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11-8 クリハラ10番勝負!8

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キャラ (6)

「く、クリハラアアアアアァァァァァーーーーーーーーー!!!」


 コミネさんが絶叫する。

 心臓のあたりに灼けた鉄の棒をねじ込まれたみたいだ……。

 致命傷だ、と自分でもわかった。

 凄惨にいじめられた中学時代、おれは何度も何度も死にたいと思った。だけど、実際にその瞬間が訪れたとき、おれは心の底から思った……。


キャラ (7)

 死にたく……ない。


キャラ (1)

「……おねがいっ……間に合って……!」


 必死な形相のナミさんが、おれの傷口に手のひらをかざしている。

 ぼんやりとだが、意識はまだかろうじてあった。

 コミネさんが……激怒していた。


キャラ (6)

「……貴様アアアアアアァァァァ!!!!」


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「ヒッ! て、テメェもハジいてやらあああアアア!!」


 パンッ。

 乾いた音が響く。おれの暗くなった視界にも、モウリとかいうヤクザの撃った弾丸が、コミネさんに命中するのが見えた。だが……



pコミネ

「………………………………」


 コミネさんはまったく意に介さない。


モウリ

「ヒッ! な、なっ、たっ、タマ当たってんのに、なんで効かネーんだよおおおォォ」


 パンパンッ!


pコミネ

「………………………………」


 パン! パン!


pコミネ

「………………………………」


 緑の焔のような怒気をたぎらせたコミネさんは、弾が命中しているはずなのに、その歩みを止めない。


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「ひ、ひいいいいい! なんだよなんだよテメェほんとに人間かよおお!」


 パン! パンッ! カチッカチカチカチカチカチカチッ……。

 モウリは弾が切れた銃の引き金を狂ったように引き続ける。


キャラ (5)

「貴様こそ……貴様こそ、本当に人間か? 言ってみろ……キサマの血は何色だああああああぁぁぁぁーーーーーー!」


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「ひいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ」


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 怒号とともに全身の筋肉が隆起し、上半身の服がビリビリに破れた。怒りは、深緑の蛇のようにコミネさんの全身に絡みつき、踊っていた。

 ズムンッッッ! 

 巨大な拳が半分くらいモウリの顔にめり込んだ。


pコミネ

「……貴様のようなヤツが居るから! 貴様のように平気でひとを傷つける愚か者が居るから、オレたち弱いものが、陰で涙せねばならんのだッ!」


モウリ

「ひでぶぶぶぶぶぅぅ!」


キャラ (5)

「殺してやるッ! 殺してやるぞッ!」


 緑の風が筋肉の塊のような太い腕に渦巻いていた。

 コミネさんは怒りに満ちた、でも深い悲しみに満ちた顔で、モウリを殴り続ける。


pコミネ

「貴様のようなヤツはこの世に居ないほうがいいのだッ。オレが! オレが存在を抹消してやるッ!」


モウリ

「あべべべっっっ!!!」


 コミネさんは号泣していた。モウリはカクンカクンと首の部分が壊れた人形のように力なく、ただ殴られ続けていた……。


キャラ (16)

「こ、コミネ! 落ち着けえ! 本当に殺してしまうぞお!」


キャラ (3)

「コミネー。こんなヤツの命はどうでもいいけど、お前が殺人犯になっちゃうよー!」


キャラ (5)

「離せええーーー! ヤノ! カスガ! あのときオレがコイツを殺していれば、クリハラは死なずに済んだのだッ! オレの半端な正義が、クリハラを死なせたのだーーーーー!!!」


 コミネさん……やめてください……そんなことはありません……コミネさんの正義はなにも間違ってはいません……。

 そう言いたかったのに、声が出ない……。

 コミネさんが、ふたりを荒々しく振り払った。大きなふたつの身体が地面に転がった。その瞬間……

 ドガッ!

 コミネさんの顔を、ハヤトさんが殴っていた。


pハヤト

「……落ち着けよ。こんなヤツ殺しちまったら、おまえの正義が汚れちまうぜ。それに、クリハラは大丈夫だ」


pコミネ

「……は、ハヤト……」


 呆けたように、コミネさんは両腕を下ろした。両の拳から、ポタリポタリと紅い雫が垂れた。

 ふわりといい匂いがして、今まで味わったことのないような柔らかさを感じた。ナミさんがおれの身体を優しく抱きしめてくれていた。


キャラ (1)

「コミネさん。クリハラくんはもう大丈夫。真のアリバに目覚めていたことと、ボクのヒーリングが間に合ったことで、命に別状はなかったみたい」


pコミネ

「よ、よかった……」


 コミネさんを覆っていた猛々しいグリーンのオーラがフッと消えた。

 ナミさんの言う通り……青白く発光する優しい手のひらで触られているうちに、胸をえぐるような傷の痛みは消えていた。

 むしろ今は股間が一番痛い……は、はち切れそうだっ。

 これが、リアル美少女の生の肉体の感触なのか!? え、エロゲーとはちがうっ……違いすぎる……!

 状況についていけてなかった他の仲間たちも、慌てて駆け寄ってきた。


キャラ (13)

「お、おい! クリハラ! 大丈夫かよっ」


 いい匂いを残して、ナミさんがぷいっと離れた。

 おれは前かがみの姿勢でコクコクうなずいた。


キャラ (18)

「く、クリハラ……そのへっぴり腰……き、傷は深いのでゴザルか……?」


キャラ (11)

「45口径の実弾を心臓部に受けて無事とは、つくづくアリバというものは凄いものだな」


キャラ (17)

「10番勝負でクリハラが真のアリバに目覚めたおかげというなら、我らの協力もムダではなかったわけですな」


キャラ (12)

「それにしても、コミネさんの怒り、凄まじかったですね……」


キャラ (1)

「……ったくよ。長い付き合いだが、キレたコミネなんざ初めて見たぜ?」


キャラ (6)

「……フフ。正義にはときとしてああいうこともあるのだ……」


 上半身ハダカのコミネさんが、ポッと赤面する。

「そういやコミネ。おまえも撃たれてなかったっけ?」

 ハヤトさんが思い出したように言った。コミネさんも「あ」という顔。

 見ると、コミネさんのムキムキの上半身に、いくつかの浅い弾痕がついていた。血が垂れている。

 ひとつ……ふたつ、みっつよっつ……合計七つの傷跡。


pハヤト

「ぜ、全弾しっかり命中してんじゃねえかっ……って、なにおまえ嬉しそうに胸の傷見てニヤニヤしてんだっ! はやくナミにヒーリングしてもらえっ」


 ハヤトさんが突っ込む。

 ……結局、ナミさんによると、コミネさんもこのとき真のアリバに目覚めていたらしく、それで七発も撃たれて平気だったのだ。


pコミネ


 おまけに、最後の超弩級の怒り……あれはコミネさんの新しく目覚めたレベル3必殺技。怒髪天』という、凄まじい技だった……。

 いつのまにかモウリは消えていた。

 おれはクリハラ10番勝負をやり抜き、長い一日が終わった。


キャラ (7)

 この日、おれはかけがえのないものをいくつも手に入れた。

 もちろん、おれだけの新必殺技『コンビネーションアーツ』もそうだし、ナミさんの言う『真のアリバ』もそうだ。

 だけど……

 おれはもっともっと大事なものを手に入れたのだ。

 それは……。


pクリハラ




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 ……そして舞台は切り替わる。

 そこはハヤトたちが教団と呼ぶ場所『銀河教』の最深部。

 限られた人間しか入れない秘密の施設。

 モニターが忙しく点滅し、太いパイプが繋がった等身大のガラスの容器には、青白い液体が満たされている。


pホクト


 その液体に浸る裸のホクトが、うっすらと目を開いた。

 長い銀髪がユラユラゆらめく。アシラギの合図で、ガラス容器の中の液体は排出された。美しい濡れた裸体が現れる。



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「……最後の調整は無事に完了だ。おめでとうホクト。これで君は三つの属性が扱える最強の悪意となった。ブレイクスリーも撃てるわけだ」


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『…………かりそめの三属性、偽りの最強、だろう』


 アシラギの言葉に、ガラス容器の中のホクトは冷たく返す。

「まあね。君はまあ、彼が目覚めるための当て馬だからねえ。そういえば、その彼となんだか楽しそうに遊んでたみたいじゃない。なにしてたの?」

 アシラギは軽薄な口調で語りかける。

「…………お前の知ったことではない。俺は道化。定められた役割以外に干渉は受けない」


e_58_boss_アシラギ

「あーいいよいいよ。ちゃんと調べてるから。全回避の集中……キャラバンモード! だってえ……かっこいいねえ。けど、そんな児戯の特訓のためにわざわざ出向いてあげるなんて、君もお人好しだねえ」


pホクト

「………………………………」


「そんな君と彼が、これから命を賭けて本気で潰しあうんだもん。皮肉な話だよ。君たちにも、奇妙な友情めいたものが出来つつあるかもしれないのに」

「………………………………」


アシラギ

「さあ。いよいよだ。まったくここまで長かった。君とハヤト君、どちらが道具として優れているか、検品のときだ。本命は彼だけど、君も頑張り次第では世界を救う役目を担えるかもしれないよ? そうすれば、ナミ君も死ななくて済むし、模造品が世界を救う! なんて展開もなかなか面白い」


キャラ20

「……本心ではあるまい?」


「あ。わかっちゃう? 君もナミ君もしょせん中盤過ぎまでの駒だからね。そろそろ退場も近い。今までごくろうさまでした」

「………………………………」

「そして、ハヤト君の楽しいヒーローごっこもそろそろ終わりだ。……ホクト。まずはブレイクスリーで『能古島』をふっ飛ばせ


pホクト

「…………わかった。島の住人の避難は……?」


e_58_boss_アシラギ

「もちろん手配済みだよ。やがてくる最終決戦のとき、福岡市民はみんな貴重な戦力だからね。ひとりとして無駄にはしない。……さっ。ようやく『決戦福岡市』だ。残るのはハヤトかホクトか? どちらのブレイクスリーが優っているのか? 自分のせいで仲間をすべて死なせたハヤト君が、どれほどの絶望を味わい、狂うのか……これは見逃せないねえ!」


キャラ20

「アシラギ……お前は、悪魔だ」


 射すくめるようなホクトの視線を楽しげに受け流しながら、アシラギは笑う。


アシラギ

アッ! ハッ! ハッ! ハッ! ハッ! ……なんにしろ、君たちの尊い犠牲により、ぼくは人類を救う」





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