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オーディブル 圧倒的一位は「火車」


何かをランキングする時、
私はたいてい迷ってしまう
例えば、好きな五作品・おすすめの十品などの
「ある程度の枠組みの中でランク付けしない方法」なら
割合簡単だ
好きなものを並べていけば良いのだから

けれども、明確に順位を付けるとなると
話は別だ
なかなか、これが一番!とは、決めにくい
どうしたって新しいものの方が印象に残りやすい
それを順位付けするのは不公平感がある

そんな中で、「これが圧倒的」と断言出来る
数少ない作品が
オーディブルで聴き読みした「火車」なのだ

宮部みゆきの初期作である「火車」は
もはや説明不要な名作中の名作であろう
私も若い頃に読んではいた
ただ、宮部作品の中で
「この物語が大好き」といった小説ではなかったのも事実だ

作中に漂う重く湿った空気感
その中に赤黒い炎と化した悪女 関根彰子 の姿が浮かび上がる
主人公である休職中の刑事は、
彰子の歩んだ罪の道に残る燃え滓を踏みしめながら
彼女の跡を追う
痛む足を引き摺りながら

その物語を、オーディブルで聴いた

素晴らしい出来栄えだった
私の心は、朗読者である俳優 三浦友和氏 の声に捕らわれた
容赦なく物語の中に引き摺り込まれ、
一度も歩みを止める事なく、
主人公と共に、悪女 彰子の跡を追った
およそ十五時間に渡る長い旅路であった

以降、小説である「火車」と
オーディブル作品である「火車」とは
私の中では別物になった

小説「火車」が素晴らしい作品であることは疑いようがない
ただ、私の心を捕らえたのは間違いなく後者
三浦友和氏の朗読による「火車」なのだ

私の拙い文章では、この作品の魅力を伝えることは困難だ
どうか、どなたかお助け頂きたい
聴いて、書いて、表現して頂きたいのだ
他の多くの人に伝えて頂きたいのだ
このオーディブル版「火車」の素晴らしさを

一人の中年女からの厚かましくも図々しいお願いで
この文章を締めたいと思う






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