Fate/Revenge 14. 聖杯戦争四日目・夕刻から夜──聖杯の崩壊-①
二次創作で書いた第三次聖杯戦争ものです。イラストは大清水さち。
※執筆したのは2011~12年。FGO配信前です。
※参照しているのは『Fate/Zero』『Fate/Staynight(アニメ版)』のみです。
※原作と共通で登場するのはアルトリア、ギルガメッシュ、言峰璃正、間桐臓硯(ゾォルゲン・マキリ)です。
※FGOに登場するエンキドゥとメフィストフェレスも出ますが、FGOとは法具なども含めて全く違うので御注意下さい。
14.聖杯戦争四日目・夕刻から夜──聖杯の崩壊
璃正は夜の戦いに備えて暗殺者召還の儀式の後、わずかな時間、微睡んだ。慣れない夜型生活で眠気は泥のようにまといついてくる。ほとんど寝ていないのに、平然と英雄王についていってしまった明時が信じられない。
寝たような寝ないような短い眠りの後、目覚めるとマッシミリアーナが待っていた。
「司祭さまがお呼びです」
璃正はああと低く呻いて、額を押さえた。
「分かりました。参ります」
まだ明るい西日の差す廊下をすぎて、璃正は再び、あの司祭の祈祷室に入った。
自分の立場を思うと気は進まなかったが、これも信仰のためである。
司祭は白い祝祭服を着て座っていた。
「なにやら聖杯戦争も大きな局面を迎えたようだな」
「はい」
璃正は再び司祭と向かいあって座り、報告した。
「現在、聖杯戦争は中止された状態ですが、サーヴァントは二人になりました」
「セイバーとアサシンとな。最優と言われるサーヴァントと最弱と侮られるサーヴァントが最後に残るとは因果なことよ」
しかも最優であるはずのセイバーたるアルトリアのマスターは、今回の契約者の中でも最弱とも言える存在であり、アサシンたる英雄王のマスターは間違いなく最強の魔術師だ。奇妙な展開になってしまった。
「どちらが勝ちそうなのだ?」
「その前に聖杯に巣くったアンリ・マユを退治ねばなりません」
真面目な顔で璃正が告げると、司祭が嘲るように笑った。
「そら、言ったであろう。魔術師どもの失敗作は世界を滅ぼすと。異教の悪魔の始末くらいは魔術師どもにつけてもらわねば困る」
「それは今宵、明らかになるかと。召還したアサシン、英雄王ギルガメッシュと残存するセイバー、アーサー・ペンドラゴンの働きによって変わりましょう。アサシンは万全にして強壮な英霊。事態の収拾は可能かと思います」
「そうあってほしいものだな」
司祭は水をグラスから一口飲むと、璃正に向き直った。
「聖杯を持つべきは誰か、見極めたか」
「はい」
璃正は頷いた。これは決して私情ではない。自分ではそう思いたいが、本当のところ、情と理の絡みあった毛玉のようなものだろう。咽喉につかえてしょうがない。璃正はそれでも毅然と顔を上げて、はっきり告げた。
「遠坂明時が宜しいかと」
「『始まりの御三家』の一つだぞ。あれは現実社会に強い影響力を持っている。何を願うかによっては我らを越えかねん」
「その心配はありません」
璃正は心の底から断言できた。
明時はそんな人物ではない。親切だとか気さくだとか、そんなものは彼の上っ面、ほんの表面にすぎない。
「遠坂明時こそは魔術師の中の魔術師。彼は現実的な願望を保持していません。ただ根源に至り、世界の絡繰りを知りたいだけの人物です」
「……真か?」
「本人の口から聞きました。数日、観察して間違いないかと思います」
明時の本質は求道者だ。璃正が驚くほど明時の本質は純粋だ。少なくとも璃正はそう考えている。
「遠坂明時は魔術の理論を追求することにしか興味がありません。魔術に対しても独特の哲学があります。魔術そのものに善悪はなく、どのような手段を用いることも否定しません。彼にとって善悪は目的にしか存在しない」
「テロリストだな」
「はい?」
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