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線形代数と空間概念
次はよく知られた事実である。
複素数$${\alpha}$$が整数を係数とする$${n}$$次方程式の解であり、複素数$${\beta}$$が整数を係数とする$${m}$$次方程式の解であるとき、$${\alpha,\beta}$$のいかなる整数上の有理式(つまり、有限個の整数と$${\alpha,\beta}$$を用いて有限回の四則演算(たし算・ひき算・かけ算・割り算)で表せる数)も、整数を係数とする高々$${mn}$$次方程式の解である。
たとえば、$${\sqrt{2}}$$は$${2}$$次方程式$${x^2-2=0}$$の解であり、$${\sqrt{3}}$$は$${3}$$次方程式$${x^2-3=0}$$の解である。このことから、たとえば$${\sqrt{2}+\sqrt{3}}$$や$${\dfrac{\sqrt{2}-2\sqrt{3}}{1+3\sqrt{2}}}$$などは整数係数の高々$${4}$$次方程式の解になっている、というのだ。
このことは抽象的な代数学を勉強したことがある人なら、すぐに証明できるだろう。実際、以下に書く証明も、初等的だがある程度は抽象的な線形代数をちゃんと勉強した人なら十分に理解できる程度のものだ。しかし、抽象論の考え方を用いないで、本当に計算によって示そうとすると、なかなか大変だと気づくはずだ。
たとえば、$${\sqrt{2}+\sqrt{3}}$$を根にもつ整数上の多項式を求めることですら、ちょっとした計算をしなければならない。
$${x=\sqrt{2}+\sqrt{3}}$$とする。$${\sqrt{3}=x-\sqrt{2}}$$なので$${(x-\sqrt{2})^2=3}$$, すなわち$${x^2-2\sqrt{2}x-1=0}$$となる。これは$${2\sqrt{2}x=x^2-1}$$を意味するので、両辺を$${2}$$乗して$${8x^2=x^4-2x^2+1}$$, すなわち$${x^4-10x^2+1=0}$$を得る。
$${\sqrt{2}+\sqrt{3}}$$のような比較的素朴な例でもこれだけの計算になるのだから、一般の場合にはどんな計算をしたらよいのか、ちょっとわからないだろう。
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加藤文元の「数学する精神」
このマガジンのタイトルにある「数学する精神」は2007年に私が書いた中公新書のタイトルです。その由来は、マガジン内の記事「このマガジンの名…
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