朝鮮人の賃金は日本人の80%と定める管理規定

 賃金は内地人の約80%程度の収入にならしむるを方針とす而して大体月収50円位より120円位迄のもののならしむる方針である
その主旨は半島人は内地人に比し其の能力は約80%程度なる見込に付賃金に於ては各々其能力の程度を超へざる様措置するのてある

(出典:株式会社住友本社鴻之舞鉱業所「半島労務員統理綱要」1941年1月)

●解説
 植民地支配の時期であっても朝鮮人は差別なしに扱われたという話が、インターネット上で盛んに宣伝されている。話題になった『反日種族主義』にも、そんな話が出てくる。
 確かに政府も「平等に待遇せよ」と説いたし、そういう職場もあったことは事実だ。露骨な差別は反発を買うだけで、作業能率も上がらないし、不満が爆発したら困るわけで、当然だろう。
 ところが、住友財閥系の鉱山に動員された朝鮮人に関する会社側の管理マニュアルである上記の資料には、「朝鮮人の賃金は日本人の80%におさえるべきだ」と明記されている。その理由は、「朝鮮人の能力は日本人の80%くらいだから」という。
 なるほど、朝鮮人は日本語能力が相対的に低く、鉱山での労働についても日本人労働者とは熟練度に差があるということは、一般論としては言えるかもしれない。
 だが、それは一般的にそうかもしれないというだけであり、実際は、個々の朝鮮人によって異なるはずだ。
 「一般的にそう言えるかもしれない」というのであれば、たとえば、この時期に鉱山にやってくる朝鮮人には日本人労働者よりも屈強な肉体の持ち主が多かったはずだとも言える。なぜなら、すでに日中戦争が長期化していたこの時期、肉体的に健康な日本人男性ほど徴兵されてしまい、労働現場では相対的に少なくなっていたと思われるからだ。
 結局、朝鮮人だから日本人より賃金を低くするというのは、個々人の能力ではなく民族を理由とした差別にほかならないのである。