復讐
考える。
心からの復讐をするには、何をすれば良いんだろう。何が一番確実的で、一番効果的で、一番致命的なんだろう。
大きな成功を収めること?
いや、その成功に相手が気付きかつ羨んでくれなければ意味がない。
幸せになること?
いや、幸せなんて、各個人の価値観によるもので、最初に相手が同じ高さにいなければ、そこに差違なんか生まれない。
じゃあ、なんだろう、なんだろう。
一つだけ、ある。
たった一つ。もっとも確実的に、もっとも効果的に、そして最も致命的に相手に復讐する方法が。
私が死ねば良いのだ。
相手を心の底から恨んだまま。それをそのまま相手に伝えた後。全てはお前のせいだと伝えた後。そして、死んでもなおお前を許すことはないという、確固たる意志を伝えた後。
謝罪の瞬間を一瞬も与えることなく、そいつの目の前で、命を絶つのだ。
お前のせいで一人の命が断たれたのだ、という「贖罪」を一生背負って生きていかせるために。食事をしているとき、テレビを見ているとき、風呂に入っているとき、布団に入り目をつぶったとき、そんな日常のふとした瞬間に、頭の片隅からジワリと染み込んで、脳の全ての細胞が悲鳴をあげるような絶望と恐怖を味あわせるために。今後、どんなに楽しい、嬉しい、幸せな瞬間が訪れても、「でも、自分のせいで人が一人死んだ」という「事実」が見え隠れし、寸分でも喜ぶことを決して許さないために。いつだってお前を死ぬほどに憎み、お前の不幸を死ぬほどに願い、お前を死ぬほどに呪って、死んでいった人間がいるということで、縛り付けて離さない。周りの人間の記憶から消えていったとしても、その「事実」を知らない人しかいない場所へ世界へ逃げたとしても、それでもその「事実」は決して消えない。
その人の心に、どんなに明るい光をも一瞬で吸い込んで、絶え間なく広がるどこまでも深い闇を落とすために。
そのために、私は私の命をかけよう。
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