「アタック25」の終了について

 9月26日に「パネルクイズアタック25」が放送を終了し、46年続いた番組の歴史が幕を閉じます。これによって、定期的に地上派で放送されている視聴者参加型のクイズ番組がゼロとなります。かつて一世を風靡した「アップダウンクイズ」が1963年から1985年の放送のため、少なくとも、この半世紀には、なかった状況に陥ります。

 「アタック25」の打ち切りは、一般の方へのクイズの普及という点において、ボディーブローのようにマイナス作用が効いてくると考えています。気軽に「早押しクイズ」を見る機会がほぼ皆無となるからです。
 現在放送中の「東大王」や「Qさま」で行われている早押しでは、基本的に映像が表示され、出演者がボタンを押します。技術進化で出題バリエーションが多様化したことに加え、テレビの大型化によってテロップをたくさん表示できるようになり、視覚的に訴えた方が視聴者にも伝わりやすいことが主な理由です。読み上げの早押しクイズは動きがないため、現代のテレビ放送には不向きなのかもしれません。
 ただ、出題者が問題を読み上げる早押しクイズにも奥深い魅力があります。相手より一瞬でも速く押す技術が問われるスポーツ的要素もあれば、レクリエーションや学びとして楽しむこともできます。近年、全国の中学、高校にクイズ研究会が数多く創設されており、メーンの活動は読み上げの早押しクイズとなっています。
 これまで、テレビで放送されてきたクイズは、クイズの世界のゲートウェー(入口)として機能してきました。今後、新たなクイズ番組が誕生しなければ「読み上げの早押しクイズ」という文化を知らない世代が出てくる可能性があります。少なくとも、知る機会の一つが奪われることは断言できます。
 
 この10年、インターネット環境を利用した、さまざまなクイズのコンテンツが誕生しました。手軽に楽しめる早押しアプリ「みんなで早押しクイズ」や、遠隔地でも早押しを楽しめるウェブツールも充実しています。クイズ番組だと、7年近く放送しているニコニコ動画の「 LOCK OUT!!」が健在で、「QuizKnock」はクイズの世界の認知度向上に多大な貢献をしています。ただ、それらのコンテンツは、クイズに興味を持っている人がアクセスするという性質が強いと考えています(QKはまた別ですが)。

 インターネットやクイズアプリの進化によって、世間に露出されるクイズの環境は大きく変わりました。私はクイズの普及活動に微力ながら携わっており「いつ始まり、いつ終わるか分からないテレビクイズに頼る時代は終わりました。プレーヤーがボトムアップでクイズをやる文化を形成しましょう」という話をよくします。とはいえ、クイズを幅広く認知してもらうためには、いろいろなチャネルがあることは非常に重要です。

 先日のアタック25の高校生大会でも「学校にクイズ研究会を作りたい。アタックに出て校長先生にアピールしたい」という女子高生が出場していました。大きな知名度があるアタック25がなくなると、校長先生が「クイズ」という文化を認知できるコンテンツを一つ失います。他の大会や番組はありますが、アタックは視聴者参加型クイズ番組の代名詞的な存在で、毎週同じ曜日に、同じルールで放送が続いており、一般の方への訴求力は絶大でした。僕が幼稚園の頃、最初にクイズに興味を持ったのは、祖父がクイズ番組好きでアタック25を見ていたからです。アタック25がなければ、クイズの世界を知らなかったと思います。

 最終回は1時間スペシャルで、「史上最強のチャンピオン」を決める趣旨で放送されます。過去に5年ごとに放送された周年大会は、テレビ朝日の系列局ごとに筆記クイズの点数トップのプレーヤーがスタジオに集まりましたが、今回は歴代の年間チャンピオン、周年大会優勝者、パーフェクト達成者に加え、他局の特番で活躍された方、クイズの世界で特徴的な肩書を持つ方が多く出場されている印象です。「現在の最強クイズ王を決める」というよりは、番組側の「46年のフィナーレ」というコンセプトを感じています。そのことに異論はありませんし、テレビのクイズ番組らしい最期なのかな、とも感じています。

 今後、視聴者参加型のクイズ番組はもう放送されないのでしょうか。私には分かりませんが、先日配信された記事を興味深く読みました。

(9月にバラエティが続々終了 最終回を民放各局が注視する理由・NEWSポストセブン)
 芸能人や伊沢君のようなクイズ王が出演するクイズ番組もあっていいと思いますが、視聴者が「いっちょ出たるか」というクイズ番組も需要はあると思います。

(秋終了の「アタック25」ABC社長が地上波以外での復活示唆「ルールも発展型か」・デイリースポーツ)
 上記の記事で朝日放送の社長も言及していますが、近い将来、あっさりと復活しないだろうか、と淡い期待を抱いています。
 視聴者のプライバシー保護が難しい時代ですが、BSでもどのような形でもいいので、視聴者参加型のクイズ番組の火が再び灯ることを願っています。

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