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東京都支部刀鑑賞会(2023/4/15)

昨日は東京都支部の刀鑑賞会でした。
なんと無鑑査刀匠の吉原義人さんが実演されるとの事で楽しみにしていました。


・吉原さんの土置き実演

実演は土置きでした。

焼刃土は粘土と砥石と墨を混ぜたものとの事。
土置きする際はライトを当てる必要があるとの事で、コンマ何ミリの厚さを調整する為に必要不可欠とのこと。
また皆「直刃ほど難しい」と良く言うが、そんな事はなく非常に簡単、というお話はとても面白かったです。
3尺を超える刀は重い事に加えて、刀身を均一に赤らめる事が難しく、焼き入れがとても難しい。にも関わらず海外では居合で使う用に3尺以上の刀を注文してくる事があるので困るとのこと。笑

鑑賞刀には吉原義人刀匠の刀が5~6振程並んでいましたが、特に29歳の頃に高松宮記念賞を受賞された水神切写の太刀は溜息が出るほど美しかったです。
匂口は小沸が微塵について古京物あたりに見える完全に古名刀でした。
恐らく水神切をそのまま写しているわけではなくて、吉原さんの味を出すことを意識しているようにも見えましたが、何より29歳の時の作というのも衝撃的。
横に鑑定刀の重美が並んでいるにも関わらずそれよりも美しいと感じたのは現代刀では初めての感覚。
結局30分位手に取り拝見させて頂きましたが、叶う事ならもう一度拝見したいです。


・鑑定刀

①「一」福岡一文字(重要美術品)

刃長2尺2寸程度。折り返し銘。元の姿を想像すると2尺6寸程度とみられるとのこと。
重花丁子に乱れ映りが立ち、匂出来。一見長光あたりにも見えたが、切っ先がやや延びている姿であること、地鉄が少し肌だっていた所から、長光の線は消す。
姿で言えば摺り上げられていたので反りが浅く見え、応永備前の線も考えたが応永であればもう少し棒映りとなるかと思いこの線も消して一文字派を検討。その中でも刃が華やかだったので福岡一文字に入れ当たり。
見事な名刀。

②「一」吉岡一文字(重要)

1尺2寸程度の反りの浅い薙刀の形状。
薙刀の形状については勉強不足であった為、地鉄や刃文から時代と作者を探る。特に匂口が柔らかく古さを感じたのでその点で古刀と断定。
縦に横幅狭く入る乱映りが部分的に見えたので吉井派の作のようにも見えたが、小丁子、小互の目が連なる刃文が違うように感じ除外。
匂い口の旨さから長船にも見えたがそれにしては地鉄が荒れている。
かなり悩んだがこちらも福岡一文字に入札して同然。
確かに刃は大人しかったので吉岡に入れるべきだったかもしれないが、今の自分にはそこまでの力はない。
因みに1号刀と大小で拵も付いているとの事。

③無銘保昌(特重)

2尺2寸。大摺上げ。全体に柾目がはいる作。
腰反りで身幅は広め。匂口が柔らかく格の高さを感じる。
とても健全ながら古さを感じた。
総柾目という点から保昌と入れ当たり。

④祐定

7寸9分。ぱっと見の姿は祐定でよく見る両刃短刀。
匂い口が締まる様子も一致していたので祐定と書く。
しかし祐定にしては刀身が何となく大きく見えた事から念の為、並びなおして再度地鉄をよく見てみると、地鉄が想像以上に詰んでいる。
そして荒い沸が区の上に付いているところから新々刀以降の作では無いかと予想。地鉄の様子が白っぽく見えたので現代刀?と思い、よく見ると生ぶ刃を発見。
これは引っ掛けだ、と現代刀に入れ、時代違い。
また生ぶ刃に騙される。
こんな健全なものはないという固定観念で見るとそういう事になってしまうのかもしれない。そのまま入れておけば良かった。

⑤出羽大掾国路(重要?)

1尺1寸。慶長17年の「平安城住国道」銘の短刀。
出羽大掾は慶長19年に受領するのでその前の作。
身幅が広く比較的重ねが薄めの造りから南北朝以降と推察されるが、姿的に慶長新刀と見る。
肌がザングリしており、匂口が深く刃が冴え志津を狙ったような古風な感じをとても上手く表現している。
帽子は三品っぽさが見て取れる。映りは無し。
但し相州物の本歌にしては肌立っており潤い感が足らない印象。
しかしこれだけの作を表現できるのは堀川一門でも器用な国路だと思い入札して当たり。


今回の1本入札は「当、同然、当、時代違い、当」と70点で自身の過去最高得点でした!そして奇跡の人位(3位)!
ただの偶然ですがそれでも嬉し過ぎますっ!!!
4号刀をもし祐定のままにしておけば90点で地位(2位)でした。惜しい…。
因みに天位(1位)の方は95点との事で奇跡をもってしても壁が高すぎました。


・鑑賞刀

志津三郎兼氏とその系譜というテーマで関物が並ぶ。

個人的な一番の目玉は以下の兼氏在銘の短刀でしょうか。
以前以下の動画で見ていたので、実物を拝見出来て興奮状態であった。

(画像出典:Youtube日本刀の美

小ぶりな姿に特徴的な帽子(地蔵帽子)をしている。
大きめの沸が所々につき肌立ち覇気がある。
そして茎の状態が頗る良い。
拵の展示は無かったが、この拵は桃山期頃の千利休所持の頃の物では無いかとの事。刀身、拵共に非常に貴重な一振りに思いました。

他には以下のような刀が展示されていました。
鞍馬関というのはとても珍しいですね。

・無銘志津
・無銘直江志津
・兼国
・弘重
・兼延(明応頃)
・兼延
・兼定(ノサダ)
・孫六兼元
・吉次(鞍馬関)


・拵作りのいろはと注意点

講師である竹本福一さん所持の拵が7~8点ほど並んでいました。
拵製作時のお話などもされていましたが、竹本さんが仰っていて印象的だったのはとにかく現代の職人に仕事を回す大事さを説いていた、ということでしょうか。
竹本さんが製作されたという拵も2点ほど展示されており、1点は以下の拵の写を金具は成木一成さんに依頼して製作したもの。
もう1点は金具などを極力省いた黒漆塗の合口短刀拵でしたが、何もないのもつまらないとの事で、鞘の下部に北斗七星を入れたとのこと。

(画像出典:静嘉堂文庫美術館

竹本さんは気に入った刀装具があれば買っておいて、後から拵に合うものがあったら使うそうですがその確率はとても低いようで、多くは箪笥の肥やしになるとの事です。因みに私は今のところ全て箪笥の肥やしになっているので分かり実が深いです。笑


・終わりに

という事で今回の鑑賞会も名刀が並び眼福でしたが、個人的に一番は義人刀匠の水神切写を拝見出来た事でしょうか。
完全に義人さんのファンになってしまいました。
義人刀匠の刀を見かけた時は手に取って是非拝見してみたいです。
次回は7月15日との事で次回も楽しみです!!


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それでは皆様良き御刀ライフを~!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。



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