【舞台レポ】プリンシパルへようこそ~4期生初公演「3人のプリンシパル」2日目

2019年4月9日から、乃木坂4期生初公演『3人のプリンシパル』が開幕した。

乃木坂伝統の試練に挑む4期生たち

まずは、プリンシパルについての簡単なおさらいから。
公式サイトの特設ページにある説明を要約すると以下の通り。

乃木坂46公式 4期生初公演「3人のプリンシパル」 特設サイト

“キャスティング参加型演劇”
一幕がオーディションで、観客の投票により二幕の出演者が決まります。
つまり毎公演出演者が変わる前代未聞な舞台、それがプリンシパル。

各メンバーが役に立候補し、観客が「各役の立候補者の中で一番ふさわしい」と思うメンバーに投票。役ごとに得票トップのメンバーだけが二幕に出演できます。

今回の演目は「ロミオとジュリエット」。4期生11人に対し、準備された役はタイトル通り3つ。合格率3/11というシビアな戦いが2週間続くのだ。

この「プリンシパル」公演は乃木坂がデビューした2012年から続く伝統となっており、『16人のプリンシパル』というタイトルで過去3回開催されている。1期生はそのすべてに、2期生は第3回に参加した。
3期生は今回の4期生と同様、加入翌年に自分たちの代だけで『3人のプリンシパル』を行なった。

過去に経験した先輩メンバーたちはプリンシパルをこう表現している。

「恐怖」「地獄」「トラウマ」

しかし、誰もが口を揃えてこうも語るのだ。

「乃木坂にとって必要なもの」

乃木坂伝統の試練。
4期生の皆さん、プリンシパルへようこそ-

初日の衝撃と2日目の一幕

そしていよいよ始まった4期生によるプリンシパル。
その初日の結果にファンはどよめいた。

ロミオ:賀喜遥香(清宮レイ)
ジュリエット:北川悠理(掛橋沙耶香、柴田柚菜、田村真佑)
それ以外ぜんぶ:早川聖来(遠藤さくら、金川紗耶、筒井あやめ、矢久保美緒)
(カッコ内は落選者50音順)

ジュリエット役の北川とぜんぶ役の早川、ふたりは目に見える人気の尺度である握手会の完売速度でやや出遅れていた。
そのふたりが揃って二幕出演という結果。

このガチ感。これこそがプリンシパルの魅力だ。


そして迎えた2日目。

メンバーは50音順に並び、立候補する役の台詞(役ごとの台詞は任意でなく共通)を演じていく。

以下はそれぞれの演技についての個人的な感想。

井上小百合の舞台をほぼすべて観てきたので多少は演技を見る目もついてきたのではないかと思うが、あくまでも素人の主観であることをご容赦いただきたい。

遠藤さくら(ぜんぶ)
2日連続の挑戦。ロミオの友人・乳母・ジュリエットの母を順に演じていく。トップバッターの緊張もあるのだろうが、少し動きが小さかったように思う。母のところで台詞を忘れてしまったが、表情に出さずになんとかやり切ったのは評価できる。

賀喜遥香(ジュリエット)
初日ロミオの当選から変更。舞台を横に大きく使ったダイナミックな動き。はっきりした顔立ち、身長の高さも相まって舞台映えする。声量も十分。

掛橋沙耶香(ジュリエット)
2日連続の挑戦。ふわふわした本人の雰囲気そのままの可愛らしい演技。恋するお嬢様のイメージがぴったり。台詞に抑揚もついてたが賀喜の直後だけに舞台の横幅を使えなかったのがやや気になった。

金川紗耶(ぜんぶ)
2日連続の挑戦。若干コミカルなオーバーアクションで演じ分けをしていた。決して上手ではなかったが、やり切る姿勢には好感が持てた。

北川悠理(ジュリエット)
初日と同じ役で連勝を狙ってきた。か細い話し声とは一変、しっかりした声量と全身を使っての感情表現。なかなか見るべきところがあった。

柴田柚菜(ジュリエット)
2日連続の挑戦。本人にとってすごく嫌な言葉だと思うが「無難」だった。下手でもないが特別上手いわけでもなく、残念ながら印象に残りづらい気がした。

清宮レイ(ジュリエット)
初日ロミオ落選から変更。豊かな表情、運動神経の良さがうかがえる大きな動きが目を引いた。ただ彼女は力感が出てしまうのでジュリエット役としてそれがはたして正解なのかやや疑問。声量もあるが、一定のトーンで少し単調に感じた。

田村真佑(ジュリエット)
2日連続の挑戦。緊張からか全体にやや硬く、表情や発声そして台詞の間がワンペースなのが気になった。

筒井あやめ(ぜんぶ)
2日連続の挑戦。最年少らしからぬ最年少といわれがちな彼女だが、ここでも手堅く器用に演じ分けており声量も十分。若干表情に乏しいところだけが気になった。

早川聖来(ロミオ)
ここまでロミオの立候補者がなく「ひょっとして全員から投票か?」という空気が漂いだす中、早川が動く(と言っても立候補は事前申請なので流れを見て変えたわけではないのだが)。初日ぜんぶの当選から変更。舞台経験者らしく、声量や台詞の間、舞台の空間の使い方等全体的に上手。凛々しい顔立ちと高身長でロミオは実にはまり役だと感じた。

矢久保美緒(ロミオ)
初日ぜんぶ落選から変更。結果的に2日続けて隣の早川と争うことになる。『乃木坂工事中』で見せた「焼きそばパン!」同様に元気に大きな声での演技は好感度が高いが、間が取れず早口かつワンペースになっており早川の貫録の演技の後では分が悪い印象が否めなかった。


さらにこの後、それぞれがこのオーディションに懸ける思いを語る。

細かな内容は省略するが、乃木坂オーディション応募時の動機を語る者と、このプリンシパルによって何を得たいのか、加入後の現在の思いを語る者に分かれていた。

ただ多くのメンバーに共通だったのが「変わりたい」。

今の自分を変えるため。先輩メンバーの多くも乃木坂加入の動機をそう語っている。
さすが乃木坂に憧れて入ってきた4期生。そう思わせた。


そしていよいよ観客投票の集計が完了し、二幕の出演者が発表される。

(2019年04月12日)

意外な二幕の出演者

開票の結果、選ばれたのはこの3名だった。

ロミオ:早川聖来(矢久保美緒)
ジュリエット:清宮レイ(賀喜遥香、掛橋沙耶香、北川悠理、柴田柚菜、田村真佑)
それ以外ぜんぶ:金川紗耶(遠藤さくら、筒井あやめ)
(カッコ内は落選者50音順)

個人的には少し意外な結果だった。
演技の出来に人気度を若干加味して、早川・賀喜・筒井と予想していた。

清宮はアピールコメントでの情熱がプラス評価になったのではないだろうか。
金川はオーバーアクションの一生懸命さを筒井の器用さより高く評価するファンが多かったのだと思われる。

落選したメンバーも健気に笑顔で拍手を送る。

「達者」早川と「笑顔」清宮、そして金川の「一生懸命」

そしてセットが置かれ、休憩を挟んで二幕が始まった。

やはり目を引くのは早川の上手さ。
舞台上での立ち居振る舞いが身についているという感じだろうか。立っている姿勢や台詞を言いながらの身体のラインなど、観られていることを十分に意識した姿が印象に残った。
あえて言えば、他の演者が台詞を言っている間の演技がそれほど細やかでないところに物足りなさを覚えた。

そして清宮。
一幕の台詞読みでは「ジュリエットにはちょっと向いてないかも?」と思ったが、それは杞憂だった。
普段はショートカットで元気、ボーイッシュな魅力の清宮。しかし、ふわふわドレスを身にまといロングヘアにした彼女はまさに夢見る乙女。力みもうまい具合に抜けていていい感じ。ただやはり発声や間がワンペースなのでその辺りが今後の課題かと思う。

私の隣の席に座った方が「ひなちま(樋口日奈)に似てますね」と仰っていたが、言われてみれば確かに!ロングにした清宮のニコニコ笑顔は樋口に通じる癒しパワーを感じた。ちま推しの方々はぜひ、彼女に注目してほしい。

金川は二幕も頑張った。
全力で恥ずかしがらずにやり切る。これを貫いている姿に清々しさを覚えた。
ドタバタ感はぜんぶ役の重要な要素のひとつなので、彼女は結果的にこれをうまく出せていると思う。
この不器用な一生懸命さをロミオやジュリエットでもプラスに変えていけるか。そこがこれからの金川の腕の見せ所ではないだろうか。


無事に二幕も終了し、アフターライブ。ここでは2曲が披露された。
毎日同じ曲ではないようなので、バスラで披露した曲と合わせて4期生のレパートリーは着実に増えている。3期の時と同様、単独ライブ開催の期待が高まるところだ。


実は私自身3期生プリンシパルは観ておらず、2014年6月15日の『16人のプリンシパル trois』千秋楽以来、実に4年10ヶ月ぶりのプリンシパルだった。

(ちなみにその『trois』の千秋楽は9thシングル休業直前の生田絵梨花を送り出す壮行会のようなメンバーたちの温かな空気が素晴らしく「やっぱ乃木坂だな!」と思わせる公演だった)

あの頃とメンバーは変わっても、シナリオのないガチ感とメンバーの必死な姿は変わらない。

乃木坂伝統の試練、プリンシパルは健在。そう感じられる公演だった。

(2019年04月13日)

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激動の年となった2019年の乃木坂46を、筆者自身が現場で見聞きし感じたレポートを中心に描き出します。

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