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「現代刀匠番付」がほしい

現在年に一度「現代刀職展」という現代刀職のコンクールが開催されています。そこで優秀な作を作った方には賞が与えられています。

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刀の近くには作者の名前が載っており過去の受賞歴なども載っています。

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これはこれでありがたいのですが、こういうコンクールの機会でないと他の方と比較できないというデメリットが。
あと刀の世界を知らない人からしたら賞がどの位のものなのか分からない。
(賞の種類についてはこちらをご覧ください。)


①大きく団体が2つ存在する

一方で日刀保に属さない別団体の全日本刀匠会というグループが存在しており、どうやらそこに所属している刀工の方は日刀保のコンクールに出品出来ないのだとか。なので全日本刀匠会は別でコンクールを開催している。

まぁ何が言いたいかと言えば、じゃあ現代刀匠の中で一体誰がどの位上手いのか?というのが極めて分かりづらいということ。
色々な名刀を何度も手に取った事のある方であれば刀を見て良し悪しが分かるかもしれないが、一般の人にいきなりそれを理解してもらうのは無理な話だ。

②注文打ちを誰に頼めば良いかが一番悩む

そんな状況下で私含む一般人が現代刀を注文したいとなった時に、誰に頼むのか?というのは一番悩むところだと思う。
分からないのは技術の高さだけではない。
値段(相場)も分からない。
太刀を作るとしてA刀工は1振150万円、B刀工は一振400万円、C刀工は一振60万円。
一体どれが相場なのか分からない。
上手くて高いのは当然であるが、下手なのに異様に高いという事は無いのか?その辺りも注文する上で不安に感じるだろう。

その一つのバロメーターが受賞歴なのだろうが、例えばある年に傑作が出来て一番上の賞を取った人がいたとする。
しかしその後5年間は賞を取れなかったとする。
一方で上から2番、3番目の賞を毎年取り続けた人がいるとする。
この人は安定して優れたクオリティの作を製作している事になる。
両者の腕は一体どちらが優れているのか?

私は後者の方が優れていると思うが、実際のところはどうなのだろう。
なので私のような刀を見るプロでない人にもその刀工がどの位の腕をしているのかが分かるような資料が欲しい。
その1つの可能性が「現代刀匠番付」なのである。


③実は昔から番付表はあった

実は昔から刀工の番付表というのはありました。
これが刀工の人気を表すバロメーターだったのです。
新刀で言えば、虎徹や助広などはやはり横綱に位置しています。
以下は昭和17年時点の刀工番付表。

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(画像出典:「図説日本刀大全Ⅱ 名刀・拵・刀装具総覧」)


これがあると現代刀工も客に値段を伝えやすくなるのではないか。
また、ここでランキングが上がれば値段を上げても皆が納得する事だろう。
技術の高い人の作が高いのは当たり前の事である。

ここではぜひ無鑑査の方も全員ランキング化されて欲しい。
無鑑査の方は必然的に横綱や大関となるだろうが。
注文打ちの値段もこのランキング表を元に大まかかに相場が決まっていると分かりやすい。
例えば横綱なら太刀1振800万円~、前頭なら150万~とかいうような感じで。

④注文までの導線も整備されて欲しい

現代刀匠は無鑑査になるまでなかなか刀作りだけで生計を立てるのは難しいと聞く。いきなり刀全体の需要を増やすのは難しいかもしれないが、せめて今注文打ちを依頼したいという人に向けて、整備出来る事もあるように思う。
何ならこの番付の刀工銘の上にでもQRコードなり貼っておいてその刀工のHPなどにアクセスできるようにしていても良いかもしれない。
この刀工に依頼したいと思っても現在はSNSやHPを持っていない人に注文するのはかなり困難である。
注文までの導線整備も必要だと思う。


⑤まとめ

という事で、現代刀工番付を作る1番のメリットは、刀匠の技量が可視化されることで一般人から見ても分かりやすい事、加えて若い刀匠の方からすれば番付という分かりやすい競争モデルが出来上がる事でモチベーションに繋がるかもしれない。ランキングを上げれば刀が高く売れるのだ。
無鑑査の方も張り合いが生まれるのではないか。
作刀部門だけでなく、研磨や白鞘、彫金なども同様にランキング化されると嬉しい。
他にも備前伝でのランキング、相州伝でのランキングなど、その刀工が得意とする作中でのランキングも知りたい所である。
これがあると備前伝を頼みたい場合誰が得意か一目で分かるので。

因みにランキングを決めるに当たり誰を横綱にするかは利害関係も多分に絡み多いに揉める事であろう。
ここは私がどうこういう事では無いので関係者が納得する形でまとめてほしいが、とにかく忖度だけは無くしてもらいたい。
忖度があるとこの番付表に意味は無くなり、モチベーションも一切上がらず、利権にだけ利用されてしまうので。
そういうのが出来る位なら無い方が良いです。

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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。


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