見出し画像

ローワン・アトキンソンによる「メグレシリーズ」は稀にみる傑作である話

今日は天気も良いので、まちづくりもマーケティングも関係ない話を。

アマゾンプライムくらいしか楽しみがない昨今であるが、そこでメグレ警視シリーズがあると聞いて喜んで探してみると、

メグレ役がローワン・アトキンソン??????????


そう、Mr.ビーンで有名なあの方である。


ツイッターなどでは「志村けんが松本清張作品主役やるようなものか」などと言われているが、それ以上に「あなたイギリス人でしょ!?」という突込みがあるのだが。(ちなみに過去は、ジャン・ギャバン、ブリュノ・クレメールなどフランス人俳優が多い。当たり前だといえば当たり前だが。)

だが、製作はITV(イギリスのTV会社)。それは、、、と思いながらも、違和感はすごい。何しろ、メグレは100kgを超える巨漢。(私は原作のほとんどを読んでいるが、『男の首』においてその巨体で犯人に馬乗りになり、「それ、わかるか?100kgだ、、、」というシーンがあるのだ。ローワン・アトキンソンはどう見てもせいぜい70kgくらいだ。

どんなメグレ像になるのか?


そして、観覧して、この俳優の素晴らしさと、今回のメグレシリーズ製作のすばらしさに舌を巻いた。

まず、メグレシリーズとは何か?
フランスの作家、ジョルジュ・シムノンの人気ミステリーシリーズである。いつも殺人現場に出くわす高校生(見た目は小学生)名探偵コナンに出てくる目暮警部の元ネタである。
実直であり、人間味があり、のんびりしている。ただ、洞察力(現場だけでなく人間の心理面も)はずば抜けていて、様々な犯罪を解決していく。しかし、彼は警察の人間。エルキュール・ポワロやシャーロック・ホームズのような探偵ではない。なので、メグレは様々な部下(ジャンビエなど)に指示を出し、徹底した聞き込みや洗い出しを繰り返しながら、犯人を追及していく。時には冷酷ともいえるような厳しい追及を関係者に行い、関係者の嘘や背景を暴いていく。

ローワン・アトキンソンのメグレは、このメグレの冷静な部分、実直な部分を取り出して煮詰めたような感じだ。そのまなざしは時に冷酷で、真実を隠す事件関係者の心の闇を見つめる。
冷静な洞察力は要所要所で発揮され、証拠を集める(その的確だが非常に困難な捜索を指示される部下はたまったものではないが。ちなみに部下の二人も非常に素晴らしい演技だ)。
ローワン・アトキンソンの表現力を侮っていた。これは素晴らしい。

あとは、さすがの演出である。時代背景の考慮、シムノンの得意とした「パリの暗部」の再現力。人種のるつぼ、パリの悲哀。人種差別。そういったところから、小物から車から建物からすべてにおいてジョルジュ・シムノンの小説の世界が事細かに表現されている。

まだ4作だけだが、もし見たいと思った方は、第1作である「メグレ罠を張る」をぜひご覧いただきたい。

あらすじ
パリの町で発生した「女性連続殺人事件」。現代の切り裂きジャックに対して警察は手掛かりをつかめないでいた。メグレは心理学者とともに犯人の心理を読み解き、ある罠を張る決意をする。。。


ちなみに私がメグレシリーズであこがれているのは、「仕事中にもかかわらず大量の酒を飲んでいる」ところである。
※小説では尋問の時に大量のビールが警察署近くのビアホールから運ばれるだけでなく、ビストロやバーでの聞き込みの際にもワインやブランデーやカルヴァドスを飲んでいる。生まれ変わったらフランス警察になりたいと心から願っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?