善意の搾取

日本刀が昨今テレビなどで取り上げられる事も増えたからか、刀のビジネスを始めようとする人をチラホラ。
先日もある一本の電話が掛かってきた。
070や050で始まる番号は経験上99%迷惑電話なので取らないようにしているのだが、その日は080から始まる番号であったので取った。

A「はじめまして、私刀に興味があり調べていたところ中村さんのブログに辿り着きまして。ホニャラララ…
実は私日本の良き伝統文化を海外に広めたいと思い、日本刀に注目したんです。ホニャラララ…」

私「…はい。ありがとうございます。で、要件は何でしょうか？」

A「そこでビジネスを始めるにあたり是非中村さんに刀業界の事について色々お聞きしたいと思いまして。ZOOMなどで良いのでお時間頂けないでしょうか？」

私「失礼ですが、まずどちら様でしょうか？」

A「失礼しました。株式会社小野寺（仮）のAと申します。」

私「会社のHPはございますか？」

A「はい、あります。ですが実は4ヵ月前に初めたばかりの会社でして。」

私「一度私のHPの問い合わせ欄からメールアドレスなど送って頂けますか？」

という事で送って頂く事に。
確かに会社のHPはある。法人登記もしてある。
しかしHPの事業内容を見ると「果物の輸出」と「企業向けAI導入、活用支援」という良く分からない組み合わせ。
そこに加えて日本刀…？

どのようなビジネス内容か聞いたわけでもないのでそれは別にどうでも良いのだが、電話の入りからしてまず名乗らない点や、話が長く主旨や目的が分からない点、分からないから取りあえず教えてとあまりに他力本願な点など、自分でこれからビジネスをしていく人とは思えない胡散臭さを感じた事もあり、やはりというべきかやはり案件の可能性が高い。

実は過去には、少しでも刀に興味がある人であれば刀にもっと興味を持ってもらいたいし…ということで今回のようなビジネス目的の相手にでも善意で日本刀の事についてゼロから丁寧に教えていたりしていた時期もあるのだが、こうした場合大体善意に付け込まれて時間や知識だけを奪いにくるケース（しかも相手は刀に興味がなく結局お金にしか興味がないパターン）が意外に多い事を知った。
現在は私も当時より刀展示ケースの製作をしたりなどしなければならない事も増えたので、刀の事を好きでない人や金儲けだけが目的の人にはなるべく時間は使いたくはない。

という事で無駄な時間は過ごしたくないのと相手の真剣度を図る意味でも「30分3000円でいいですよ」と返事を送ったところ、「では別の人を探すから大丈夫です」と一言。

やはり。。

というより見ず知らずの人相手に自分都合でタダで専門知識を得ようとする自分勝手な思考が非常にキモチ悪い。
これは例えば作家に対して「あなたの作品1万円は高い、1000円なら買う」と言うような人に抱く感情に近い気がする。

よく考えてほしいのだが、自分のやりたい事があったとして、赤の他人に協力を仰ぐ場合、なぜタダで得ようとするのか。
なぜこちらは見ず知らずの人相手に親身に自分の時間を犠牲にして無償で奉仕する必要があろうか。
少しだけといっても1時間はかかるだろう。
そのような人に1時間使うのであれば、刀が本当に好きな人と話す1時間に時間を使いたい。

こうした善意に付け込み搾取しようとする人が如何に多い事か会社員を辞めて1人で仕事をするようになってから気づかされ驚かされる。
自営業をしている場合はこうした人から距離をおかねばならないと本気で思う。
別に私も本当に刀が好きな人相手であれば話すのに当然お金なんて要らないですよ。話している時間は私にとって楽しいですからね。

でも今回の件で言えば刀のビジネスをしたいと思うならまず私なんかに話を聞く前に刀屋さんに行ってまず1振買って刀の事を自分自身でしっかりと知るのが順序ってものだと思うのです。
私に話を聞いて刀の一体何が分かるのか？よく考えた方が良いと思います。

刀の職人さんなどにも連絡がいくかもしれません。
私が言う事では無いかもしれませんが、善意に付け込まれないように注意してくださいね。

今回も読んで下さりありがとうございました！
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それでは皆様良き刀ライフを！

↓この記事を書いてる人（刀箱師　中村圭佑）

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。