かたばみ書房

2023年スタートの出版社、かたばみ書房のウェブマガジン「webかたばみ」です。社名は…

かたばみ書房

2023年スタートの出版社、かたばみ書房のウェブマガジン「webかたばみ」です。社名は道端に生えるカタバミに由来します。https://katabamishobo.com

最近の記事

第1回 扁平足の鳥  

幼いころから靴は悩みの種で、甲高で扁平足な私の靴選びは、常に諦念とともにあった。靴屋さんで、何足試しても合わないときのいたたまれなさたるやなかったし、店員さんの気の毒そうな顔はいまだに覚えている。水泳の授業では、プールサイドに連なる友人たちの足跡がどれも細長くて美しく、おまけに土踏まずの部分だけが濡れずにくっきり浮き出ていることに驚き、ぺったりと欠けのない自分の足型を見られないよう、こそこそと爪先立ちで歩いたものだ。皆の靴が並んだなかで、自分のものだけ、形が広がって崩れている

    • 【レビュー】 The Drowned 石内都   物質と偶然と 成相肇

      感傷を誘起しやすい性質の作品だと思うから、なるべくドライに書き始めたい。濡れすぎちゃいけない。 いわゆる現代美術の、作者の行為がきわめてミニマルな作品に対して、例えば「こんな、紙に線を引いただけのものが“作品”だなんてすごいですね」といったコメントをもらうことがある。それは、何やら偉そうな美術業界の価値観へのやわらかな対抗であるのだが、ならばピカソの絵画だって布の上に絵具を乗せた「だけのもの」であって、却って発言者の旧弊な作品観が露呈することになる。 そう、あるとき物質は手

    第1回 扁平足の鳥