【レビュー】 The Drowned 石内都 物質と偶然と 成相肇
感傷を誘起しやすい性質の作品だと思うから、なるべくドライに書き始めたい。濡れすぎちゃいけない。
いわゆる現代美術の、作者の行為がきわめてミニマルな作品に対して、例えば「こんな、紙に線を引いただけのものが“作品”だなんてすごいですね」といったコメントをもらうことがある。それは、何やら偉そうな美術業界の価値観へのやわらかな対抗であるのだが、ならばピカソの絵画だって布の上に絵具を乗せた「だけのもの」であって、却って発言者の旧弊な作品観が露呈することになる。
そう、あるとき物質は手