4/5の粒

わたし、運動会の借り物競争

走った先に落ちていた白い紙に書かれていたのは「ぬくもり」

ぬくもりって何?

色も形も匂いもわからず、ただ歩き回り尋ねる

ぬくもりって何ですか?

道具が片付けられ、選手も観客もいなくなり、

それでもわたしはさがし続ける

真っ暗になっても 雨が降っても 嵐がきても さがす

ふと、遠くに灯りがともり、近づいていく

これが「ぬくもり」か

心地いい あたたかい 愛おしい 

やっとみつけた はなさない

一緒に歩く

ゴールまで歩く

でも ゴールに到着したら ぬくもりは 元いた場所に帰っていった

そうだった これは「借り物」競争だったんだ

ぬくもりを知ったわたしは思う

本物をさがさなきゃ

本物はどこですか 本物はどこですか

これですか あれですか

違う これは あのときの「ぬくもり」とは違う

あのときのぬくもり?

そうか、あれは本物だったのか

借り物のぬくもりは本物で

本物のぬくもりは借り物だった

では さがしても意味がない

では どうしたらいいのだろう

途方に暮れて 胸に手をあてる

すると ふんわりとあのぬくもりがよみがえる

心が満たされる

ぬくもりはいなくなってしまったけれど

ぬくもりがくれたものは残っているんだ

それこそが かけがえのないものであることを知る

わたしは ひとりで歩く

ぬくもりのおかげで ひとりで歩いていける



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