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日系企業を悩ます問題:中国特色の○○。


思いがけず社外から社員の不正情報を入手する羽目に


この前、中国国有企業のお偉いさんから自社の情けない話を聞かされた。

 私が社員研修にある程度関わっていたころは、この会社さんと組んで熱心に社員向けの研修を企画し行っていたものだ。ところがここ2年ぐらいそういう話を全く聞かなくなった。私自身がそちらの方に関わっていなかったので知らなかっただけだと思っていたら、思いがけず先方から自社の社員の収賄の話を聞かされてしまったのである。

 うちの会社で言うと、このあたり非常にざるである。重要な仕事やポストを与えるのだが、与えたあとあまりにも管理しなさ過ぎて、やりたい放題にされているのは傍からみても分かっていたが、他社からそのことを指摘されるというのは何とも情けなくなる。

 日系企業の多くは、上海を拠点とした場合、地元の上海人を採用することが多い。これは人事や財務等の重要部署になればなるほどその傾向は強い。sなんだかんだ言って上海人の人として社員としての質が、他地方の人と比べると明らかに高い傾向がある為だ(平均値の話ね)。また、彼らが一応に台所事情的に困ったところが殆どないというのも大きい。ずばり言ってしまうと、彼らは仕事をしなくても生きていける程お金に困っていないのだ。往々にして両親が財産持ちで元高官・軍人でという感じで、地元上海人なので戸籍はもちろん上海、住むところに困るようなことはない、つまり流動性が非常に低い。ご飯も両親がいつも作ってくれる、お昼の弁当も然り。

 これが外地の人間となると、住むところは自分で探さないといけない、自炊して、生活の為に節約をしないといけない、生活は困窮を極める。もし、外地の人間が上海に来て働き出して、手取り5,000元とかの仕事に就くと、飢え死にするような話になってしまう。(※なので、外地の人達はシェアハウス的な感じで知り合いや友人と一緒に部屋を借りるという策をとることによって生き延びている)

見て見ぬふりをするべきか、それとも徹底的に取り締まるべきか?


 うちも含めて多くの日系企業では、見て見ぬふりをしているのではないだろうか。中国では、仕事は「人」に大きく依存する為、大手顧客に対してプレゼンスを高く保てるローカルスタッフは貴重な存在であり、彼らが辞めてしまうと仕事にならないという局面はいつどこでもある。


 彼らが不正を働き、会社の利益を不当に盗ってしまっていると判明しても動かないというケースすらある。彼らに辞められたら困るし、また新しい人間を採用してもうまくいかないからだ、と。確かに一理はあるだろう。ただ、真面目に努力して働いているローカルスタッフからすれば、この会社というのは不正に対して目もくれないのだというメッセージを受け取ることになり、更なる不正の助長に繋がる可能性がある。もちろん、それに気づき同じ社員の悪事を内示告発する人たちもいる。でも、恐らくそれは少数だろう。また、このような場を目の当たりにしてやる気をなくしたり、会社から去ってしまう人もいるかもしれない。

昔会社の先輩で驚くような発言をされていてびっくりしたことがある。

「ディベートやなんか知らんけど、仕事しっかりやってくれればそれでええねん」

 思わず心の中で「こいつアホちゃうか?」と思ったのだが口にはしなかった(先輩だし)。ただ、こういう考え方をする日本人駐在員がいるから、下がこれは好都合とばかりに暗躍することとなるのである。彼らの罪は重い。

 企業としてはこの手のケースについては絶対手を緩めてはいけない。企業として不正は許さないという気概を見せるのと、今はやりのDXを推進し、サプライヤーの見積から客先への見積、あらゆる作業をRPAでAI化していくことで不正をある程度防げるようになるかもしれない。人の手が増えれば増える程不正のチャンスは増えるのだから。


WINTEKの破産の原因は一体何だったのか?


少し古い話だが、2014年に当時液晶パネルメーカー大手のWINTEKが破産申請を行った。これには業界に激震が走った。WINTEKを取り巻くサプライチェーンに債権回収不能という大打撃を与えたからだ。

台湾WINTECが経営破綻、自己資本の5割に上る焦げ付きの恐れ
https://shikiho.jp/news/0/50759

※下記NOTEにも書いたが、この問題は中国社会全体に存在する。

 私の友人にWINTEKで働いてた人間がおり、破産に至るまでの流れを簡単に教えてもらったことがある。簡単に言うと、汚職まみれの体質がコストアップにつながり、売れば売るほど赤字になり業績が悪化、結果倒産につながったということである。

 どういうことか?購買(原料・設備・仕入)、製造などあらゆる部門で汚職が行われ、それがもろに購買コストに反映され、営業が売ろうとした時点ではすでに市場価格から大幅に高い値段でしか見積を出せなくなってしまい、売れなくなってしまったのだ。とは言え、営業としては売らなければ在庫はだぶつく、営業成績にならない、そのためには赤字であってもどんどん売っていく。

 私の友人にはWINTEKのサプライヤーだった人間もいるのだが、皆口を揃えて「いい客だった」と言うのである。原因はもう言うまでもないだろう。彼らはサプライヤーの出し値に「口銭」を乗っけて自社への見積を出すよう求めるのである。しかも、値段交渉等は一切なく、同業他社と比べて高い値段で買ってくれると。

 こんな会社がこの競争の激しい時代に生き残っていけるわけがなく、一時期いい思いをした彼らのサプライヤーも数百万元という債権回収に追われることになったのである。私の友人は未だに債権回収の会なるものに出席しているらしい(笑)


 

追記:初めての取引先が来社し、商談が終わってエレベーターまで彼らを見送る。その際、サプライヤーの担当者が日本人上司には目もくれずローカルスタッフの担当と肩を組んでコショコショ話をしているところをよく目撃するが、あれは大抵「佣金,拿回扣」(ディベート)の話をしている。わざわざビルの下や外に送らなくてもよいような相手と一緒に下りたり出ていくローカルスタッフもそういうことである。


今日はここまで。じゃあの。

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