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睡眠薬の呪縛

私が初めて配属された薬局は、大規模薬局チェーンの店舗の中でも大きな薬局で、総合病院の処方を主に受けていました。

大変勉強になるので、新人はとくにそういう店舗には、人数多めに配属になりました。25年以上も前ですが。
そこで、最初に思ったのは「世の中にはこんなにたくさん病気の人がいるんだ」と。そして。「安易に薬を処方して、バカスカ服薬してる」という印象でした。


睡眠導入剤?安定剤?

新人薬剤師でも、ある程度修行を積んで訓練されると、患者さんにお薬をお渡しする服薬指導の任務を遂行します。
まあ、あれこれ失敗やら失敗やら失敗はあるのですが、それはキリがないので。

患者さんとお話していると、気づいたことが。あまりにも患者さんたちが睡眠薬や、抗不安薬などを気軽に服用している。

ある高齢の女性はお友達と旅行に行くと、みんなでのんでいる薬を見せ合う。その時だれそれさんが持っていた眠剤がいいらしいって聞いてきた。そのまま医師に処方してくれと頼む。医師も安易に処方する。

また、抗不安薬を「安定剤」と気軽に呼んで、いかにもおでかけのお供の「飴ちゃん」みたいな感覚で欲しがる。医師も処方する。大学では、とくに作用時間が長くてけっこう危ない薬と習った気がするが。

本当に、必要な患者さんもいるのだと思う。でも、定期処方のオマケとして、人気のスイーツかアクセサリー感覚で処方されている気がしてならなかった。

何科の医師が処方するか

そこの薬局では精神科の患者さんも多く、とくに睡眠薬やその他精神科系の処方せんも受けました。

疾患の種類によっては、処方できない睡眠薬があったり、日数制限が厳しい薬もあります。精神科の医師はまずそれを間違えることはなかったように思います。

しかし、今の職場で受ける処方箋は多種多様で、とくに開業医の医師は比較的患者さんのお願いをきいてくださる方が多いようです。
「眠れない」と言えば、すぐに睡眠薬が処方されたり。

睡眠薬が自由すぎる

医師が処方するのだから、良いのかもしれません。でも、ヤッバいことも多いのですよ。

年齢によっては少量からスタートしなくてはいけない睡眠薬が、大用量スタートだったので医師に連絡したことがあります。
患者さんにも「少し量が多いかもしれないので、一応先生に確認しますね」とお伝えしたら、患者さんが一目散にクリニック(すぐ隣だった)に戻り、あの薬剤師が勝手なことする!と訴えていた。

医師は、薬剤師の味方になるかと思いきや(だって量を間違えているのは医師だし、結局変更になったのだから)
「担当した薬剤師、すぐに来い!」と呼ばれ、患者の前で自分の処方がまちがっていると言ったといって、大激怒。小一時間説教され、結論は「うちの病院の売り上げが落ちたら、おまえ責任とれるのか」だった。

そのクリニックは院内処方で、院内に無いから院外処方出してみた、みたいなことでした。疑義照会され慣れていないので、激怒したらしい。大丈夫か?

ある時は、いつも通っているクリニックがお休みだったから処方して欲しいと、初めて受診したクリニックで睡眠薬を処方された患者。いろいろなクリニックでそれをやってた。すぐにばれるんですよ。然るべき機関に即座に通報させていただきました。あ、警察じゃないですよ。

医師も、お薬手帳見よう。お願いします。絶対嘘っぽかったはず。

危なかった!?睡眠薬

睡眠薬もいろいろ種類ありまして。

たくさん服用しちゃったとしても命を落とすことはないとして、多く処方されている種類のもがあるのですが。
これはここ最近は、「癖にもなるし、けっこう危険だよね」という見解にかわりつつあります。
でも本当に必要な患者さんもいるので、処方が中止になったりはなかなかしません。

睡眠薬って、本当に睡眠とれてるのかって言われれば、ちょっとどうかなと。「気絶」なんじゃないかと。
しかも筋肉の緊張がゆるむ薬が多いので、気持ちもやわらいだりして、またあの感覚が欲しくなる。いわゆる「依存」がおきやすい。

危なくない睡眠薬!!そんなのあるのか?

このところ多く処方される睡眠薬で、「癖になりにくくて、わりと安全」なものも増えてきています。

近隣の医師たちもよく処方するようになっています。
とくに高齢の患者さんには、筋肉の緊張がゆるむ薬は、なにしろ危ないのです。転倒したり、昼間もふらふらしちゃったり。

なので、比較的そっちの安全性重視型の睡眠薬に切り替えよう切り替えようと、頑張っています。

しかし、長年大好きな筋肉緊張ゆるみ型の睡眠薬を服用していた方たちは、安全重視型の薬では物足りないのです。その薬では気絶するようには眠れないから。
医師も、両方処方してくれて、「少しずつ安全な方に切り替えてね」って言ってくれているのに、実際そうしている方、見たことないかも。

高齢の方に多いのは、睡眠薬だけどんどん服用してしまって、薬局で「足りなかった」と訴えるパターン。「睡眠薬だけください」っていつも言っている患者さんも。
何時に寝て、何時に起きているか聞いてみると「19時には寝て夜中の3時には起きちゃうの」って。けっこう寝てること多いです。お昼寝もしてますとか。

自分の親にはあまりのんでほしくないな。

まとめ

眠りたいのに眠れないのはつらいに決まっています。神経が高ぶって緊張状態が続いていたりしたら、薬の力を借りてでも睡眠がとれたら、良いと思います。

お仕事の関係で睡眠のリズムが崩れてしまう方もいるし、痛みが強くて眠れない方もいます。事情は様々。

もし自分や家族が、睡眠薬が必要かもしれない状態になったら、まずは医師とよーく相談してください。

睡眠と覚醒のバランスが整えられればいいのか
昼夜逆転しちゃっててなんとかしたいのか
夜勤明けのときはとにかく早く寝付きたいのか
すぐ眠れるけど夜中におきちゃって眠れなくなるのか

みんな処方される薬、ちがうはずです。







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