【考察】終末の気配、始まりの予感

研修生というXファクターと4期生冠番組

新センターの誕生、キャプテン交代という激動の夏が終わり、年末までの乃木坂は表面的には比較的平穏な状態だった。

井上小百合以外には卒業発表もなく、2年続いていた年内での卒業はなかった。

しかし、いくつか気になる動きがあった。

10月から11月に東名阪で開催された坂道研修生のライブツアー。
3坂道の楽曲で構成されたセットリスト。各研修生がセンターでパフォーマンスした楽曲のグループに配属されるというまことしやかな噂も囁かれ、「現状維持」を望むファンは不安を募らせる。

研修生15人での新グループ結成なのか、それとも各グループへの配属があるのか。

しかしツアー後、再び研修生関連の情報は一切出なくなり、彼女たちの処遇は不確定要素として2020年へと持ち越されることになる。

最終的に2020年2月16日に坂道3グループへの配属が発表され、乃木坂には新4期生5名が加わることとなるのだが、これは少し先の話だ。

10月22日からは待望の4期生の冠番組『乃木坂どこへ』が開始されるも、これが不評。

放送開始当初、個人的には正直「壊滅的に面白くない」と感じた。

そもそも乃木坂の記念すべき初冠番組として古参ファンの思い入れが強い『乃木坂って、どこ?』を想起させる…というかあからさまに同じ略称になるのを狙った番組名(他局の番組なのに!)自体が放送前から反感を買っていた。

そして行き当たりばったり(という体)のロケ番組、MCとも噛み合わず、またバラエティ経験ほぼゼロの4期生たち。ネット上でも酷評する声が多かったように思う。

4期生のファンですら「彼女たちの良さを活かせていない」と不満を募らせ、せっかくの冠番組を無駄にしている感が4期以外のファンのアンチ心に火をつけてしまう。

そんな悪い流れ。

年が明けて2クール目に入ると、観る側が「これは4期生の可愛さを愛でる番組だ」ということに気づき番組の評価も上がりだす。そして新年会ロケ地争奪バトル、鎌倉でのクイズ対決、モルック大会と(行き当たりばったりではなく)企画を行なうことにより数々の名シーンを生むことになるのだが、これもまた先の話である。

研修生の動向と冠番組の不評。

このふたつがどこかモヤモヤした空気を乃木坂にもたらしていた。

後輩が見せた未来と不本意な年末

もちろん明るい話題もあった。

10月10日、11日のアンダーライブ。

座長は弱冠15歳の岩本蓮加。3期生として初めて、そして堀未央奈を別にすれば2ndシーズンに参加していないメンバーでは初めてアンダーセンターに任命された。

彼女を中心にパフォーマンスしたセトリは全てアンダー楽曲(ラストの『乃木坂の詩』を除き)で構成されていた。
激動の1年、各メンバーがグループ内での位置を模索する中でアンダーが見せた矜持と受け継がれる反骨の炎。

さらに11月26、27日の3・4期生ライブ。

どちらも平日だが、国立代々木競技場第一体育館のキャパ1万に対し各日10万の応募があったという。数字の上では3・4期だけで東京ドームでも埋まるということだ。

これはメンバーだけでなく運営にとっても大きな自信となる数字だったであろう。

12月に発売された『乃木撮 VOL.2』。

メンバー同士が撮り合ったオフショットの写真集。「露出度」という話題もお渡し会などの販促イベントもない状態で24万部を超える売り上げを叩き出し、乃木坂人気の底堅さを示す。


だが迎えた年末は、一言でいえば不本意なものだった。

紅白で披露する楽曲が『シンクロニシティ』、そして欅坂・日向坂との3坂合同さらに総合司会者の内村光良も加わって総勢80人でのパフォーマンスであると発表される。

この時点で白石麻衣最後の紅白ゆえの選曲・演出ではないかという憶測がネットを駆け巡る。

率直に言えば「紅白特有の下手な話題作り」。毎回思うが本当にセンスがない。曲の終わりに内村(やヒム子)が映し出されることが本当に面白いとでも思っているのだろうか。
3坂合同もメンバーやファンにとっては画面に映る機会が減るだけで何のメリットもない。


12月30日、乃木坂はレコード大賞3連覇を逃す。

そして大晦日の紅白。

『シンクロニシティ』の最後でキメ顔を作ろうとする白石の後ろに抜かれる内村という画に、客席から聞こえてきたのは失笑。

後味の悪い年末だった。


こうして終末の気配と始まりの予感のふたつが共存するどこか不穏な空気を纏いながら、乃木坂46の2019年は終わった。

(2020年08月26日 書き下ろし)

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