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論文を読んだことがない人に向けた「論文のすゝめ」

この写真は、昨年『ノーベル賞』を受賞した吉野彰さんが10年間愛用していたボールペンです。ストックホルムの「Novel Museum」で撮影しました。一生を研究に費やしているひとたちに感謝。

さて、「論文って難しそう」ですよね。その気持ち、凄くわかります。でも「そんな勘違いを取っ払っちゃお!」というのがこのnoteの趣旨です。ネット上の情報だけインプットしている人たちに、論文を読むメリットを伝えられたらなと。

概要はこのへんのツイートを参照。

で、知らない人が多いんですが、実は何かを学ぼうと思ったときに入門書として優れているのは「論文」だったりします。

理由1

論文の最初の数ページが、その研究分野の簡潔な入門記事になっていること。特に「Review」という"総論"のような論文を読むと、その分野の歴史や現状、抱えている問題点やこれからの展望などがわかりやすく書かれていることが多いです。

この部分を読むだけで、その研究分野でこれまでどのような研究が行われ、どのようなことが分かり、どのようなことが分からず、どのような課題を抱えているのかが、すぐ理解できます。

時間あたりの知識吸収量を考えると、めちゃくちゃ学習効率がいいです。

理由2

全て読んでも10ページくらいしかない論文がほとんどなので、短時間で読むことができます。

書籍になってるものって、200~300ページくらいあるじゃないですか。つまり、論文なら最先端だったりより深い内容にも関わらず、普通に売られている書籍を一冊読むページ数で10倍以上の数が読めるんです。

だから論文がサクサク読めるようになってくると、たくさん出版されている書籍やネット上の情報を読むのが勿体ないと感じるようになります。

理由3

実験方法やデータの分析手法、実験結果の解釈について、わからないことや理解できないところがあった場合、著者にメールで問い合わせると高い確率で返信がきます。このおかげで理解が深まる事が多いです。

書籍を出版しているひとに聞こうと思っても、なかなか聞けないですよね。

理由4

ネット上の情報や書籍とは比べ物にならないくらい、査読されています。特に業界を代表する論文誌に載るようなものは、あらゆる角度からの突っ込みを乗り越えているので、自己啓発本やビジネス書のような根拠のないデタラメが書かれていることかなり少ないです。

理由5

理由2と少し被りますが、情報密度が濃いこと。書籍などでは、著者の「自分語り」と「根拠のある話」がごちゃまぜになっていて、その中から大事な情報を抜き出すことにすごく労力がかかります。

論文では、根拠ベースでしか書かれないのでこの労力が少なくて済みます。

データ分析手法について

論文を読むとなると理解しなければならないデータ分析手法ですが、Twitterでもつぶやいた通り、心理学や社会学などで使われているデータ分析手法は少なくてある程度把握するだけなら簡単なものが多いです。相関係数、重回帰分析、因子分析、共分散構造分析、クラスター分析、たぶんこのくらい。

それだけ言って投げだすのもなんなので、少しだけデータ分析手法を学ぶ上での良書を紹介します。(*これらを購入しても僕には1円も入らないので、本当におすすめ本しか紹介していません。)

相関係数に関しては、統計学の入門書を読めば理解できます。個人的におすすめなのはこの本。漫画で数学的なことを上手く説明できていて、統計学の入門書の中で断トツでわかりやすい。


因子分析の入門書でおすすめはこれ。数式がでてこないので、数学をやってこなかった人でも理解しやすい構造になっています。


共分散構造分析の入門書でおすすめはこれ。同じく数式が出てこないですし、薄い本なのでサクッと読めます。

最後にひとこと

勘違いされたくないので一応書いておきますが、僕は有料noteや書籍を作る側が悪いと言っているわけではありません。むしろそれを作っている人たちは凄い労力を使ってくれている感謝すべき人たちです。ただ、いつまでもその優しさに甘えていては、本当の意味で「学ぶ」ことにはならないんじゃないかな、という受け手に向けてのメッセージです。


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