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#4 ワイヤーカットとの出会い🍝

バリ仕上げ地獄は6月いっぱい続き、社会人のモチベーションが低下してきたころ、ワイヤーカットと出会う。

そもそもワイヤーカットとは何か?
正式名称はワイヤーカット放電加工機で、0.3mm程度の金属のワイヤー線に電気が供給され、ワークとなる金属(電導体)と接触することでワイヤー線とワークとの間にアーク放電が誘発され、金属が溶融し、切断される仕組みの機械だ。

もちろんワイヤー線もアーク放電によって溶融するため、常に新しいワイヤー線が供給されるようになっている。ワイヤー線は使い捨て。
この技術、元々はロシアで発見された技術をスイスの機械メーカーが技術転用をして開発された加工方法であり、確か1940年代後半頃に開発された技術だったと記憶している。

日本ではファナックの他、三菱電気やソディック、西部電気、牧野フライスなどが開発&販売している。

FANUC α-0A

ワイヤーカットは2台あり、両方ともファナック製。
小さいタイプのα-0Aと大きいタイプのα-1Cだ。
この2台は本館横の営業館1Fにあった8畳くらいの小さな小部屋。元々塗装場だった部屋を流用していた。

どちらもNCが実装されているが、0Aの方はZ軸移動やドレンタンクの排水が主導。自動結線機能なし。とかなりのエントリーモデル。
加工層も小さく、機械剛性もお世辞にも良いとは言えない機械だった。
機械がリリースされて直ぐに買ったらしいが、メンテナンスもできておらず、精度が酷い有様だった。
もう一台の1Cの方は買って日も浅く、自動結線機能付きの最新版だった。

この機械で作っていたのは、当時の金型部で主力だった樹脂型(エポキシを硬化させて作る型)の補強やアンダーカットを処理するための「駒」だ。
アルミや鋼材(炭素鋼)がメインのワークで、たまに真鍮だったり、銅などを加工していた。

会社にはこの機械の研修を受けた人が複数名いたが、皆てんでバラバラの部署で、適当な時に適当に使い、適当に管理しており、宝の持腐れ状態になっていたのは言うまでもない。

後から聞いたが、6月中頃に呼ばれた経営陣と新人社員の食事会で、この会社は最新の機械はいろいろあるが、管理がずさんでメンテナンスもろくにやらない。特に共用機は酷い有様。的な発言をしたらしく、面白く、生意気なヤツが入ってきた。ということで、ワイヤーカット担当にされたらしい。

実は学生時代にワイヤーカットを使っていたということは会社には言ってなかったが、その時の機械が、卒業した先輩が入社した会社でお古になっていた機械を譲り受けた物で、ボロボロで、ろくに加工どころか運転すらできない機械だった。
その機械がなぜか当時の私の興味の的となり、いわゆるレストアを研究テーマにしていたのだ。

実はワイヤーカットはかなり繊細な加工機で、周辺環境も重要だが、機械のメンテナンスは手間暇かける必要がある。
精度を出すにも水の管理も大切で水温、水のコンタミ率、絶縁率など管理項目が多い。
ここの機械はこれらが全くできていなかったのである。

ついに仕上げ以外の仕事を割当られた瞬間だった。
私はこれからこの会社を辞めるまでワイヤーカットを担当し続けることになる。

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