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後書き『サンボボが坂に』

 こんにちは。電楽サロンです。
 この間、長編『サンボボが坂に』の更新が終わりました。最後まで読んでくださった皆さんありがとうございました。
 今日はサンボボが思いついた経緯や、考えてたことを後書きとして残しておこうと思います。

 『サンボボが坂に』は初めて10万字以上書いたお話になりました。今でもどうしてこんな沢山の文量を書けたんだろうと不思議に思う時があります。
 元々、タイトルが先行して出来ていました。初めは「サンボボ」だけでした。面白い響きでどこか不穏な気分にさせる単語でしたが、中身は全く決まっていませんでした。
 それが突然、形になり出したのは3年前くらいでしょうか。
 夏頃に家で映画を見ていました。その時に見ていたのがニコラスケイジ主演の『マンディ地獄のロードウォリアー』です。

 変な映画だけど憎めない。良くないところはたくさんあるけれど、それを埋める暴力の圧。マンディは私の好きな映画です。
 この映画は笛を吹いたらバイクに乗った悪魔がやってきます。
 サンボボ……。謎の単語は三人の異形がバイクに乗って現れるからサンボボなのかと腑に落ちました。
 外からやってきた謎の存在が、謎のまま色んな人間をめちゃくちゃにする話が私は好きです。マンディはそれを叶えてくれそうな映画でした。でも、もっと三人の悪魔が酷いことをするところが見たい。街をめちゃくちゃにするくらいのパワーがあって欲しい。そんな思いから後半のシーンはできあがりました。

 じゃりん じゃりん
 異形がみっつに増えた。
「あああ……あああ……」
 サンボボが坂に!

 思い描いていたシーンにたどり着けた時は嬉しかったです。ただ、かなり最後のシーンになってしまったので、今でも正しいかったのか迷います。じっくり街の人間を描き続けて最後の最後に日常を破壊する形は好きだけれど、読む人は最後までどんな話か見えずについてきづらかっただろうと思います。
 サンボボが何か分かったあたりで、私はもう一つお話のアイデアを持ってました。
 それが寝たきりになった老人がみるみる筋肉質になっていくアイデアです。一つではどうも転がせなかったのですが、サンボボと組み合わせることでホウヤのキャラクターが出来ました。
 親しい人が精神的に変わり果ててしまうのはめちゃくちゃ怖いなぁと思います。自分が知っているその人なんだけど、理解できなくなっていく
のが怖い。自分の怖いと思うことをベースにホウヤと奏太の関係を作りました。
 夢の中でホウヤはサンボボに会っているから痛みで筋肉質になるんだろう。なら他の人の夢にもやってくるかもしれない。痛みを感じないサンボボの遊び相手がいるかもしれない……「令嬢」のイメージはこんな連想ゲームのように出来ました。「令嬢」の性格は書くうちに決めていました。自分は何もしないけれど、他人が勝手に彼女に理想を持って破滅していく造形になりました。誰も彼女を見ていないけれど、最終的に一番とんでもないことを考えてたのは「令嬢」自身だったのも好きです。
 書いていくうちに決めたことといえば、篠田殺しやお化けホテルもそうでした。最初は全く入れるつもりがなかったのに、知らない間にお化けホテルで修羅場が起きていて書いてる自分が一番驚いていました。その場その場で考えて書いてたことが、予想外の展開に繋がっていく経験は初めてでした。
 プロットをガッチリ作らなかったからかもしれません。サンボボはなんとなくチェックポイントを作っておいて、あとは書いてるうちに決める方式にしていました。これが結果として予想外の展開を生み出せるようになったんだと思います。
 あとは、大体一日に1500字くらい話を進めるようにしていてどうしても一日の文字数が稼げない…!ってなった時に新しい要素を入れて当初なかった展開が生まれることもありました。前半で「令嬢」が弁当をぶちまけられてたシーンも無から生えてきました。今読むと引き伸ばしっぽく見えてないかが少し心配でもあります。
 ここからは自分が書いてるもの全体的な話になるんですが、私は街がめちゃくちゃになる話が大好きなんだと思います。
 『THE ASAXAS CHAIN SAW MASSCRE』も浅草がめちゃくちゃになる話でした。逆噴射小説大賞に出したお話も『虚面狩り』や『スペクター7』はこれから主人公のいる街でとんでもないことが起こりそうな雰囲気があります。きっとこれから書くものもそういったものが多くなるような気がします。

 何はともあれ、ひとつお話を完成させられたのは自信につながりました。まず完成させないことには話にならないので、とにかくこうして後書きまで書けるお話をもっと増やしたいなと思います。今年もひとつ作れる予感がしているのでまたお見せできるかもしれません。
【おわり】

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