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炎上したアーティストに、ファンができることは何かを考えた。

 2021年夏に起きた小山田圭吾さんの炎上事件で、ファンの皆さんの応援活動を見つめてまとめてみた。私自身は事態がかなり落ち着いてからの参加なので(すみません)、実体験を伴わない部分が多いが、夏から秋にかけて外側から皆さんの動きを眺め、ずっと真相に近いことは何で、自分にできることがあるのかを考えていた。

 ファンの総意などは存在し得ないので、これは、あくまで私個人の観察と見解をまとめたに過ぎない。今後の復帰への歩みを見守る為のふりかえりであるとともに、再び同様な事件が起きた際にも、何かの役に立てることを望んで書いた。しかし、この世界には明快なルールなどなく、炎上の内容によって、やるべきことやらない方が良いことは千差万別だ。これは、アーティストでない人にも当てはまるかもしれないし、全く誰の役にも立たないものかもしれない。


①炎上当初にできること

一次資料を入手し、感情や推測を控え、事実関係を詳細に整理する。被害者の方がいる場合、被害者の人権を一番に配慮する。

 基本的には事務所や本人からの発表を待つしかない。しかし、今回は炎上があまりに急激かつオリンピックという特殊事情もあり、アーティスト本人が詳細な謝罪がなかなか出せなかった。その為、一般の関心のある人やファンが検証記事をネットで公表することとなった。今回のような場合は、やはり整理した事実をネット上で公表すると効果的かと思うが、謝罪前の場合、ファンにもバッシングが相当及ぶと予測されるので(もちろん妥当で冷静な意見をいただくこともあるので、それは受けとめるといいと思う)、身の安全確保を十分に注意する。非難を受けた際には、口論にならないよう丁寧な言葉で明確な事実のみを伝え、それでも口論になりかけたら、返事を諦めるなどする。


②本人の謝罪が出た後できること

とにかく謝罪内容を広めることが、一番重要な活動となる。

 マスメディアは、炎上の発生時は大々的に報道するが、報道内容の誤り等は、小さく扱うか無視すると思った方がよい。全てが誤報の場合、アーティスト側が訴えれば謝罪は出るかもしれないが、訴えなければ放置されることも考えられる。そして、今回のように真実と誤報が混ざっている場合、なおさら無視される可能性が高くなる。事実関係が複雑な場合、説明も長くなり、よほど興味のある人にしか、読んでもらえない可能性も高い。

 まず本人の謝罪文を第一に広め、それ以外にも、詳細な内容を資料と共に説明したもの、時系列で説明したもの、省略して重要部分のみを書いたもの、色んな説明が見てもらえるよう、タグをつけてネット上に公開しておくといいだろう。今回作成してくださった方がいたように、音声動画も作れば、字を読むのが苦手な人に聞いてもらえるかもしれない。

 万が一興味を持ってくれそうなジャーナリスト等が出て来られた場合、資料提供等協力できると良い。できればアーティストの関係者以外の方が書いてくれることが、信頼性も増すので理想的だ。なかなか困難かもしれないが、ネット上に検証の材料を置いておくことで、そういう人が現れ得るかもしれない。

 謝罪が出た後も、事実と全く異なるデマを広める人はいる。SNS上で撤回を求めることも可能ではあるが、今回はここでトラブルに発展しそうなケースがいくつか見られた。トラブルを防ぐために、完全な誹謗中傷については通報等の機能を使った方が安全だろうと思う。直接メッセージを送ることの良し悪しは、私には現時点でも判断はつかないが、相手によるだろうし、危険であることは間違いない。

 特に注意すべきだと感じたのは、以下の点だ。相手が著名なインフルエンサーだったとしても、複数のファンで一度にメッセージを送ると、受け取った側は反発や恐怖を感じ、排除したいと思うはずで、相手のファン等も含んだトラブルに発展しかねない。もしどうしても、誤情報を発している人にメッセージを送る必要があると考える場合、1人の相手に対しファン1人だけで対応し送る方がいい。一度謝罪内容や事実と異なる点を伝えて受け入れてもらえない場合、変化は見込めないので、きっぱり諦める。そうでないと、敵対者を増やすことになる。炎上当初の非難コメント等を、数か月後に蒸し返すようなことはせず、繰り返しデマを流す人にのみ、冷静に一度指摘するくらいに留めた方が、安全だろう。

 炎上を抑えたいあまりに、本人がやったと認めていることを過少に表現することは、炎上を再燃させかねないリスクの高い行為なので、絶対に避けた方がいいだろう。応援をするファンは、強い非難を受けることも多々あるが、感情的に反応しないように細心の注意が必要である。


③ファンにしかできない活動を大切にする

・応援の気持ちをアーティストに伝える

 炎上は過酷で、生命を奪いかねない出来事である。炎上を生き延びて、今後の活動への気力を養ってもらおう。

・ハッシュタグなどを使ってSNSで作品やアーティストの魅力を発信する

 これもファンのできる一番重要な活動だろう。好きな作品、自分の感じるアーティストの魅力等を紹介し続けると良い。ミュージシャンの場合は、今回有志の方達が何度か開催してくれたような、決まった時間にファンが一斉に同じアルバムを聴くリスニング・パーティーを開くことは、なかなか効果的だと感じた。ハッシュタグがトレンド入りすることでアピールできたり、楽しさを共有することでリフレッシュでる。炎上による活動自粛が続くと、ファンもフラストレーションがたまる。1人静かに待てるタイプの人は大丈夫だが、不安が募るタイプの人は、時々共有できるイベントがあると、ストレスを平和に発散できて良いのだと思う。

・作品を買い支えるなどする

 もちろん無理ない範囲で。動画やサブスクリプションの再生回数を稼ぐなどの方法もある。再生回数が増えるとおすすめとして流れ、新たなファンの獲得にもつながる。

・署名活動

 取り扱い会社などによる作品の発表自粛等があれば、署名活動を行って販売や発表への希望を伝えることも可能である。署名を集める場合は、適切なタイミングを見計らって行う。企業にも事情があるので、強硬的な文言でなく、お願いとして行うのが望ましいのではないか。

・作品を紹介してくれる番組等に感謝を伝え、ファンだけでできない部分をやってくれる味方を増やす

・過去に炎上を経験した別のアーティストのファンからも、応援やアドバイスをいただけることがある

 経験者のアドバイスは心強いし参考にしたい。自分達も、今回の経験で学んだことを、別の人につなげられるようにしたいものだ。その為にも広い視野を持てるよう、シャットアウトせずに、色んな意見を私は取り入れたい。


 何はともあれ、まず第一に注意すべきことは、どんな支援活動をする際にも、自分自身の心身の健康や本来の生活を優先にすること。不安があれば、SNSでは別アカウントを用意したりアカウントに鍵をかけるなどもできるし、活動に疲れたら一時的にネットから遠ざかると良い。特に、精神的には最初から大きな負荷がかかる。余裕を持たないと、外部との衝突が起きるなど影響が出る。無理しないこと。同じファンでも、興味を持って関わってくれる外部の人でも、人によりスタンスは当然異なるので、それぞれのスタンスをお互いに尊重しながら共存していく。(ファンと呼べばよいのかは分からないが、アーティスト本人に興味はないけど、作品は何があっても変わらずに愛するという人も多い。)

 簡単にまとめると、事実を確認し、本人の謝罪や弁明等があれば、その内容を周知する。ファンとして無理ない範囲で応援し、味方を増やす。敵対する人を増やさない。自分の健康に留意する。それに尽きるのではないだろうか。

 この文章についても、個人の意見なので、ファンの中にもそれ以外の人からも賛否はあるだろう。この件に関わった特定の誰かや立場を、判定したり傷つけたりする意図は全くない。この記事は、炎上に対処する為のあるべきかたちを探る上での、個人的な記録として、残しておくものである。


 最後に、小山田圭吾さんが昨年9月に発表した謝罪文と、ファンの有志方々で作成された炎上経緯の説明サイトを紹介したい。(リンクはnoteではうまく貼れないですが。)

謝罪文

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炎上に至った経緯を説明するサイト https://ifyouarehere.studio.site/


2022年10月11日補記:
上記ファクトチェックサイトの内容には、資料の選択や訂正の基準が曖昧等の批判が向けられているようだが、時系列に概要が整理されていること、様々な資料へのリンクが多く引用されているなど便利であること、ファンがアーティストの為に協力してまとめたもので、本文との関連性が高いことから、引き続き紹介として載せて、内容の精度の判断は読んだ人に任せます。


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