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「甲冑・刀・刀装具展 光村コレクション・ダイジェスト」を見て

今日はようやく光村コレクション展を見に表参道へ。
参道駅のA5出口を出て、5分ほど歩くと根津美術館は見えてきます。

お目当ての展示です。
「企画展 甲冑・刀・刀装具 光村コレクション・ダイジェスト」
2023/9/2~2023/10/15

早速入口を入ると、実に素晴らしい和空間が。
緑と茶とグレー(白)という組み合わせが実に心を落ち着かせてくれるように感じます。


①光村コレクション 刀

展示刀は約20振程。
長光や来国俊、廣光、雲次、長谷部国信という古名刀から、埋忠、国広、国儔、親国貞、伊賀金、助広、などの新刀期の巨匠作、明治頃の月山貞一などが並んでいました。
ライトはケース内からスポットライトで照らされており、地刃共に鑑賞し易かったです。太刀置きされている刀についてはかなり腰をかがめないと見えない物も多かったです。

長光は流石の地刃の冴えをしており、乱れ映りも鮮明でした。
区上あたりは直ぐ映りというか乱れていない映りが見て取れます。
晩年頃の作でしょうか。
来国俊は直刃に来肌と言われるような肌立った箇所が多く見られたので結構消耗されて減っているのかもしれません。古青江と何となく似た印象も受けました。
廣光は2振展示されてましたが、いずれも皆焼の作で出来も状態もとても良い物に思えました。
雲次の作にも乱れ映りが鮮明に見て取れ、姿や地刃の様子からもやはり長船長光や真長あたりにも繋がるような気もしますがどうでしょう。

新刀で気になったのは「城州埋忠作」という埋忠二字銘の作。
天正18年の物で、確か明寿名が世に出る8年前の作であると解説文に書いてあった記憶があります。
いずれにしても二字銘埋忠の短刀は殆ど見る事のない珍しい物です。
この二字銘については明寿の初期作かそれとも明寿の父の作かという論争が今なお続いているようです。
因みに鐔にも埋忠二字銘があり、明寿本人なのか、別の誰かなのかという論争もまだはっきりしていません。

色々良い刀は有りましたが、個人的には月山貞一氏の倶利伽羅龍の太刀が常に見る物よりも刀身目一杯に彫物が大きく入っているように感じられ、特に記憶に残っています。
この太刀はどうやら日露戦争時にロシアが中国の旅順に建設した要塞を日本が陥落させた記念に作られたそうで。
現在ロシアがタイムリーな話題なだけに印象に残ったのかもしれません。
これがたった120年ほど前の事なんて…戦争など早く終わってほしいものですね。

(画像出典:Art Annual online 鏨の華 ―光村コレクションの刀装具―


②光村コレクション 刀装具

そして何と言っても素晴らしい刀装具。
光村コレクションは別名「龍獅堂コレクション」とも言われ、名品が多いとして有名です。時々市場にも流れているのを見ます。
後藤一乗をはじめ、和田一真、荒木東明、大月光興、篠山篤興、安親、堀江興成、横谷宗珉、岩本昆寛、石黒政美、加納夏雄などなど、書ききれないですが、江戸後期から幕末、明治にかけての名工の作が中心に並んでいました。
後藤家の作もありましたが、7代顕乗以降の作が並んでいた記憶です。

素晴らしい作は多かったので、面白かった作について。
まず「銀刀」と呼ばれるもの。
普通拵には刀身そっくりに木でつくった「繋ぎ」が付いていますが、これを銀で製作したもので、稲穂のような刀身彫刻まで施していました。
当然焼き入れできないので刃文などは有りませんが、何の為に銀製にしたのかも含めて大変興味深い物でした。

次にトンボの高彫が施された鉄地のような柴田是真の鐔。
鉄鐔と思って見ているとそこまで感動する作でもなかったのですが、解説文を読むとなんとこの鐔は「革」を使い鉄鐔を再現したものでした。
その途端、
以下は美術展ナビさんのYoutubeで公開されている動画の画像になりますが、右が鉄鐔、左が革の鐔で変わり塗りに上手く似せています。

(画像出典:Youtube 根津美術館「甲冑・刀・刀装具展 光村コレクション・ダイジェスト」学芸員の見どころ解説


③終わりに

展示量はそこまで多くない(刀と刀装具で2部屋分)なので、比較的疲れもなく見れる気がします。
単眼鏡は貸出しも行われていますが、持っていった方が良いです。
展示を見終わった後にミュージアムショップで、「光村コレクション総目録」の図録を買いました。これは今回の企画展に合わせて出た物ではなく、昔からあるものです。
ですが今回根津美術館で展示されていなかった刀や刀装具に加えて、拵や刀掛けまで載っているので資料としても最高です。


尚、展示の展示概要は以下のYoutubeでも紹介されていました。
噂通りの非常に素晴らしい展示でしたので、迷われている方は是非行かれる事をお勧めします!

Youtube 根津美術館「甲冑・刀・刀装具展 光村コレクション・ダイジェスト」学芸員の見どころ解説より)


・余談

余談ですが、館内から庭が見えたので軽い気持ちで出ていったのですが迷いました。
この建物の反対側にこんなにも広大な土地が広がっている事に驚きます。
行かれる方は気を付けて下さい。

もはやどこを歩いているのか分からない…。
しかしこうした都心とは思えない空間。
とても好きです…!


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それでは皆様良き刀ライフを!

光村コレクションの光村利藻についてまとめています。
よろしければ以下もご覧ください。

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

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