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番外編 ファイターの日常


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ハヤトの日記より抜粋。


8月◯日 ウンザリするほど晴れ


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 朝からナミとモーニング食いにハピネスに行ったら、マユが居た。

 三人でメシ食いながら色々話したぜ。

 あのアピロスの屋上での一件以来、マユはずいぶん明るくなったと思う。

 お母さんや学校の友達とも、うまくやってるようだ。


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キャラ (1)

「たまごっち? なんだそれ」


キャラ (10)

「あ、お兄ちゃん、知らないんだー。いますっごくハヤってるポケットペットだよー」


「ポケットペット?」

「うんそう。ごはんあげたり、遊んであげたりしながら育てるんだー。ちゃんとセワしないと、へんな風に育ったり、死んじゃったりするんだよ」

「へーえ。あいにく流行にはウトクてなー。それ、みんな持ってんのか?」

「すっごくニンキがあるから、なかなか手にはいらなくて、クラスでも持ってるの半分もいないよー。すぐ売り切れるし、たまに売ってても、ギョウレツができてすぐになくなっちゃうんだって」

「そりゃまた物好きなこって」


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「マユの友達も持ってるんだけど、あまりおセワしないから、すぐに死んじゃうんだよ。……マユだったら、いっしょうけんめいおセワするのになー」


pハヤト

「マユも買ってもらったらどうだ?」


「うん。……でもウチ、お母さんしか居ないし……ワガママは言えないよ」

「……………………」

「あ。でもいいんだ。マユね、いまお花のシイクニッキつけてるんだよ。それがすごく楽しいから!」


pハヤト

「(……くそ。マユにそのゴッチとか言うの、なんとか買ってやりてーな……)」


pナミ

「(マユ……おそろしい子……! どうオネダリしたらハヤトが買ってくれるかを、本能的に気づいてるっ。なんてオトコの扱いが上手い……)」


「ナミ。どうした? 白目むいて」

「え? あ。いや。べつに……」


キャラ (1)

「……マユ。俺ちょっと用事思い出したわ。今日はこれでな。……ところで、明日はハピネス来るか?」


キャラ (10)

「うん! ちょうどこようと思ってたよ!」


メインキャラ (12)

「(……この子。きっとハヤトがたまごっち手に入れてくるって期待してる……! おそろしい子……!)」




 そんなわけで、ハピネスを出た俺とナミは、たまごっちとやらを探して福岡市中を歩きまわった。

 そうだ。Aプライドになら売ってるかもしれねえ。あそこは、そーいう妙ちくりんなモンにやたらと力入れるからな。


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 パソコン専門店【Aプライド】。

 シンジロー御用達の店だ。店員自ら歌うテーマソングは、細胞レベルで拒絶反応を引き起こすから、俺はあまり近寄らないぜ。


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 店内に入ると、たまごっちと思しき商品が大量に並んでいた。

 ら、ラッキー! ゲリラ入荷したばかりみたいだっ。


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「オーウ。タマゴッチネー。ミーが求めていたのはコレネ。コレナノネー! ジパーングはヤッパリ黄金の国ダッタヨー」


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 ……と思ったら、金髪の外人が根こそぎカゴに入れやがった!?


キャラ (1)

「ちょっと待ったーーーーーーーー」


「ワオ!? チョットマッタコール? ナニヤツネー!」

「てめえっ! なに独り占めしてやがるっ。俺にもよこせっ」

「ノンノノンッ! アメーリカではセンテヒッショウ、勝者がオールをゲットするシャカイコウゾウネー」


キャラ (1)

「ああっ。おまえ、前にここでSCSIハードディスクがどうこうって騒いでた外人! あのとき、俺の弟がいろいろ面倒見てやって、助かったはずだぜ! 忘れたとは言わさねー」


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「ホッホホーウ。モチのロン、リメンバーネー。あのサムライボーイのブラーザでしたカー…………そのセツは、タイヘンおせわになりモーシタ」


「覚えてたなら話は早え。たまごっち一個俺に渡せっ」

「オフコース。オンをアダでかえす、アメーリカでもベリベリバッド! ドッグにも劣るチクショーネ」


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 外人は俺にたまごっちらしきパッケージをひとつくれた。


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「ユーのブラザー、サムライボーイにもよろしくオツタエくだちい。グッバイシーユーアゲン! あのナツのヒ……!」


 外人は陽気に去っていった。よし。これでマユも喜ぶぞ。


キャラ (8)

「あああ!」


キャラ (1)

「どうした、シモカワ?」


「は、ハヤトさん、それ。たまごっちじゃありませんよっ」

「な、なんだと」

「それは……ぎゃおっぴ!」

「なんだよ、なんなんだよ、それは!」

「たまごっちの真っ赤な偽物で、キャラもへんだし、なんかデカいし、バランスも悪くてすぐ死ぬし……中国製の粗悪なパチモンです」


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pハヤト

「あ、あのガイジン、ナメやがってえええええええ」


 こんなモン、マユにあげられるかーーーー。


キャラ (1)

「くそっ。カワハラ。おまえにくれてやるっ」


キャラ (18)

「え? いらんですよ。おれ、ホンモノのたまごっち4コ持っとりますけん」


「な、なにィッ!」

「しかもひとつはレアなホワイトっす。未開封」


pハヤト

「よこせっ!」ドゴンッ!


pカワハラ

「ギャオッピ!」


キャラ (1)

「…………よし。これでマユもきっと喜んでくれるよな、ナミ!」


メインキャラ (12)

「(…………マユ…………おそろしい子…………!)」




8月◯日 今日も晴れ。36℃って殺す気かよ。


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 大橋駅で悪意と戦っていたら、カラオケの20分無料券を拾った。

 これは……神が俺に言ってるんだろうよ……「リベンジしろ」とな!



キャラ (1)

「カスガああああああ」


キャラ (6)

「んー?」


「ちょうどいい! 前回の雪辱、いまここで晴らさせてもらうっ」

「おー。正月にやった、カラオケタイマンバトルのことー?」

「そうだ! 忘れたとは言わさねえ!」


キャラ (2)

「からおけ? なにソレ?」


pハヤト

「知らないのか、ナミ! カラオケってのはBGMにあわせて歌う娯楽だ。そして、ほとんどの店で、歌い終わったら採点が表示される! ソレで前にカスガと勝負してな……このやろう、負けた俺にナニをさせたと思う!?」


pナミ

「な、なにをやらされたの……? そんなにヒドイこと? カスガさんってけっこう黒いし、とんでもないことさせられたんじゃ……」


「こ、コイツはなー、こともあろうに、この俺に、大橋駅前広場で、『majiでkoiする5秒前』をアカペラで歌わせたんだよおおおおお」


pカスガ

「そー。しかも振り付けつきだったよねー」


メインキャラ (12)

「………………………………(え? アホ?)」


「そんなわけで、一曲限定、一発勝負だ! 勝ったほうは負けたほうからの絶対忠誠権を与えられる!」

「おー。のぞむところだー」

「ち、ちょっと……! 大橋駅前の悪意はどーすんの!? ウジャウジャ居るよっ」


キャラ (1)

「うるせーーーー! ンなもん、ヤノやシンジローに任せとけ!」


キャラ (6)

「大丈夫だよナミー。ちゃっちゃっと終わらせるからー」


 簡単に言うカスガ。ちくしょう、俺を三下扱いしやがるのか?

 カラオケ屋の自動ドアをくぐり、受付を済ませ、部屋へと案内される。


pナミ

「カスガさんって、歌上手いの?」


pハヤト

「…………ああ。くやしいがな」


 カスガって男はなんでも上手にこなせるんだが、特に歌はシャレにならねえ。プロ並みだ。

 しかし俺にも意地がある。あれから、バンドやってるシモカワに頼んで個人レッスンしてもらったし、今度こそやってやるぜっ。

 席につくなり、飲み物を注文するのももどかしく俺はリモコンを手にとった!


キャラ (1)

「行くぜえ。俺の持ち歌……GLAYの『口唇』!!」


キャラ (6)

「またナントカのひとつ覚えだなー」


「やかましい! 俺が勝ったら、しばらくお前にはブーメランパンツ着装で悪意と戦ってもらう!」

「へーえ……そんな条件出しちゃうんだー。知らないよー」

 く、くそっ。ビビるな、ハヤト! シモカワ直伝のカラオケテク、今こそ見せてやるときだぜ! 口唇だけ50曲耐久で歌ったあの日を思い出せ!


カラ (1)


カラ (2)


 …………結果は…………92点!

 おおっ。自己ベストより低いが、大台には乗せたぜ。歌い出しで少し外しちまったのが痛かったか……。

「ふーん。やるなー。歌い出しで少しハズしたのに、よく90点台に乗せたねー」

 く、くそっ。コイツ、見切ってやがるっ。

「じゃあオレも心置きなく本気出せそうだねー」

「なんだとっ!?」

 前のは本気じゃなかっただと……!?


キャラ (6)

「曲は……河村隆一で『Glass』」


カラ (4)


カラ (5)


 歌い始めた途端、室内の空気が変わる。ナミも驚いている。くそっ。声がぜんぜん別人じゃねえかよっ。

 …………結果は…………98点!!??

 どうやったら、そんな点数が出るんだよおおおおおおお!!!


キャラ (6)

「…………あははー。オレの勝ちだねー。じゃあハヤトには夏休みいっぱい、フンドシ一丁でー…………」


カラ (6)


キャラ (2)

「…………ねえ。まだ少し時間残ってるんでしょ? ボクもなにか歌っていーい?」


キャラ (1)

「あ? そうだな。べつにいいけどよ……(そんなことより、どうやってこの窮地を脱する? ブン殴って逃げるか……?)」


キャラ (6)

「あー。いいねー。ナミの歌、聞きたーい」


 ピッピッ。たどだとしくリモコンを扱うナミ。

「えーと。この機械で……番号を……こうかな」



 繊細で透明感のあるギターの前奏。どこかで聞いた覚えがあるメロディ。

 ……これってたしか……『あの素晴らしい愛をもう一度』……?


カラ (9)


キャラ (2)

「こころとここーろがー、いまはー、もう、かよわなーい」


キャラ (1)

「………………………………」


キャラ (6)

「………………………………」


「あのー、すばーらしい、あーいーをー、もーおいちーどー」

 なんだこの歌声……。

 カスガみたいな圧倒的歌唱力じゃない。正直、歌い慣れてなくてたどたどしいのがわかる。

 でも、柔らかな手でそっと手を握られているみたいな……心に直接触れられているみたいな……そんな、やさしい……。

 見ると、ふだんは他人の歌なんてどうでもよさそうに、聞いてもいないカスガが、真剣な顔で聞き入ってる。


pナミ

「…………ふう」


 …………点数が出た。

 カスガはその点数を見もせずに、笑った。


pカスガ

「ナミー。すごいよー。素晴らしい歌だったよー。オレの負けだー」


カラ (11)


キャラ (2)

「ボクの勝ち?」


キャラ (1)

「ああ。俺も完敗だぜ」


 俺も心から認める。

「じゃあ、その絶対忠誠権っての使っていーい?」

「いいよー」

「好きに使え」

「じゃあ」

 すーっとナミは息を吸い込み……


メインキャラ (12)

「サボってないで、さっさとみんなのところへ戻れえええええええええ!!!」


pハヤト

「は、はいいいい」


pカスガ

「ただいまーーー」


カラ (12)



メインキャラ (1)

 ナミや仲間たちと、悪意と戦って過ごしたこの夏。毎日まいにち、本当にいろいろなことがあったぜ。機会があれば、またな。


 ハヤトの日記 おわり。


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