に、湯河原町はいつできるかもわからない、芸妓さんと観光客を3密で危険に晒す、お座敷券を発行する予算を可決したー。と。

町中にレポートを配布し、この事は湯河原町に大変な論議を生んだ。しかしこの事に衝撃を受けたのは町民だけではない、まさかレポートを出されて議会内部のことを赤裸々に露呈されてしまうとは思ってもみなかったのが町当局と議員たちである。そこから私への圧力と、けん制、情報を制限するなどのいじめが始まったのである。

ダメなものはダメ②〜税金を使用してマスク配布「今更マスク」〜

湯河原町の驚きの施策はまだ続く。議員になって2ヶ月後の6月定例会ではまたとんでもない補正予算が上がってきた。それは「アベノマスク」が天下の愚策と叫ばれていた2020年6月、マスクが市場に出回り叩き売りされていた頃に、湯河原町はわざわざ税金を使って使い捨てマスク5枚を全町民に配布するという補正予算を上げてきたのである。ここまでくると、感覚が麻痺しているとしか言いようがないが、当然私はこれはおかしい、とまたまた反対させていただいた。期待を裏切らない湯河原町議会である。勿論この補正予算も賛成多数で可決である。

このマスク配布事業に関しては、私が(パターン通りに)町民へ配布したレポートだけでなく、マスコミが取り上げた。「今更マスク」と題されて、新聞社に取り上げられ、そこからテレビ報道にまで発展するのである。

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マスク配布事業を決めた町長と、それに反対した町議会議員の私、という構図でのテレビ報道となった一件は、町と議会と町民にまたまた論議を沸かせたのである。

ダメなものはダメ③〜滞納者リストという、あってはならないものの存在〜

以上の件(これだけではなくもっともっとエピソードが存在するが、割愛する)により私への締め付けがどんどんと厳しくなっていった9月議会。ついに、私は懲罰になるのだが、その発端がまた度肝を抜く湯河原町の慣例を目の当たりにしたのが事がきっかけである。

議員になると自動的に委員会というものに所属する。各委員会ではそれぞれ町の事業や課題に対して報告や議論がされる。湯河原町では数ある委員会の中に「町税等徴収対策強化特別委員会」という委員会が存在し、町税などの徴収対策、特に滞納に対して話し合われる。私はその委員会に所属しているのだが、初めて中身を話し合われた委員会において、なんと議員全員に湯河原町の全滞納者の個人情報が載ったリスト、およそ2000件分が配布されたのである。

行政が持ち得る個人情報は大切に扱わなければならないのは勿論のことだが、特に税収に関わる情報というのは最も守秘義務を要するものである(地方税法23条)その様な個人情報が、議員全員に配布されている事に対して天地がひっくり返る様な衝撃を受けた。どのくらいの衝撃だったかというと、そのリストが配布されてページをめくった途端に気分が悪くなり、それ以上はリストを見れなくなってしまったほどである。そして、この会議の最後にさらに衝撃的な事が起こる。なんとこのリストは回収されずに議員が個々人で保管しておくというのである。

「秘密会」という怪しげな会議の存在

これだけ個人情報保護が叫ばれている昨今に、この様なずさんな個人情報の取り扱いが許されている湯河原町に気絶しそうになりながら、少し説明を付け足そうと思う。この「滞納者リスト」は「秘密会」という会議の中で配布された。議会の中では個人情報を取り扱う可能性もあり、その様なものを議論する際には「秘密会」を開催する事ができる。「秘密会」を開催すれば、その中の議事は公開されないのである。

しかし、だからと言って町民の個人情報、しかも滞納情報などという最も保護されなければならないプライバシーにあたる情報を安易に(しかも全員分)議員に知らせて良いはずはない。ましてやそのリストが回収されないなど、あってはならない事である。私はこの件に対し、法的な根拠などを調べてどうにかこの滞納者リストを議員に配布する事をやめてもらおうと試みた。

→②に続く

湯河原町を相手取り、裁判を起こした費用について、クラウドファンディング挑戦中!

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