第三章:猫を撫でる

助けた男は大変感謝した。そしてしばらく自分をかくまってくれるという娘に好意を抱いた。若かったこともあり、同じ生活圏に容姿に問題のない男女が一緒にいれば自然なことだった。娘は珍しく彼を拒絶しなかった。理由はわからない。

「なぜ追われていたの」

「逃げ出してきたんだ。あそこにいたらいずれ乾いて死んでしまう。殺される。」

「大変な目にあったのね。」

あまり大変だった理由に興味はなかった。そんなことより今まで彼女を得ようと遠回しの駆け引きをしてきた連中とは異なり、純朴に自分の虜になっている男が可愛かった。

娘はブランデーを少し入れたホットミルクをつくって男に差し出し、向かいの椅子に座ると抱えた猫を愛おしそうに撫でた。

「どうぞ。寒かったでしょう。ブランデーも入れました。」

男は言った。

「どうしてここまでしてくれるの?」

娘はやや演技がかった様子で目を意図して窓にそらし意味ありげにほほ笑んでいった。

「んー。なんでだろう?」

男はその言葉に勝手に自分の期待した意味を当てはめたらしく、期待と喜びを隠そうとしているような顔をした。

娘はボードゲームをするときより簡単に男の気持ちを悟って、相手を侮りながらも愛おしいと思った。ボードゲームとの違いがあるのは打ち負かすことが勝利ではないということだ。

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